剣聖ジークフリード
史上最強そう呼ばれるようになって長い年月が過ぎた…
良き妻、良き子供達には恵まれたが剣聖の継承者には恵まれなかった…
それでも良かった。魔王も復活せず魔物大暴走も起こらない平和な日々…
このような日常が続くのであれば…
いや、それは言い訳か…平和を願いながら殺すことを選んだ己への…
誰も殺さないのであればそれが一番良い
剣は殺すために生み出された。
剣術はより効率良く殺す為に編み出された。
剣聖はその頂点に立つ者に与えられる称号。
そんな称号を継ぐ必要の無い世の中になるのであればそれで良かった。
しかし、魔王はいずれ復活する。
人の生存をかけた苛烈な戦いは終わる事はない。
神が定めた試練と聖国の連中は言うが禁書扱いの過去の文献を漁れば誰でも嘘だとわかる。
異世界から勇者という名の生贄を捧げて平和を手に入れる。
魔王の元に勇者を送り届ける為だけに多大な犠牲を払い。この世界とは関係のない勇者に魔王と一緒に死んでもらうのだ。
これが試練?何も知らぬ世界から強制的に連れてこられて人のために死んでくれと言うのだ。
正直に伝えられるはずもなく。
綺麗事を並べ、異性をあてがうなどして籠絡する…
自分が死ぬ定めにあるなど知りもせず戦う。
これが神の定めた試練だと言うのなら、神は狂っている。
剣を継承する者がいない以上、終わらせなければいけない…
だから亡き妻にはまだまだ待ってもらわなくては…
寿命なんぞとっくに来とる…じゃが、そんなもんで死んでやるわけにはいかん。
勇者ではなくワシが神の定めを殺す為に…
ようやく転機が訪れた。
長かった。息子や孫の最後を見送る羽目になるとは…
いまだ後継者は居らず、剣聖と言う名だけが受け継がれている状況であるが、それで良い。
魔王復活の兆しあり。
ならば、勇者より先に魔王を殺しに行かねば…
魔王が居なくても魔族は居る。
未来の脅威を人が放置するのには理由がある。
魔族は、魔王が居ない限り人の世に干渉はしてこない。
これも、神が定めたルール
故にこちらから干渉しない。
干渉する訳にはいかないと言う方が正しいか…
魔族領は強さの次元が違う。
こちらで英雄でも向こうでは羽虫と変わらぬ。
史上最強と言われているワシでもステータスの値では勝負にすらならない。
だがら、理から外れる必要があった。
この域にいたれたのはワシ1人…
力を追い求めた先にあるのは孤独のみだとワシの師匠は言った。
それでも、ワシは力を求め続けた。
直死の魔眼と名付けられている魔眼には幾つか種類がある。
死際を見れる 予知系
死を宣告出来る 執行系
死の道筋が見える 観賞系
予知系と執行系には制約が多く発動しても無効化されることが多いが、観賞系は制約はない。
しかも、常時発動型と言う欠陥付き。
道筋を辿れれば簡単に殺せるのだ。
そんな魔眼を酷使続けた結果
生き物以外でも死の道筋が見えるようになってしまった。道筋の他に点も見えるようにもなった。
点を突けば簡単に殺せてしまった。
終点と名付ける事にした…
ワシの魔眼と同じ種類の者達と出会った。
1人は殺人鬼
1人は己が目をくり抜いた狂人
1人は心を壊した廃人
最後に出会ったのは魔族
魔族はワシに問いかけた。
「貴様は何だ?」
人だと答えを返したら否定された。
魔族が言うにはワシは死そのものらしい。
魔眼は理を理解するものであって破壊するものではないとか、そもそも定められた寿命という理を断ち切れるなど人に出来るはずがないとか、訳のわからん事を喋りおったが…
魔王様が復活なさる前に死に場所を求めていたと言った時は歓喜した。
ようやく、終わらせられる。ワシが終わらす。
その後の記憶は曖昧じゃが、何か感謝されながら戦っておった。
傀儡とか、システムとか、何か重要な事を語っておったが要約すれば自由に戦って死にいようなので殺してやった。
てか、この魔族強すぎじゃろ人里離れた山の頂上に建てたワシの家も山も森もなくなっとるんじゃが…
そもそも7桁のステータス何て初めて見たわw
それから単身で魔王討伐に向かったワシに神と名乗る輩が話しかけてきた。
いや、脅迫してきたじゃな。
バグは取り除かなければいかんとか、人の分際で神の領域に立ち入るなとか、これ以上シナリオに干渉するなら人類抹殺するとか滅茶苦茶言いおる…
神と名乗る者の結末には勇者が魔王と死んで人類が存命するか、勇者だけが死んで人類が滅亡するかしかないらしい。
おそらく神なのであろう者には終点がなかった。
薄らとではあるが針糸のような筋は見える。
しかし、黙って話を聞いていたが、ワシを間接的に?殺そうとして無理だったから直接殺しに来たけど、殺すのは面倒だから脅迫してる?
クソ野郎に屈して魔王討伐を諦め勇者に剣を教えて表舞台から身を引く約束をした。
こっから先は勇者が知っている内容じゃな。
うん?今はマオと呼んだ方が良いか?
・・・
うむ、喋るにはもう少し時間が掛かりそうじゃの。
・・・
ここは、お主の精神世界の様なところじゃ。今見せてるのはワシが生きてきた記憶じゃな
・・・
何故見せてるかとな?
経験値とは身体でも魂でもなく記憶に宿るのじゃよ。
ワシの記憶をお主に託す事で足りない分を補填しようとしたんじゃが…
何か無理そうじゃの?小刻みに入れても1から得られる経験値は1レベル分だけで他は世界に還元される仕組みになっとるな…
てか、お主弱すぎ…
まあ、ワシのせいであるしの…すまんかった。
・・・?
なぁに、クソ野郎が魔王復活させようとしたら、勇者の魂と融合して対消滅するように仕組んだんじゃ。
!!!?
いやいや、お主も了承したじゃろ?
"この世界の人々の為に死んでくれ"
覚えとるじゃろ?
「詐欺師だ!?」
ようやく言葉を喋ったと思ったら詐欺師扱いとか酷いのぅ…
魔王の力も勇者の力とともに消え去ったがお主の魂が残ってハッピーエンドじゃろ?
「終わってないよ!?むしろ始まったからね!?この身体とステータスで魔族統率しろとか無茶振りもいいところだ!」
なんとかなっとるし大丈夫じゃろ
強くしようとしとるが無理みたいじゃし…
存在崩壊しそうじゃったから慌てて憑依して、再構築しとるがワシの神眼に適応できんし…あ、神眼とは直死の魔眼の特性を全て兼ね備えた超越スキル…まあ、神…といってもワシは死神じゃがな。
称号スキルに神の依代が追加されとるから神霊とか憑依出来る様になっとるぞ。
まあ、ワシ以外だとそのまま乗っ取られるのがオチじゃからやめとくようにの?
(ツッコミどころ満載なんだけど…記憶の映像消えたら爺いの姿も見えないし真っ暗なんだけど…)
今のお主の姿を強く思い浮かべよ。
剣聖に言われるままに。自分の姿を思い浮かべるマオ
すると、真っ暗だった空間にはっきりとマオの姿が映し出された。
「強くなってる?」
ステータスを確認するマオ
名前 マオ
種族 勇魔王
性別 女
年齢 0歳
称号 屍姫 剣聖 神の依代
レベル 4
生力 2100(+1000)
魔力 400(+300)
力 400(+300)
守 400(+300)
速 150(+50)
スキル
前借り★(隠蔽)、鑑定★、収納★、仮の器★(偽装)、下級暗黒魔法、剣聖術★、身体強化、魔力強化、女神の加護★、鬼神の加護、死神の加護
次回必要経験値5000
(剣聖の称号がついてるって事は…)
収納から魔王剣を取り出すマオ
「やっぱり装備出来る!!!」
「ふむ、依代としては文句ないの」
魔王剣から剣聖の声が聞こえてきた。
「何してやがる糞爺wwwさっさと成仏しろよ!?」
「師匠に向かって糞爺とはなんじゃ!?それに末端とは言え神じゃぞワシ?もっと敬え。」
「煩いわ。人を爆弾みたいにしといて、憑依したりするし糞爺で充分だ!!!」
「あ、何て事じゃ…確かに色々利用したのは謝ろう…じゃがいくらなんでもこれは酷いと思うんじゃが…」
???
「鑑定してみ…」
言われるままに魔王剣を鑑定するマオ
神剣糞爺
攻撃力???
神の宿し神剣。
魔力を注ぐことにより無限に攻撃力を上昇させる神剣。刃の部分は魔力が具現化しているものである。
錆びる事はなく刃が折れたとしても魔力を注げば元通りになる。
死神の力の一部を使用する事が出来る。
神剣に選ばれた者しか装備する事が出来ない。
・・・
「何しやがる糞爺!?」
「お主が糞爺言うからじゃろうが!」
「糞爺が勝手に剣に憑依するからだろうが!?」
・・・しばらくして
「まあ、神眼を使えるようにするために剣に力を分け与えた迄は良いとして…憑依する必要あった?」
「そうでもせんとこの世界の行く末を見守れなさそうでの。神に至ったとは言えいつ消えてもおかしくないぐらい弱いからのワシ。最弱の神と最弱の剣聖コンビの結成じゃな。」
「・・・で、いつになったら目覚めるれるんだ?」
「う〜む・・・結構弄ったし、当分はこのままじゃな!何、実体の方はちゃんと保護されとるから問題ないじゃろ。」
「とりあえず寝るから起きれそうになったら起こしてくれ…疲れたzzz」
眠りにつくマオ
「ワシはこの依代の調整でもしとこうかの…」