第三十話
「大丈夫か、夏音!?」
「ええ、大丈夫よ……それより」
そうだ、何が起きた?
さっきの放送を聞く限り、魔法少女が侵入してきた事は間違いない。問題はどこまで侵入されているかだ。商業区や居住区まで侵入を許していれば、事態は最悪だと言える――いや、数えきれないほどの魔法少女の襲撃を受けていると言う現状、すでに最悪か。
「これってマズイわ、最悪よ」
「わかってる」
「階層エレベータがこんな状態になっているって事は、魔法少女は階層エレベータをぶち抜1いて侵入してきたという事になるわ。もしかしたらすでに……」
夏音は苦々しげに口を閉じるが、俺には彼女の言葉の続きが分かった。
もしかしたらすでに、多くの魔法少女が商業区と居住区に侵入しているかもしれない。
「夏音、行くぞ!」
だとすれば、一刻も早く行動しなけば手遅れになる。何かもが終わってしまう。
他のエクスも動き出してくれているはずだが、人数は一人でも多い方がいい。
「他のエレベーターはどうだ!?」
真中のエレベーターはどこからどう見ても使えない。
俺は他二つのエレベーターを確認するが、
「駄目よ、壊れてるわ!」
どちらも回数表示が消え、ボタンを押しても降りてくる気配がなかった。
くそっ!
どうすればいい! 早くしないと駄目だってのに、こんな所で足止めされるわけには……、
「階段よ!」
「階段?」
「非常階段があるわ! こういう時のものでしょ? 今使わないで、何時使うのよ!?」
階段ね……商業区と居住区はここから階段で行くとすると、足が棒になるような階数の距離が有る。そんな階段をちんたら上ってたら手遅れに、
「走るのよ! ダッシュよ! ダッシュだわ!」
ちょっと待て、目的の階層まで階段ダッシュをしろってか!?
だがそれしか手がないのも事実。
「夏音」
ああ、そうだ。
例え時間がかかってしまっても、少しでも早くつけるのなら……やってやろうじゃないか。
「遅れるなよ!」
「天才のわたしが遅れる訳ないわ」
「はっ、言ってろ」
崩壊したエレベーターを後にし、非常階段を目指して俺達は走り出した。




