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魔王崇拝者

マオが強制召喚される少し前…


王国と聖国の混合部隊が馬にまたがり聖国領土内を疾走している。


赤い鎧が王国、白い鎧が聖国の兵装である。


彼らを率いて先頭にいるのは、王国最強魔族殺しの英雄"ハーミット辺境伯"


その隣に聖国最強聖剣の担い手"アルベルト"


彼らの任務は聖国に潜伏している魔王崇拝者達の殱滅


拠点の位置を察知して襲撃するも失敗、その後拠点の移動がされてない事から大規模な計画が遂行されている可能性が高いと高ランク冒険者20名を含む部隊で攻撃するがこれも失敗。


事態を重くみた教皇は、王国に協力を要請。

互いの最強戦力である英雄と聖騎士を派遣して今に至る。


「前にあった時より、ずいぶん顔色が良いじゃないか、髪は女の命とは言うが、男も気にする奴は多いから心配してたんだよ?」


「それは、心配かけてすまないな。そちらとは違いこちらは、醜い豚が多くて腹を壊していたんだが良い薬が手に入ってね。」


「なるほど?まわりくどいのは苦手でね、率直に聞くけど辺境伯が後継人になった彼女達と魔族との関係は?うちの暗部達では、何も掴めなくてね。さりげな

く探りを入れるように言われて困ってるんだよ」


「そう言われてもな…こちらから下手に干渉しない限りは無害だと思うしかないとしか答えられんよ。」


「まぁ、そうだろうね。従者である獣人の女性は高位の魔族である可能性が高いが、少女の方は人族の可能性が高いぐらいしかわからないのが現状らしくてね。強引な手段は破滅を招くのは目に見えてるんだよね…最近始まった魔族との交易は順調のようで何よりだよ。魔族達の力を知る上層部は頭を抱えているけどね。」


「こちらもいまだに交戦派のアホどもが騒ぎたてて馬鹿なことをしでかさないか心労は尽きない状態だ。」



・・・


「そろそろ、今回の件について話し合おうではないか。」


辺境伯が聖剣の担い手に問いかける。


「そうですね。そちらもある程度は把握してると思いますんで結論から言わしていただいてもよろしいですか?」


「構わない。」


「今回の首謀者は元剣聖の第一候補者である。"ラルフ"です。」


「あの貴族殺しか…」


「はい、平民であったがために貴族達に妬まれ家族を殺され復讐の道に進んだ、彼は復讐を果たして家族の元へ旅立ったなんて語られていましたが…まさか数多の村々を召喚の生贄にする為に襲撃したりしている魔王崇拝者に組しているとは…魔道具の通信記録で、Aランク冒険者をオリハルコンの装備ごと一刀両断しているのが確認出来ました。冒険者の討伐ランクでいうとSランク…いえSSランク相当が妥当でしょうか…」


「なるほど…七聖強2人に精鋭1000人の合同軍とは小さな拠点に対していささか大袈裟な戦力と思ってはいたが納得した。」


(念話で失礼。この話は、万が一にも漏れるわけにはいかないので…実は魔族との交流が始まる少し前に、神託がありまして…前任者である神様にかわり女神様がこの世界の管理者になられたのと、前神は間違えて呼び出した邪神に殺されたと、しかし、その邪神は世界を滅ぼす気はなく前神が立ち向かってきたから誤って殺してしまった。強すぎるその力を神界に封じて人の器で魔王として君臨して和平の道を探して旅立ったという内容でしてね…)


・・・


(辺境伯が後継人となった少女が魔王ではないかと討論されているんですよ…)


・・・


(無言は肯定と受け取っても?・・・汗凄いですね?少し行軍速度落とします?)


涼しげな顔で伺いをとる聖剣の担い手


(だ、大丈夫だ…其方…本当に19歳か?)


(はい19歳ですよ?どう言う意味でしょうか?あ、話し方が悪かったですか?辺境伯は堅苦しいのは好まなかったと記憶していたのですが…)


(口調はなおさなくてもよい。年齢は倍近く離れていようと対等な立場なのだ…貴族院の老人共を思わせるような物言いだったものでな…)


(それは酷くないですか?傷つきますよ?)

少しも動じた様子を見せない聖剣の担い手


はぁ…食えん小僧だ…だが…召喚の儀式が魔王を呼び出す為のものだとすれば…最悪の状況にはならなさそうだな…


・・・


魔王崇拝者 聖国拠点にて


「現在最終防衛ラインまで侵攻してきています。」

「儀式の準備は?」


「完了致しました。すぐにでも発動できます。」

「よし、発動せよ。もしもの場合に備えて其方達は脱出せよ。」


「「「ラルフ様!?」」」


「ラルフ様が脱出下さい!!!」


「お前達では七聖強の相手は荷が重すぎる。どのみちこの身はもう長くは持たん。この汚れた世界を清めるには魔王召喚を行う人材が必要なのだ。失敗して次が無ければ我々の今までの行いが全て無駄になってしまう。早く脱出しろ。何、成功すれば、すぐに会える。"清浄なる世界の為に"」


「「「清浄なる世界の為に!!!」」」


・・・


「来たか…」


召喚陣の前に座り込んでいたラルフが立ち上がる


「遅かったな。間も無く魔王様が降臨なされる。この腐った人の世を終わらせる為になる。」


剣を抜き構えるラルフ


「残念な話だけど、その魔王様は人との共存をお望みらしいよ?」


「戯言を…魔王様は人を滅ぼす為の存在だ、神がそう定めつくられたこの世界の浄化機能。聖国の上層部しか知らない機密事項を聖剣の担い手である貴様が知らぬわけないだろ?」


「いや、いや、そうだとしても何でそんな機密事項を君なんかが知っているんだい?おかしくない?誰から聞いたかは知らないけど騙されてるよ?魔王を倒す為に勇者を呼び寄せた神様が魔王様をつくったとか馬鹿げた話だとは思わないかい?」


「そうだな。馬鹿げている…だがそれ程までにこの世界が汚れてしまったのだ…人の手によって…腐敗した貴族共による罪の数々は法の手を逃れて今、この時も罪なき人々を苦しめ、命を奪い去っている。それを見て見ぬふりをする人々も同罪だ。」


「だから魔王様に滅ぼして貰うのかい?はぁ…救えないね…僕は別に私刑が悪いこととは言わないよ?法で裁けないなら仕方ないことだしね?でも、法を用いない行いは犯罪だよ?それはわかるかな?君は自分が犯した罪を他人の…世界のせいにして逃げているよね?救えないな…自身の行いを悔いることなくその罪を背負うことを放棄してるなんて報われないな…今の自分を妻や娘に見せられるかい?」


「貴様に何がわかる!!!」


聖剣の担い手アルベルトに斬りかかるラルフ


聖剣で凌ぐも吹き飛ばされて後方にいた部下達を巻き込んでしまう。


「追撃はさせんよ!」


ハーミット辺境伯がラルフに斬りかかる


「ふん!甘いわ!」


簡単に弾かれる辺境伯



ク…不味いな・・・ステータスの差が倍以上なうえに技量も高い…剣聖に最も近いと言われただけはある…


召喚陣が眩い光を放ち始めた。


「成功した…魔王様!!!この腐った人の世に救いを・・・?」


光が晴れると召喚陣の上にマオが立っていた。


「失敗しただと…馬鹿な?召喚術式は完全に機能していたではないか!!!」


「いや、成功しているな。聖剣の担い手が言っていただろ魔王様は人との共存をお望みだと、その為の姿だ。」


「ふざけるな!!!!!!」


激怒してマオに斬りかかるラルフ


「ちょっ!?」


動揺するマオを庇うために七聖強2人が立ち塞がる


2人がかりでラルフの斬撃を何とか凌ぐ


「呼び出した念願の魔王様に斬りかかるなんてほんと救いようのない馬鹿だね!!」

「どこまで外道に落ちるか貴族殺し!」


「認められるか!それが魔王?そんなのを呼び出す為に数多の人々を犠牲にしたと言うのか!!!認められわけないだろうが!!!」


怒りで剣筋が乱れる事もなく激しさを増す斬撃に防戦一方の2人


「これ程の腕があったのなら、貴族共を見返して剣聖の座につく未来もあったはずだ!!!復讐心に身を委ね!罪なき人々を手にかけてなお平和を願う者達をてにかけようというのか!」


ラルフに語りかけるハーミット辺境伯


「人の世は腐り果てている!人と言う種は滅びなければならんのだ!それがなぜわからない!」


「わからないね?確かに腐っているかもしれないよ?でも、全てではない。過去の英雄達が願い望んだ平和の芽をかろうとするのは彼らに対して失礼ではないかな!?」


距離をとる3人


「その行いがそもそもの間違いだったのだ!勇者等いなければ、人は滅び清浄なる世界が訪れたのだ!人がいる平和などあり得ない!!!人の生み出す最悪から目を背け何が人の世の平和だ!反吐が出る!」



強制召喚されてうえに殺されかけて批判されてるんだけど…


「許せないな…」


声を発したマオに全員視線がいく


「人は善悪の両方を兼ね持つからこそ、儚く美しい。平和な世で幸せに過ごす未来を築きたい。100年前に史上最強と言われた剣聖が残した言葉だ。その剣術は平和を願って託された剣だ。それをお前なんかが振るってるんじゃねぇよ。」


歩み寄るマオの気迫に後ずさるラルフ


馬鹿な…たいした力もの感じない少女に臆した?本当に魔王だと言うのか?




さて…啖呵を切ったは良いがどうしようwww

これ、戦いにならないんですけど…

ステータス高すぎない?とりあえず

借入検索…


完全なる模範

姿形、記憶、能力の全てをコピーする。

要求魔力

使用時間(秒単位)× (対象の総合力-使用者の総合力) 


借入15割


これだ。迷ってる暇はないな…模範対象は剣聖ジークフリード

後は…それっぽく…


「見せてやろう。かつて数多の魔族から勇者を守り抜いた最強の剣を、史上最強と言われた剣聖の姿をその身に刻み込むがいい…」


マオが光に包まれる。


光が晴れると1人老人がそこに居た。


小柄でゆったりとした服装の腰に木刀を付けている。


気薄でありながらその場に居る存在感は高いのに全く違和感を感じさせない。


「なるほど…中々に愉快な状況じゃないか…」


髭を撫でながら喋りだす老人


「仮の肉体とは言え見聞きは出来るんじゃな…約束を果たしてくれた礼じゃ…最後の指導をしてやろうかの…なんともワシの剣を学びながら道を違えた大馬鹿ものよ引導を渡してやろう。」


「まさか剣聖ジークフリード?」


「いかにも、そこの者達よ手出しは無用じゃ。」


ハーミット辺境伯は鑑定眼で剣聖を覗き見る。


見えた名前と称号は間違いなく剣聖ジークフリード本人を示してはいるが…ステータス値は自分と大差無い、しかし何故か剣聖が負ける未来が見えない。


ステータス値を超える何かを感じさせる剣聖の戦いが始まった。


貴族殺しの剣速より遅い剣聖の動作。

それなのに貴族殺しの剣は剣聖に擦りもしない。

まるで剣が剣聖を避けているかのように…

木刀がラルフの真剣に触れると真剣が軌道を変える。


「如何に速くとも、如何に精密であったとしても、線である以上隙間はあるそこを如何にして潜り抜けるかを導き出せれば当たることはない。相手の方が力強いならまともに受けなければいい。」


あらゆる方向から繰り出される無数の斬撃を避け続ける剣聖


「こんな馬鹿な事があるか!?」


目の前の光景が理解出来ないラルフは叫びながら剣を振り続ける。


「一刀一殺が基本じゃ。全ての技は一刀の為だけにある。故に一刀で事足りる。無駄に刀を振る必要はない。」


「は?」


ラルフの真剣が根元から斬り飛ばされる。

間抜けな声がラルフから発せられる。


「過去の勇者が残した知識では、全ての物は目に見えぬほど小さな物が繋がりあって出来ているそうじゃ。硬いものほど繋ぎ手が多く密集しているが…その繋ぎ目に刃を通せるのなら斬れない物はこの世には存在しない。」


目に見えぬ物の繋ぎ目にどうやって刃を通すと言うのだろうか…

だが現に木刀でオリハルコンの真剣を斬り飛ばしている…いや、刃のない木刀で刃を通すとはいかに?

そもそもアダマンタイトより硬度はないがミスリル以上の魔力伝導率を誇るオリハルコンは神鉄と言われ注ぎ込んだ魔力の量次第ではアダマンタイトを遥かに凌ぐ硬度を持つ神鉄を木がうわまるなど誰が信じようか…


「数に惑わされるな。世の理は数ではない。理を見極めよ。深淵を覗き。答えを導き出せ。さすれば過程などどうでも良い。」


貴族殺しの首が飛ぶ。


斬撃を飛ばした様子もなく。

剣聖の背後に回り込んでいて刃が届く位置にいないのにもかかわらず…

これが史上最強と言われた剣聖の力…

如何なる戦場においても疲れを知らず…

如何なる戦場においても負けを知らず…

10万もの魔物暴走をたった1人で剣のみで切り抜けたと語られる伝説…

勇者を魔族の手から庇ったが為にその最後を遂げた史上最強の剣聖

勇者に平和を託しこの世を去った物語は勇者物語の中でも1番人気の場面である。


「強すぎる…」「強いね…」


七聖強2人が声を重ねる。


「そこの…後は任せたぞ?」


辺境伯に声をかけた剣聖はそう言うと光に包まれてマオの姿に戻った。

意識を失い倒れ込むマオを支える辺境伯


「落ち着いたら詳しく聞かせてくださいね?」


辺境伯に声をかけた後、兵達に向かって指示を出す聖剣の担い手


「ここで見聞きした事は緘口令が適用される。結界装置を撤収した後に消滅術式を施してこの拠点を破壊する。行動を開始してください。」



良質な胃薬を要求してもバチは当たらないよな…

辺境伯の苦難は続く



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