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殺し愛
*タイトルはアレですが流血とかはありません。
「…もう、いやだ…」
震える自分の身体を抱える彼。いつも明るい彼の頬には、静かに涙が伝っている。
「もう、誰も傷付けたくないんだよ、僕は…!」
この手は血で染まっている、だから殺せ、彼はよくそう言っていた。なら、俺は。
「…殺してやる」
「…え…?」
「俺がアンタを殺してやる、必ず」
驚いたように彼が目を見開いた。口癖のように「殺せ」と言っていたくせに、何を驚くことがある?
「俺が必ず殺してやる。だから―――アンタが俺を殺してくれよ」
「…!」
「アンタの命は俺がもらう。代わりに、俺の命をアンタにくれてやる」
その命をくれるというのなら、俺の命をくれてやってもいい。そう思っただけだ。
「だから、勝手に死ぬな。…生きろ」
「っ、ぁ……!」
安心しろ。ちゃんと俺が―――殺してやる。
*333文字