とある街角で
深ぁい森の奥にはね、お菓子づくりが大好きな魔女が住んでいるんだよ。
お菓子が大好きな魔女の家だから、壁はビスケット、屋根はウエハース、柱は色とりどりのキャンディー。窓硝子だって飴細工だし、ソファはふわふわの柔らかいカステラ。戸棚もダイニングテーブルも椅子もクッキーで――そう、全部お菓子でできた、お菓子の家さ。テーブルの上にはケーキやパフェやアイスクリーム……あふれるほどのお菓子だって並んでいるしね。
それにね、家だけではないんだよ。
綿菓子が浮かんだ青い空だってゼリーだし、夜になれば月はキャンディー、星は金平糖。家の脇にある泉は水飴。木の幹はパイで、葉や果実は砂糖菓子――そんなふうに、森まで全部がお菓子でできた、お菓子の森だよ。
ほら、今日はそのお菓子の森から、特別な魔法のお菓子を持ってきたんだ。本物の子どもみたいだろう?
今日は運良く6つも仕入れられたし、この街ははじめてだからね。特別にこの一番小さい子の髪をちょっとずつ、食べさせてあげるよ。
え? どんな魔法かって?
それは食べればわかるさ。
さあ、遠慮しなくていいから食べてごらん。とびきり甘くておいしいからね――。
Fin.