6/7
魔法のお菓子
「すごい、これぜぇんぶお菓子でできてる!」
「お菓子でできた人形だ!」
家の近くに落ちていたお姫様のような格好の人形に、幼い子どもたちが集まってきます。足はしけって崩れていても、チョコレートの髪も、髪を飾るホワイトチョコとストロベリーチョコのバラも、スライスした桃や林檎のドレスも、肩や腕のビスケットも、甘くておいしそうな香りがしています。
ふたごの末妹達がそろって髪に飾られていたバラのチョコを手にとり、あむとほおばりました。
「あまぁい」
「おいしい!」
「ズルイぞ、ぼくもー!!」
ドレスの桃や林檎をはいでは食べ、チョコの髪にかじりつき。
6人のこどもたちは嬉々として落ちていたお菓子のお姫様を貪ります。
「…………ぃ………ぁ……ぁ――……っ」
お菓子の人形が風の鳴くような悲鳴をあげていることも、琥珀糖の瞳から涙を流していることも気づかずに。
集る蟻と競うように、腕を折り、髪を折り。肩に、頭に、かじりついて。
全部、食べてしまいました。