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お父さんとお母さん

一応、皇帝としては立派な人だったんです…

今日は社会のお勉強が終了した。いや、なんか、すごいスルスルと知識が入ってもう習うことがないらしい。待って。もしかして本当にこの脳みそ前世と出来が違うかもしれない。後は帝王学と哲学と魔法学。でも、なんだか興味がないことに関しては本当に覚えられない。一生懸命に教えてくれる先生に申し訳ない。魔法学はまあ実践はなんとかなってるけど、座学が難しい。


「姫様は本当に天才です!あとは帝王学と哲学と魔法学ですな!魔法学も実践の方はなかなかの出来です!同年代の子供と比べればかなりの実力です!」


「まあまあ、姫様は本当に天才ですね!」


相変わらずこの二人の期待が大きい。いや、あの、あんまり期待しないで…興味がないことに関しては本当に覚えられない…。


「さあ、そろそろ皇帝陛下とのお茶会のお時間ですよ」


「いってらっしゃいませ、姫様」


「いってきます、先生。ヴィアベル、行こう」


「はい、姫様」


ヴィアベルに抱っこされてお兄ちゃんのいる中庭に行く。お兄ちゃんは先に椅子に座って待っていてくれた。


「お兄ちゃん!」


「メーア。今日の勉強はどうだった」


「社会のお勉強終わった!」


「終わった…?」


「うん。もう教えることないって!」


「…。なるほど、母上譲りか。俺よりも母上の能力を色濃く継いだな、メーア」


「うん?」


「母上は、特殊な能力をお持ちだった。興味がある分野に関しては記憶力が凄い方だったんだ」


「そうなの?」


「ああ。俺も多少はその能力を受け継いでいるから、魔法学においては国一だと自負している」


「へー。お兄ちゃんすごい!」


「母上のおかげだ」


「ねえねえ、お兄ちゃん」


「なんだ」


「お母さんってどんな人だった?」


「…。会いたいか?」


「うん!会ってみたい!」


「少しでよければ、俺の記憶を見せてやる」


「ありがとう、お兄ちゃん!」


お兄ちゃんが私の額に手を置く。


ー…


「ヒンメル」


「母上!」


銀色の髪に藤色の瞳。この美しい人がお母さん…。お母さんに抱きつく。甘くて優しい匂いがする。これは、お兄ちゃんの記憶…なんだよね?


「ヒンメルは優しい子ね。お母様はとても貴方が誇らしいわ」


「そんな、俺はただ母上のようになりたいだけですから…」


「いいえ。貴方はとても優しい子よ。人の気持ちに敏感で、助けを求める人に気付いてあげられる」


「ありがとうございます…母上」


「ヒンメル。どうかその優しさを忘れないで」


「はい、母上!」


ー…


「…満足したか?」


「うん、ありがとう!お兄ちゃん!」


「ああ。俺も母上に無性に会いたくなる時があるが、お前はそもそも会ったことがないのだものな。今まで寂しかったか?」


「おじいちゃんとおばあちゃんが居てくれたから大丈夫。でも、たまに二人に隠れて泣いてたよ」


「そうか。…そうだろうな」


「でも、私を帝位争いから守ってくれて、お陰で私はこうしてお兄ちゃんと平和に暮らしているから、むしろ感謝してるんだよ?本当だよ?」


「そうか。なら良かった。…これからも、母上が恋しくなったら言え。見せてやる」


「ありがとう、お兄ちゃん!」


「ああ」


お母さんのことを考えているお兄ちゃんの表情は優しい。お母さんが大好きなんだね。…ちょっとだけ羨ましい。


「お兄ちゃん、お父さんはどんな人だった?」


「…」


一気に空気が重くなる。なに?


「父上は、皇帝だった」


「うん…」


それは知ってる。


「父上には、私がなかった」


「え?」


「俺も、俺以外の兄弟だった奴らにも、等しく皇帝として接していた。誰かに父として接していた記憶はない」


「…厳しかった?」


「とても。魔法学の天才と言われた俺ですら勉強の進みのことで殴られた」


「えっ」


「皇帝には臣民たちを守る義務がある。だから完璧でなければならない。それが父上の持論だった。父上は完璧な皇帝だった。それを俺達にも強要した。それで心が壊れた兄も姉もいた。皇帝になることだけを目的とした兄と姉もいた。そんな兄弟に、俺は襲われた。俺は父上が嫌いだ。父上だけが悪い訳じゃないのはわかってる。けど、それでも、大嫌いだ」


「お兄ちゃん…」


なるほど、それは嫌いになる。お兄ちゃんは、ずっと無理をして過ごしてきたんだろうな。


「お兄ちゃん。私とお母さんがいるから大丈夫だよ」


テーブルに身を乗り出してお兄ちゃんの頭をなでなでする。本当はお行儀が悪いけど、今はお兄ちゃんが優先だ。


「…ありがとう、メーア。だがテーブルに乗るんじゃない」


「はーい」


私は素直に椅子に戻る。


「お母さんとの思い出とかないの?」


「そうだな。よくここでこうしてお茶会をしていた。二人きりでな」


「そうなんだ!」


「お前もいたら、きっともっと楽しかっただろうな」


「今はいるよ!」


「ふ…そうだな」


「じゃあ、いっぱいお茶会しよう!そしたらもう寂しくないよ!」


「わかった。…明日も、楽しみにしてる」


「私も!」


「じゃあ、またな。メーア」


「またね!お兄ちゃん!」


お兄ちゃんと別れて部屋に帰る。お母さん、いい匂いだったなぁ。今度またお兄ちゃんのお母さんに関する記憶を見せて貰おう。

ただ、私生活では完全に破綻してただけなんです…それが悪いんですが…

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