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魔法少女マジカルでぃすぺあ  作者: アカバコウヨウ
第七章 魔法少女マジカルかのん
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第三十五話

真っ白だ。

 俺の頭の中と、前の景色が真っ白だ。

 何でこんなに白い?

 わからない。

 わかりたくない。

 ああ、光が収まる。

 わかりたくないのに、状況が分かってしまう。

 俺の脳がわかろうとし出してしまう。

「マジカルマジカル☆」

 先ほどくらむが居た場所には誰もいない――くらむも、魔法少女さえいない。八岐大蛇だけが墓標のように地面に突き刺さっている。

 死んだ。

 くらむが死んだ。

 目の前の光景が、俺にその現実を突きつけてくる――あの殺しても死にそうにないクソババアが死んだのだという現実、あまりにも嘘くさくて笑いさえ込み上げそうな現実。

「マジカルマジカル☆」

 殺す。

「マジカルマジカル☆」

 殺した奴を、

「マジカルマジカル☆」

 殺す。

「マジカルマジカル☆」

 そうしてそいつは目の前に降り立った。

くらむを殺した魔法少女――黒髪ツインテールの魔法少女、光輝くライフルのようなステッキを持った魔法少女……そいつが降り立った。

高らかに、自分の存在を主張するように、


「魔法少女マジカルかのん、参上よ☆」


「嘘……だろ?」

 俺の視界が一点に集中されていく、その先に居る魔法少女。

 黒を基調に赤のアクセントが入ったフリフリの服――魔法少女特有の衣装をまとったそいつは……夏音だ。

 さっき魔法少女が自ら名乗った通り、どうしようもなく夏音だった。

「むぅ、反応が薄いわ」

 彼女はゆっくりと俺の方まで歩いてくる。

 そんな動作を見てまた思う――夏音だ、これは間違いなく夏音だ。

 彼女は俺のすぐそばでピタリと止まり、

「天才魔法少女が参上したのよ? もっと褒め称えなさい☆」

 言って、こちらをビシッと指差す夏音。

「お前……冗談だろ?」

「?」

 俺の言葉に首を傾げる夏音。

 そんな細かい動作一つ一つが愛おしい夏音の物だ……だから、この先を言うのが怖い。しかし、俺は心のどこかに希望を持ちながら言う。

 こうであってほしい。

 こうであるはずだ。

 そんな希望を抱いて、

「お前……魔法少女じゃないよな? お前は、お前はエクスキューショナーの……っ」

「わたしは魔法少女よ」

 だが、俺の希望は即座に打ち砕かれた。おまけに、


「さっきから慣れなれしいわね、あなた誰よ? 話しかけてあげているからって、勘違いしないで欲しいわ」


 人間に心というものが有るのなら、きっと心臓の右横あたりだと思う。だって、夏音に「あなた誰」と言われた時、そこに焼けつくような痛みが走ったのだから。

「さて、先輩も蒸発しちゃったし……代わりにわたしが殺しまくらないとね☆」

 夏音はステッキを指揮者のように軽快に降りながら言う。

「まずはあなた、天才の威光の前に消え……」

「待て」

 でも、最後まで言わせない。最後まで言わせたら、きっと戦いが始まってしまうから。

「なに? 命乞いなら聞かないわ」

「違う」

 命乞いなんかじゃない、最後にこいつに聞きたい事があったのだ。

「お前は胡桃夏音か?」

「ちがうわ、わたしは魔法少女かのん。天才中の天才よ☆」

「…………」

 そうか、こいつはあくまで魔法少女か……ならば俺の方針は決まった。

「魔法少女かのん」

「気安く呼ばないで☆」

 あぁ、お前を夏音と呼ぶのは最後にするよ。


「巻坂真理の誇りにかけて、お前を殺す」


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