ISEKAI ALIEN
その瞬間である。
女性は自分の真上に奇妙な飛行物体を見た。
「……へ?何 ……何何何!?」
飛行物体は、その下方から円錐状の光を放った。すると光の中心から、人間が降りてくる。
遠くからでもわかるほどの巨体。2メートル程だろうか。黒い帽子に黒いコート。全身黒づくめで、白といえばシャツくらいである。
金の髪を後ろに撫で付けており、目はぎょろぎょろとしている。口角は下がっていて、その表情からは、人間味をちっとも感じない。
そんな人型が降りてきた。守り神も、そちらに釘付けになっている。
やがて、地面に降り立つと、スタスタと女性の元に歩み寄っていき、
そばに立った瞬間、腰を直角に折り曲げ、女性の横に顔を持っていった。
「ひぃっ!?」
「ア……怪しいものではございません。私、風祭晋平と申します。
ひょっとするとお困りじゃないかと思って声をかけさせて頂いたのですけれども」
「……え?」
「あ。そうじゃないなら良いのです。私は立ち去るだけですから。それじゃ」
「いやっ、いやいやいや!待って!困ってる!困ってるから!
守り神様に殺されそうになっちゃってるから!助けて!」
「オー!やっぱりそうでしたか!それではそうさせていただきます」
「目標設定を『守り神の破壊』……失敬、『機能停止』へと移行。
執行させていただきます」
言葉を吐いた瞬間、守り神のレーザーが晋平の顔へ直撃……する間もなく、晋平は自らの体を光の粒子に変化させていた!ZAP!ZAP!ZAAAAAAAAAP!
晋平が体の構造を元に戻す!そこから細長い腕での右ストレートを繰り出した!
「目標は機能停止です。そのまま、回路をショートさせます」
言い終わるや否や、晋平の腕から電撃が放たれる!これは決着ありか?
いや、違う!守り神は未だ存命!守り神は太い腕を振り上げ、晋平の脳天を捉えた!
しかし、晋平にもダメージは無い!
「アレ?
……オー!そうでした!この世界の機械は全て魔法エネルギーで動いているのでした!」
気付き!そうなのである。電気エネルギーでショートさせようとしても無意味!
「であれば、やはり目標再設定……『破壊』の必要がありますね」
晋平は女性に向き直り、
「珍しいものを見せてあげましょう。「瞬歩」をご存知ですか?」
「え?あの……テレポート魔法でも使ったみたいに歩くって言う?」
「その通りです!実は私、あれ、できるんですよね」
バシュン!再度レーザー音!光線は正確に晋平の背中を捉える!
万事休すか?
否!晋平は再度光の粒子となり、今度はそのまま目にも止まらぬ速度で守り神の背後へと回り込む!その速さは守り神という魔導機械の反応さえ超えた!
次に晋平が形を成したとき、その右足は天高く振り上げられていた。
狙うは守り神の脳天。力一杯振り下ろすのみである!
「言ったでしょう?これが私の
SHUM-POでございますッ!!!!!!」
「いや違うと思う!!!!!!!!」
バギィッッッ!!!鉄が破壊される音が森中に響き渡る!晋平の踵落としに耐えきれず、守り神はあえなく大破!頭部が胴体にめり込んだ!
そのまま魔導機械としてのコアはショート!大爆発を起こした!
もうもうと立ち登る噴煙の中から、晋平は悠々と歩き、女性の元へと向かう。
やはり女性の近くまで行くと、ぐんと腰を90度に折り曲げ、一言。
「どうでした?」
「あ、ありがとう……
でも、守り神様がいなくなったら、私たちはどうすれば……」
「そのことなんですが、すでに原因は特定済みです。博士に報告しなければいけないので、私はこれで帰らせてもらいますけれども。
一つだけ、プレゼントを送らせていただきます」
すると、また飛行物体から光の柱が降りてくる。次はその中心には、何やら珍妙な機械があるようだった。
「自立型防衛機械「マモールくん」です!例の魔導機械と一緒の防衛設定にしていますから、安心ですよ」
『コレカラヨロシクネ!オ姉チャン!』
「喋った!!!???」
マモールくんと女性の寸劇を見送ると、晋平は飛行物体の中へと姿を消した。
カクカクと虫のような動きをしながら高速で飛んでいくのを見た女性が、街のみんなに「あれは絶対トンボか何かの悪魔だと思う」と触れ回ったせいで、辺境の街ではトンボの悪魔信仰が盛んになったのだと言われている。






