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こたつの温もり

作者:観月 穂張
「いつまで入ってるの!」
 いつも通り、母から叱責されてしまった。
「だってー………」
「だってじゃないの!
 はぁ………なんで結はそんなにこたつが好きなわけ?」
「なんでって、そりゃあ………」
 ………なんでだろう?
 母の、恐らく、何気無く言ったであろうその言葉に、私の身体は、私の意志に関係なく、無意識的に反応した。
 温かいから?いや、違う。
 確かに、温かいから、こたつに入っている。何とせよ、この寒さだ。誰でも暖を求めるだろう。
 しかし、それだけではない気がした。
 とてもむず痒かった。
 何か、大事なことを忘れているような、感覚的にそんな気がして、でも、何かに詰まって上手く思い出せない。
 一体、何なんだ………何故だ………何故―――。

 ==

 私がまだ小さい頃、物心ついて間もない、二歳か三歳の頃、私はおじいと一緒に暮らしていた。毎日意味のない会話をし、一緒にご飯を食べ、一緒に遊んだ。そんな優しいおじいは、私の悩みを聞いてくれたりもした。
 幼稚園に入園するにも満たない年齢の私だったが、親は仕事で忙しかったため、一歳から保育園に預けられていた。だから、幼いながらも、悩み事があったのだと思う。
 そんな私とおじいが、いつも決まってお話をする場所が、こたつだったのだ。
 おじいは、いつも嫌な顔をせず、笑顔で話を聞いてくれたから、悩みなんてすぐに消えて、いつも最後には笑っていた。
 そんなある日、おじいが急に病床に伏せるようになった。
 これは物分かりが良くなってから聞いたことだが、おじいはその随分前から病気を患っていたらしい。
 おじいは日々をを病院で過ごさざる負えなくなり、おじいがこたつに入ることはなくなった。おじいがいないから、という理由も勿論あったはずだが、こたつに入るとおじいのことを思い出してしまいそうで、寝たきりの姿を想像したくなくて、それきり私がこたつに入ることもなくなった。

 それから幾日も経ったある日、休日で買い物に行っていたはずの母が、額に汗を滲ませ、勢いよくドアを開き、血相を変えた顔で、私に「今すぐ出かけるよ!」と言ってきた。何事かと思ったが取敢えず車に乗り込んだ私を母が連れて行ったのは、見覚えのある大きな病院だった。
 母は私の手を握り、小走りというには少し速い速度で足を進め、ある一室の前でその足を止めた。
 母が開けた扉の向こうには、見知った顔ぶれに囲まれ、今にも消え入りそうな、小さな息遣いをしているおじいの姿があった。
 母は私を抱え、おじいと同じ目線まで持ち上げた。
 そしておじいは、それほど高くない自分と同じ目線にいる私に向かって、こう言ったのだ。
「結、最近、こたつに入っていないそうじゃないか。こたつはいいぞぉ。悩みなんてすぐに消し飛ばしてくれるからなぁ!」
 こう言った後、おじいは目を閉じ口を閉じ、おじいの声はもう聞こえなくなった。

 ==

 時は戻り現在、なんでと私に問うた母に、私はこう答えた。

「こたつはいいぞぉ!おっきな、おっっきな温もりを感じられるからなぁ!!!」

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