旅立ち
とりあえずの危機は去ったので、深く考えずに出発の準備に取り掛かることにした。
それで、ソニアと一緒に宝物庫に来た。
お供は1人迄の取り決めが実行されているのかはわからないけど他の魔族達の姿が見えないから何らかの配慮?がされているのかもしれない。
腫れ物扱いされてそうだが…
気にしても、しょうがないか…
それにしても良い品ばかりだな…
これなんて全能力値1.5倍の効果あるんだけど…
今のステータス1.5倍してもたいしてかわらないんだよね…あ、これなんか綺麗な色の宝石だし力300上昇てかなり良いな…
ちょっと待て…私…元はオッサンだよ…いや、精神は肉体に引っ張られると言ったっけ?でも、徐々に変わっていくもんじゃないかな?うーんま、いいや。
・・・
宝物庫で装備を整えた結果
名前 マオ
種族 魔王
性別 女
年齢 0歳
レベル 2
生力 2030(+1000)
魔力 315(+300)
力 320(+300)
守 315(+300)
速 65(+50)
スキル
前借り★(隠蔽)、鑑定★、収納★、女神の加護★、仮の器★(偽装)、下級暗黒魔法、鬼神の加護
次回必要経験値1500
何か加護増えてるんですか…
鬼神の加護
生力+1000
残り生力が低い程に力が増幅される(極大)
1日に1度だけ即死ダメージを無効化する
効果強すぎるんだが…
あまり考えたらいけない気がする…武器と防具選ぶか…
要求能力高すぎて難航中…
魔剣の類はまだ使えない…
魔王専用装備みたいなのあったが装備できない…
結果…
オリハルコン製 訓練用短剣 攻撃力3000
闇の衣(偽装機能付き) 防御力5000
癒しの靴(偽装機能付き) 付与効果 オートヒーリング
オートヒーリング
3秒毎に生力が100回復する。
これならFランク冒険者として活動する分には余裕だね…
と、思っていた過去の私をブン殴りたい…
現在私は人間領にある洞窟内で手足を縄で縛られた状態で牢屋に入れられています…
どうしてこうなった…
数時間前…
装備を整えた私はソニアの転移魔法で人間領へ送って貰った。
ソニアは優秀な下僕を選んだので安心してお過ごし下さいと魔族領に帰還。
転移魔法ヤバイね…
ソニアだけで人族簡単に滅ぶね…
バランス調整って大切だね…
色々と考慮して半日程で街につけるとは言ってたけど…
鑑定しながら辺りを見回す。
ゴブリンの木(アードの森)
繁殖能力高いことから名付けられた木
木材として活躍している。
アードって確か帝国の最南端だったかな?
とりあえず街道を目指そうとした矢先…
ゴブリンが現れた。
私の経験値になってもらう!と意気込むマオ
ゴブリンが現れたゴブリンが現れたゴブリンが現れたゴブリンが現れたゴブリンが現れたゴブリンが現れた
ゴブリンが現れたゴブリンが現れたゴブリンがゴブリンがゴブリンが…
マオは逃げ出したしかし…
ゴブリンが現れたゴブリンが現れたゴブリンが現れたゴブリンが…
「・・・かかってこいや!!!」
天を見上げ叫ぶマオ…
抵抗虚しく…囚われの身となった。
回想終了
冒険の始まりが数百体のゴブリンとか笑えないw
1体あたり経験値10として…120体ぐらいか頑張ったなぁ…もう少しでレベル上がったのにな…
優秀な下僕って護衛じゃないのかな…
このままゴブリンの母親になるとか嫌なんですけど!?
「ウーウ!!ヴゥゥゥヴゥゥゥウ!」
落ち着け私…口塞がれてるしゴブリンの住処なら騒いでも無駄だよね…ここはおとなしく助けを待っていれば助けがくる!きた!?
足音が聞こえ牢の扉が開く音がした。
「グギャギャャ…」
ゴブリンが現れた。
少しで良いんで難易度下げてくれませんかね!?
ターニャー視点
黒狼族である私は影に潜む能力をかわれて。
ソニア様に仕えていた。
ターニャーという名はソニア様から頂いた。
魔王様を陰ながら支援するという大変名誉な任務を与えられた。
ソニア様から伺った内容は…
1.魔王様を死なせてはならない。
2.魔王様の行動を妨害しないこと。
3.魔王様の危機を出来るだけ救わないこと。
4.魔王様に及ぶ危険を未然に防がないこと
魔王様の仮の器は脆弱すぎて簡単に死んでしまう…
しかし、限界ギリギリまで待機しなければいけない…
予防策も禁じられている…
魔王様の初めての冒険を邪魔してお怒りに触れたら下手をすれば世界が滅ぶ可能性がある以上仕方がないのかもしれない…
今朝ソニア様に、魔王様を綺麗にしてくる様仰せつかった時の魔王様は何故かグッタリとしていた…
身体を洗っている時も人形かと思ったぐらいだ…
なんでも、一晩中勉強していたらしい。
無理がたたって本体との繋がりに支障がでてしまったがしばらくすれば大丈夫とのことだった。
宝物庫の時の魔王様は玉座の間で見た雰囲気と全く違っていた…
器の姿と精神を同調されたと聞かされたけど…
無邪気というか…
無防備すぎる感じはこれからの任務に不安しか感じなかった…
不安は的中してしまい…ゴブリンが包囲されてしまい。抗戦するも捕まってしまう…
牢屋に入れられてしばらくすると暴れるもすぐにおとなしくなる…
ゴブリンが来た。
もしかしてこの状況を楽しまれているのだろうか…
危険な状態に陥った事のない魔王様にとってはこの様な状況も…
いや、どう見ても嫌がっている様にしか…
しかし…それも状況をより楽しむための演技だとしたら…
ゴブリンが女を殺すことはないが…
このまま放置していても人間が助けに来る可能性はかなり低い…どうするのが最善か…
あの程度の力で闇の衣を破けるはずはないのに…首を傾げてなお破こうとするとは知能が低すぎる…
魔王様が泣いておられる!?
助けないければ!…いや、しかし…あれも演技だとしたら?
身体が勝手に動いていた。
ゴブリンを排除して魔王様の拘束を解く。
泣きながら抱きついて来られた時は焦ったが、頭を優しく撫でなながら介抱していると、泣き疲れたのか眠ってしまわれた。
母性本能なのだろうか…子供のいない私にはわからない…だけどわかっていることはある…
索敵魔法範囲内にいる全てのゴブリン種に激怒する。
「貴様らは…死ね!」
ターニャが声を発する。洞窟内と洞窟周辺いるゴブリン達の足元から影の棘が伸びてゴブリン達を串刺しにする。その後生き絶えたゴブリン達は影に沈んでいく…周辺からゴブリン達の姿が消えた…
上位個体合わせて500体程か…キングとは名ばかりで魔族領のゴブリンより弱い…
しかし、魔王様の仮の器はそれよりも弱い…同調されたせいか精神も弱い…
守らねば…
・・・数時間後
「御用の際はお呼びください。それでは、失礼いたします。」
そう言い残して姿を消すターニャ
黒狼族のターニャか…
姿は獣人と変わらなかったな…
少し小柄で頼れるお姉さんタイプか…
精神は肉体に影響を受けやすい。
だから怖い思いしたら泣くのは当然であって、誰かに甘えてしまうのも致し方ない。
うん。仕方ない…
自分に言い聞かせるマオ
羞恥心を抑えきれず、ゆでダコの様になりながらも必死でこらえる。
叫びながら転がりまわるような醜態を増やさないように…
ターニャーは何処かで私を常に監視している…
魔王としての体裁は保たないと…手遅れ…いやいや、まだ挽回の余地はある…はず…
おかしい…そもそも本当に精神が肉体に引っ張られるのだろうか…昨晩の記憶が曖昧なのが気にかかる…精神操作?いや、女神の加護で状態異常にはかからないとしたら…思考誘導?まさか…いや、存在や魂は神の領域…わからない…
考え込むマオ
精神…いや、思考能力も幼女化し掛かっている可能性が高い…
そもそも見た目幼女で人間領1人旅?
怪しすぎる…私が門番なら間違いなく保護する…
冒険者登録?
12歳から登録出来るとはいえこの容姿だと門前払いされる可能性が高い…
それに保護者として、人に変装できる魔族を1人選ぶ予定だったはず…姿を消されていては意味ない…
「ターニャー出て来て。」
「如何なさいましたか?」
マオの呼び掛けに応じてターニャーが姿を現す。
「これからは姿を消さずに護衛出来る?」
「魔力を抑え込んでいれば、獣人として街中でも活動出来ると思いますが…宜しいのですか?」
「どういうこと?」
「魔王様の行動の妨げにならないでしょうか?」
「私の容姿で1人旅は怪しすぎるでしょ?」
「???」
あれ?何故そこで何を言っているか理解出来ないような反応を???
首を傾げ合う2人
「ひょっとして、魔族は10歳ぐらいなら1人旅は当たり前なの?」
「他は知りませんが黒狼族は産まれて半日ぐらいで親元を離れ群を出ますね…命懸けで外敵から身を守る手段を身につけ優秀な能力を習得して初めて群れの一員として認められます。」
え、黒狼族すごくない?
「大人になれるのは1000人に1人ぐらいですが…あ、例外として長の娘なら2歳ぐらいまで訓練させてから群れから外されます。」
「結局追い出されるの!?」
「はい。」
生存確率0.1%とかヤバイね…
とりあえずターニャーに人間領での常識を教える事にした。
設定として…
ターニャーとの関係は信頼のおけるお世話係兼護衛
私は冒険者を夢見る貴族のお嬢様
無理がある気もするが…
貴族でも長男、次男以外は冒険者になる例は結構あるので…なんとかなるはず…なってくれなきゃ困る…