第1章〜ツシマという少女〜その3
血溜まりに埋もれた少年を囲うのは、その学校の教師たち。警察官なんていなかった。
生徒はもうみんな帰っていた。
だからそこにいたのは間違いなく大人だけーーその大人達の光景を少女は見た。
「早く埋めましょう」
「両親には自殺だと言おう。どうせイジメられているような生徒だしな。我が校の恥、よく毎日学校なんかに来るよな」
「ほんとな。まっ、早く済ませよう」
床のフローリングは全て剥がされ、新しいのに交換され、死体を学校の裏校舎へと運ばれた。
幽霊の彼女が大人達に触るが、触れられない。
「どうして……なんで触れないの?」
自分の手が震えていることに気づく。
そして成仏しようとしていた。
彼女今日で消えようと願ってしまった。だからもう、この世にいる時間が無くなりそうだった。
「(……嫌だ。あの子が……どうして?あんな笑顔で話していたのに。イジメ……終わったって話してたのに……)」
少年は嘘ついていた。
少女に会うのが楽しくて、暗い話題を避けていたのだ。だからイジメで自殺を止めた後、少年は笑顔で「もうイジメなんかされてないよ。毎日学校が楽しい」と話した。
「(……殺してやりたい。この大人達を……イジメてた奴らみんな!!)」
( っ`-´ c)マッ
翌日、署の備品損失の書類をカオルは書かされていた。ナオミは病欠、代わりに何故かシツマが席に座っていた。
「……課長になんて説明すればいいんだよ……」
「それは貴方の仕事でしょ?」
「パソコンの損害は、だ!俺が言ってるのは、お前の同伴の話だよ」
【( っ`-´ c)マッ】についての調査、そして同時に今起きている少年少女の失踪事件、これらの調査にはシツマが不可欠だった。
彼女は【( っ`-´ c)マッ】に対抗する力のようなものがあった。
「孫とか娘とか甥っ子とかアフターとか言えばいいじゃないのよ」
「アフターって……制服の女子高生とアフターってよ、俺は中年オヤジかよ!」
結局言い訳など思いつくはずもなく、課長と話をつけに行くことになった。
「カオル君……その子は、君の何なのかね?」
「えっと………………奥さんです」
「嘘つけ!!!もっとまとも嘘付けないのかね君は!!!パソコンも壊すは、ただでさえ人手不足なのにナオミ君は休むは!!!」
「で、ですから……猫の手を借りよう、な?」
「私に降らないでよ」
冷たく返すツシマ、冷や汗をかきながらカオルは苦笑いし、課長の肩に手を当てた。
「という訳です。あ、これ備品の発注書です。それじゃ!」
「ちょっとカオル君!?まだ話終わってないよぉ!?」
ツシマを担いで外へと出るカオル、結局うやむやにしたままパトロールへと向かうのだった。
カオルはたまたま空いていたパトカーを借り、そのまま署内を出て行く。向かう先は決まっていない。とりあえずで車を走らせていた。
「んで、何処に行けばいい?」
「たった1つ手掛かりがある場所。【( っ`-´ c)マッ】によって改変が起こった場所があるの。そこに向かって欲しいの」
「わかった。ナビしてくれ」