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佐竹義昭
「戦況はどうなっている?」
「順調です。左翼では敵の天雷の武器の使用を確認!すぐに撤退し砲撃の範囲から外れるようにして付かず離れずの距離を確保した後睨み合っております!
右翼では2万の兵が敵の陣地に取り付き始めました!しかし、相手の陣は強力で穴を迂回しようとすれば細い道を通るしかなくそこを狙って槍の攻撃がされています!その間を縫って取り付いたとしても柵の後ろにいる兵達が怯まずに攻撃をする為なかなか突破できていません」
「ならば、通るための兵を送り出しながら残りの待機している兵達で弓を撃たせよ、弓が撃てない者は石でも長槍でもいい。ある者全てを使わせるのだ。それでも余る兵は一旦後方に下げさせ中央側に向かわせるのだ。
それと、予備兵力で木を切り出して持って来させよ。半分に割って簡易的な橋にするのだ。それに柵にぶつけさせても良い。こちらは急がせろ。」
「はっ!」
こちらは数が多いのだ。その有利を活かさなければ勿体ないというものだ。
「上杉殿の方はどうなっている?」
「こちらが攻めかかったのを確認して士気が向上した様子で抵抗が更に激しくなりました、それによって氏康本隊が手こずってるようです。関東諸連合の兵は大体撤退した様子なのでそろそろ上杉諸将が2回目の逃走を始めるかと…。」
「ふむ、では間に合うか分からないが上杉殿には越後の方に逃げることをお勧めせよ。下野の方は確実に追っ手がいるし、来る。最悪挟み撃ちにされてしまうだろう。甲斐の方に行ったとしてもあそこに居るのは武田信玄だ。信用のならない上に争った男に手を組むのは癪に触る筈だ。と、なれば行くのは一番厳しいが一番安全な越後であろう。」
「わかりました!すぐにお伝えしてきます!」
伝令が飛び出していく。
「右翼の余った兵は如何程になった?」
「6000程が木材工作に加わっております!」
「3000を使って氏康の後ろを狙う動きをさせよ、相手が動くなら前線から兵を離せて良し、放置されたとしても氏康の動きが鈍る上に奴らがこちらに援軍にくるのを阻止できて良しだ。」
「しかし、万の相手に3000で向かわせるというのは…」
「大丈夫だ。橋を抑えれば敵がこちらに向かってきても先に破壊すれば良い。そうしたらこちら側に手出しはできぬ。そう伝えよ。」
「ははっ!」
奇しくも氏政と義昭が考えていたことは同じであった。果たしてこの考えが重なった結果はどのようになるのか。
〜〜〜
里見義弘
別働隊を任された義弘は手が震えていた。周りに3500の兵がいる。ここに敵が押し寄せればどれくらい耐えられるのだろうか。不安と緊張に押しつぶされそうになっていた。
「指令官殿!敵の別働隊がこちらに向かってきております!約5000程の足軽が突っ込んできています!」
「盾隊を前に!槍隊を後ろに置くのだ!長槍隊を最後方に置いて鉄砲隊を左右に展開!」
「はっ!!!」
道を塞ぐように盾隊を配置して敵が抜ききれないようにする。もし、こちら側を無視して迂回しようとしても畦道ばかりで鉄砲隊と槍隊の活躍の場ができるだけだな。
「お前たち!!!ここを止められるように気張れよ!我々の後ろには民がいるのだ!家族を守るために!笑顔を守るために!氏政様が作る世を守るために!命を捨てろ!」
ここにいる男たちは安房からきた者たちばかりだから義弘の事は知っている。そして、安房が氏政の治世の元で昔よりも良くなったことを実感し自ら守るために兵として働こうと志願した者たちだ。やる気も実力も伊豆軍に負けないほどの練度である。
「来るぞ!撃てい!!!!」




