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魔法少女マジカルでぃすぺあ  作者: アカバコウヨウ
第四章 慢心、傲り、そして油断
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第十九話

数日後、俺は久しぶりの休暇が出たので、自室のベッドで横になっていると、

「ちょっと真理、起きてる? 起きてるんでしょ?」

 うるさいのがやってきた。

「開けなさい! わたしを待たせる気?」

「はいはい、開けますよ……開けるから少し待ってろよバカ女」

「いま何て言ったの?」

「なんでもね~です~」

 俺は椅子に引っかかっているジャージ一式(完全な部屋着だ)を手に取ると、さっさっと着替え始める。

「まだ?」

 本当にうるさい、今着替えてるから待っていろ。

 いっそのこと、下着姿で「待った?」とか言って扉を開いたらどうなるだろう? などと、どうしようもなく下らない事を考えたが、もちろん実行にはうつさない。そんな事をしたら、確実に犯罪者だ。セクハラ街道まっしぐらだ……まぁ、少し夏音の反応を見て見たくはあるがな。

「お待たせ、んで何?」

 着替え終わったので扉を開けると、そこには縦長の大きなケースを背負った私服の夏音が居た。

 全体的に白を基調としたコーディネートがとても可愛らしく見える、少しゆったりとした感じのワンピースが季節にあっていて、見ていても涼しい……が、所詮は中身はバカ女。

「っふ」

「なによ?」

 おっといけない、思わず失笑してしまった。

「お前こそ何だよ? なんか俺に用があんじゃないのかよ?」

 夏音は「あ、忘れてたわ」と言いながら手の平に握り拳をポンと打つ。忘れるほどどうでもいいことなら、俺を巻き込まないでほしい。

「この前の戦いで、あたしの寿命を四年減らしちゃったでしょ?」

「んぁ?」

 この前の戦い……あぁ、そういえばそうだな。

 発射で一年、銃弾を止めて一年――ここまでで賢者の石二つは使い切る計算になる。

 残りの四回の変化は夏音自身の寿命を誓っての変化だ。俺達エクスにとっては、自らの寿命を削るのは、それほど珍しい事ではないので忘れていた。

「だから何?」

「わからないの?」

 何その「バカじゃないの?」みたいな顔? むかつくから止めてくれ。

「あたしは天才なの! 天才なわたしは上からこう言われたのよ、『君は有望株なのだから、あまり寿命を使わないでくれ。一応今回の件で、何か他の被害が出ていないか、錬金術師に頼んで調べてもらうように』ってね」

「いまいちわからないな。それでどうして俺の所にくんだよ?」

「はぁ」

 と言いながら肩をすくめる夏音――「はぁ」とため息をついたのか、「はぁ?」と俺を小ばかにしているのはわからない。

俺の間ではどっちもな気がするが。

「あなたも一緒に来て、奴隷なんだからわたしと一緒に行動するのは当たり前でしょ?」

 来たよ、夏音の謎理論。

「一人でいけよ、面倒くさい」

 なんで俺が一緒に……奴隷だからか? っていうか、俺は奴隷になった覚えなんかないんだけどな。

「嫌よ」

「何でだよ? 俺はせっかくの休みだから、ゆっくりしてたいんだよ」

「あら、せっかくの休みに、わたしみたいな天才美少女と出かけられるんだから、男としては幸せなんじゃないの?」

「…………」

 きっとこいつは冗談とかじゃなく、本気で言ってるんだろうな――確かに天才で美少女かもしれないけどさ、実際可愛いし。

 でもな、

「自分で言うな」

「とにかく来て」

「嫌だ」

「むぅ~~~~~~~~~~~~~~! いいから来て!」

「な、ちょ!?」

 夏音は半泣きで俺の右腕を掴んで、俺を部屋から引っ張り出す。

「真夜の工房に行きたいんだけど、場所が分からないの! だから付き合って!」

「あぁもう、わかったよ……わかったから放せ! 着替えさせろ!」

 俺が言った途端、夏音は手を離して「本当?」と花が咲いたかのような笑顔になる。

「じゃあ、部屋の外で待ってるね」

 バタンという音と共に、扉が閉められた。

 なんだろう? なんかものすごい虚無感を感じる。

 あと、女って怖いな。

 俺はっさき着たばっかのジャージを脱ぎ、ロッカーに入ってる自分の私服を漁りだした。

部屋の外からは「早く!」「まだ?」という声が永遠と響いていた。


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