異世界の売国王は勇者すら売る
※救いなど一切ありません。バッドエンドです、ご注意ください。
とある世界のとある国。
死んだ目の王は玉座にて勇者4人を迎えた。
「よく来たな勇者よ」
この言葉は定型文。
これまで何十回、何百回、何千回と掛けてきた言葉だ。
王はこれを以て労いとし、控える宰相を一瞥することでその日の仕事は終わる。
こんな生活が続いて早三年。
王は未だに悔いていた。
隣の魔人を宰相にしたことを。
そもそもの発端は国民の中から優秀な人材を登用しようとしたことだった。
そのアイデア自体は素晴らしく、決して間違ったものではない。
ただ、魔王がそれを見逃さなかったのは不運というべきか。
国王の心ここに在らずという状況にあって、その宰相は勇者達に雄弁を垂れる。
宰相に相応しい達者な口で勇者一行を誘導しているのだ。
「今この国は魔王軍の進行によって善良なる民達が苦しめられている。願わくばそなた達にはこの国を救う英雄となって欲しい。無論、国からの厚い支援を初め、成功の暁には莫大なる報酬を与えん」
初めは戸惑う勇者達も、口車に乗せられ餌食となるのがいつものオチだ。
勇者達は未成熟のまま魔王軍の罠が待つ地へと送られる。
勇者達のその後など語るに悲惨。
男はすぐさま殺処分。
女はあれこれ楽しんだ後殺処分。
どこにも救いなどありはしない。
それを知ってなお放置する王にも理由はある。
宰相の手によって人質に取られた家族だ。
信頼し権力を授けた3日後には既に、使用人の3分の1は魔人と入れ替えられていた。
傀儡政権の誕生はあまりにも静かに、そして迅速に完了したのだ。
そうなってしまえば打つ手なし。
負の連鎖は止まらない。
国を救える存在の勇者が来ては死に、来ては死にを繰り返す。
育つ間もなく勇者の消費が続く。
魔王の狙いは脅威の根絶。
一体いつまでこんなことを続けなければならないのか。
王は民よりも家族を選んだ。
なんの罪もない勇者達よりも家族を選んだのだ。
王はこれから死にゆく勇者達を見遣る。
(永遠に続く地獄など無いはずだ。きっといつか、安寧の日々を迎えることができるはず。その日まで――耐えるのだ)
魔王の策略によって反抗心の削がれた王は、ただただ祈ることしかしなかった。
閲覧ありがとうございます。
※2019/10/04追記:ホラージャンルに変更しました。