295開戦(本陣)
「よし、我々も動くぞ。」
上杉実虎の意思を直江景綱が代弁して軍を動かす。
総勢7000の兵が山県達がやった様に闇夜に紛れて武田本陣へと近づいていた。
流石に武田本陣に近づき始めると武田の忍び達に見つかる。
しかし、すぐに布陣を変えられるほどの猶予はなかった。
「山猿どもを叩き返すのだ!」
直江の指示で本庄と斎藤の比較的身軽な兵達が先鋒として武田の横っ腹へと突貫する。
2〜300の兵が最初の交戦で打ち取られ陣形が押し出されて膨らむように崩されるが、周りの他の陣がその補助へと素早く入り大崩壊を防ぐ。
「そうでなくては。」
実虎はその様子を見てニヤリと口角を上げると刀をヒュンッと振り下ろす。
「第二陣突撃!」
実虎の意思を汲みとれる直江が長尾と宇佐美の軍を突撃させる。最初の2人の部隊が敵軍にぶつかり左右に分かれる様に、扉を奥に押して開ける様に道を作っていた。
そこに2000の軍二つが突撃する。
長尾の軍はこちら側に敵を越させない様に鶴翼で溢れ出た敵を囲い込み、先に突撃した2部隊をフォローする。
宇佐美の軍は勢いに任せてさらに武田の軍を食い破っていくように動いている。
「御屋形様、今の所は順調にございまするぞ。」
直江が騎馬隊を率いる実虎に向かって呟く。
「あ奴らに次の手を打つ暇が無い様にするのだ。我も出る!」
直江は特攻隊長とも言える弥太郎にわかる様に旗持ちが合図をする。
命を受けた弥太郎の軍は弥太郎自身が先頭集団に紛れて突撃していく。
狙うのは今まさに食い破ろうとしている戦線の後方である。
「お前ら!武田の軍を崩壊させてやれ!いくぞぉ!」
弥太郎が仲間を鼓舞しながら騎馬で進んでいく。武田の兵達はすでにボロボロであったが今の所逃げたりする様な兵はいない事に天晴という気持ちと死兵か、ちとめんどくさいな。という気持ちが入り混じっていた。
「敵襲!敵襲!」
周囲を警戒していた兵が声を上げる。
「我々側面から赤備えの騎馬隊が突撃してきます!」
「ちっ!面倒臭い!方向転換だ!まずは騎馬隊から片付けるぞ!御屋形様の邪魔にならない様にするのだ!」
主君である実虎様ならきっと本陣に突撃できる隙があれば必ずするだろうという信頼を持って敵の赤備えを自分たちに釘付けにする事を弥太郎は目的に変えた。
「鬼小島とは我のことなり!武田の赤備えとはこの程度か!」
敵を挑発し意識を向けさせながらその実力を持って敵を排除していく。
「武田、侍大将飯富虎昌!いざ尋常に勝負!」
一際威圧感を持った男が弥太郎に斬りかかって来ていた。
「やっと歯応えのあるやつが出てきたな。」
「この戦闘狂いが…」
武田本陣
被害
死者100〜300
陣形一部崩壊
上杉軍
被害
死者50〜150
歩兵隊膠着気味
騎馬隊第一陣足止め




