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十番目の神殺し  作者: ゆうかり
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第二話

またもや短い。そして話は動きません。

「やあ、マルクト。相変わらず声が小さいね、もっと出そうか」

室内に入った少年、マルクトは、そう語りかけた人物の方に顔を向け、先ほどと変わらない声量で、

「はい、ごめんなさい、ケテル」

とささやいた。

それにケテルと呼ばれた青年は苦笑しする。

「ごめんなさいと言いつつ、全く改善しようとしないね、君は。

まあいいよ、今回呼んだのはそんなことじゃない。………旧首都で神隠しが多発、急いでこれを治めるように。つまりは出動だよ」

穏やかな笑みを浮かべながら、ケテルはそう言った。

マルクトはそれをぼんやりと聞きながら、目の前の不思議な上司を見つめた。

アルビノ特有の白い髪に赤い目。見た目こそ青年と呼ぶにふさわしい若さだが、その実、『対神格特殊部隊(略称対神隊)』設立時から隊長、つまりトップとして君臨している。

現在新暦百五年のため、就任当時二十歳だとして、百歳はいっていることになる。

『対神隊』内では、人外説が有力だ。

とはいえ、ケテルの持つ力のことを考えると、不老であってもなんら不思議はなくなってしまうのだが……。


「………マルクト?聞いてるのかい?」

名を呼ばれてマルクトは小さくうなずいた。

実際何を言っていたかは把握しているので何の問題もない。上司に対する態度でないことを除けば。

もはや開き直っているマルクトに対し、ケテルは小さくため息を吐いて話を続けることにした。

とかく『神殺し』は変人が多いのである、ケテルも含めて。

「神隠しに遭ったのは、美男美女。とはいえ、今は男性の数の方が多いから、男女比は偏ってるけど」

「一般人ですか」

「いや、自衛隊員も含まれてる。線の細い美形だよ、ほら」

そういってケテルが差し出した書類についている顔写真には、確かにかなり整った容姿の男が写っていた。

「いまごろ食われてるか、別の意味で食われてるか、観賞用に保存(・・)されているかはわからないけど、生きているなら保護するように。あ、でも最優先事項はこれを起こした神の撃退だからね、間違えないよう」

さらりと恐ろしいことを言ったケテルにこれまたあっさりとマルクトはうなずく。

そもそも神が起こす事件がぶっ飛んでいないはずがない。これが神の『普通』なのである。

「今回はホドをつけるから、捜索では彼を頼るといい。戦闘に参加しようとしないのは相変わらずだから、そっちは一人で頑張って」

マルクトは、小さく返事をすると一礼して部屋を出て行った。

これから荷造りをしないといけない。

『神殺し』といえど、瞬間移動ができるわけではないので、移動は交通機関を使うことになる。

そして、いくら文明が発達しようと、現首都である京都から東京まではそれなりに遠いのである。


次の日の新幹線。

完全な無人化とメンテナンスフリーを果たした列車の中、隣り合って座る、一際目立つ二人組がいた。

いわずもがな、マルクトとその同行者、ホドである。

ホドの見た目は、一言でいえば、博士であった。

茶髪に琥珀色の眼、冷たく整った顔。そして白衣に眼鏡。

しかし髪がぼさぼさで、白衣の下のスーツもよれよれなため、清潔感は皆無だ。

白衣と眼鏡だけは新品のごとくきれいなため、その部分だけ妙に浮いている。

そんな三十路のおっさんと、目隠しした十代の少年が一緒となると、悪目立ちするのも当然だった。

というか、もしやおっさんがそういう『(へき)』で少年に目隠し中なのかと深読みしている者もいた。あと、目隠し少年に興奮する変態も。


しかし、もはや目立つことに慣れきった二人は周囲の様子など全く気にせず、マイペースに今回の神隠しについて話し合う。

とはいっても、視線はあっていない。マルクトの目隠しがどうこうというのは関係なく、窓側のマルクトは新緑の目立つ窓の外を眺め、廊下側のホドは膝の上のノートパソコンをカチャカチャやっているからだ。

「被害者は二十五人、男二十、女五、全員が美形。それ以外の共通点は特になし。実際に消えたのは東京都内ですが、観光客も含まれています」

相変わらず囁くような声でマルクトが告げると、ホドはおざなりに相槌を打つ。

「時間、場所、共にバラバラで、中には神隠しに関係ない行方不明者もいるかもしれません。しらみつぶしに現場をあたって、当たりを引いたらお願いします」

「おー」

適当に返事したホドは一段落ついたのかパソコンを閉じ、マルクトの方を向く。

「にしても、しらみつぶしとかメンドくせえなぁ。お前、何とかできねえの?」

できないこと(・・・・・・)はありませんが(・・・・・・・)、苦手なので。ホドに任せた方が確実かと」

そうつぶやくマルクトは、相変わらず窓の方を向いている。

決してホドの方を向こうとしない様子に、『おっさん変態説』を確信するものが現れたりしたが、実際はただ流れる景色を楽しんでいるだけである。

いろいろあってマルクトの精神年齢が少しばかり低いことを知っているホドは、自分が嫌われているなどと勘違いすることはなく、かといって微笑ましげに見守ることもせず、足元のカバンから小難しげな本を取り出して読み始めた。

微妙な緊張感を持つ人々と、マイペースな二人を乗せて新幹線は東京へと向かってゆく。

二人はマイペース!!

イケメンおっさんはだらだらしてます。怠惰なおっさんキャラが好きです。

誤字脱字等ありましたら感想で教えてください。

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