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魔法少女マジカルでぃすぺあ  作者: アカバコウヨウ
第五章 ひと時の……
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第二十五話

「真……理……」

 俺の腕には血まみれの彼女が、今にも力尽きてしまいそうな胡桃夏音が横たわっている。

 彼女の腹は魔法少女の攻撃を受け、無残にも大きな穴が開いてしまっている。

 もう助からない。

 一目見てそう思った――出血がひどすぎるのだ、夏音を助けるためにはこの出血をどうにかするしかない。

「っ!」

 誰か居ないのか!?

 誰か、誰か居ないのか!?

 何故か声が出てこない口を動かしながら、俺は必死に辺りを見廻すが、やはり周りには誰もいない。シュプレンガーの仲間達はおろか、先ほどまで戦っていた魔法少女すらいない。

 そうだ、周りには誰もいない。

「さっき自分で考えてただろ? 夏音はもう助からないって」

 誰だ?

 俺は辺りを見廻すが、声の主は見つからない。ここには俺と夏音しかいない……にもかかわず、件の声はまたしても語りかけてくる。

「お前のせいだよな? お前が殺したようなもんだぜ?」

 俺は殺してない。

 殺したのは魔法少女だ!

「殺したのはお前だよ」

 黙れ。

「お前があの時、ちゃんと引き留めたらこんな事にはならなかった」

 黙れ。

「お前の周りの奴らはみんな死んでいくよな? お前の家族も……」


「黙れぇええええええええええええええええええ!」


「はぁ……はぁ……ここは?」

 俺の部屋だ、一目見てわかった。

 俺は今、自分のベッドの上で悪夢にうなされて飛び起きたんだ。

「……なさけねぇ」

 俺は額の汗を手の甲で拭いながら、ベッドに倒れ込む。

 息が荒い、汗をかいた体が気持ち悪い。

「こんな状態で寝られるか……風呂、風呂に入ろう」

 俺は再度、体を起こしてベッドから立ち上がろうとし、

「痛っ!?」

 腹部に刺すような痛みが走る。

 なん……だ?

 記憶がおぼろげだ、そもそもどうして俺はここに居る? 俺は確か……っ!

「魔法少女は……夏音はどうなった」

 俺は腹の痛みなど忘れて、ベッドから立ち上がる。

 夏音の安否が知りたい――さっき見ていた夢のせいもあるだろう、夏音の安否がどうしようもなく気になったのだ。

 あつはどうなった!?

 頼むから生きていてくれ……頼むから、

 そこまで考えたところで、浴室へと続く扉が開いた。そこから出てきた人物を見て、俺は思わず驚きの声を上げてしまう。

「は?」

 出てきた人物は夏音だった。肌をピンク色に染め、体から湯気を立ち上らせ、バスタオルを体に巻いただけの夏音だったのだ。

「え、し……真理?」 

 同様に夏音も俺を見て驚いているような顔をしている。

 いや、まて。おかしいだろ……何でこいつが驚くんだよ? ここは俺の部屋だ、夏音の部屋ではない。

 っていうか、こいつ何で勝手に風呂使ってんの?

「ふ、ふく!」

「あ?」

 副?

「服!」

 あ、あぁ。服か、服がどうかしたの……まて、何か凄く嫌な予感がする。

 俺は夏音から視線を外し、ゆっくりと自らの体を見る。

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 裸だった。

 全裸だった。

 当然、大事なところも見えてしまっている訳だ――誰にって、もちろん夏音にだ。

「な、なんだよこれ!? なんで裸!?」

「きゃっ! こ、来ないでよ!」

 俺は服を取りにロッカーに行こうとしたのだが、夏音はどんな勘違いしたのか、やたら女の子らしい声を上げて後ずさる。

 そして悲劇は起きた。

 夏音のバスタオルがハラリと床に……、

「…………」

「…………」

 辺りを包む沈黙、辺りを包む表現不可能な混沌とした空気。

「えっと」

 とりあえず俺は……とりあえず何だ?

 俺はとりあえず何をすればいい?

「へ、へ!」

「へ?」

「このへんたぁ~~い!」

 迫りくるおっぱ……夏音の右拳。

 鼻から流れる暖かいものを感じながら、俺は再びベッドへとたおれるのだ。

 あぁ、とりあえずよかった。

 夏音が生きていて本当によかった。

「何ニヤニヤしてんのよ!? 変態! 信じられないわ!」

 ……本当に、よかった。

 そして、俺の意識は深い闇の底へと落ちて行った。


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