桜(作:猫)
風の強い日、気象予報士によるとこの日が最後の花見のチャンスのようだ。
真理は両親と桜の花見に来ていた。桜の並木道に露店商なども出て賑わっていた。この地域では最後の花見としての休日。多くの人々でごった返していた。
そんな中、真理は露店商に気をとられているうちに、両親とはぐれてしまったようだ。
どうしよう……。ママ達とはぐれちゃった……。泣いたらダメ!もう小学生なんだから!
真理はもと来た道を戻ってみた。するとそこには巨大な桜の木があった。何故かその木の周りには人がいない。
こんなに綺麗なのに……!
真理は桜に惹きよせられるように、桜の木の下へやって来た。そっと木の幹に触れる。風が強いからか、花びらがはらはらと散っている。
綺麗……。
真理は、暫しその情景に見とれた。そんなとき、一際強い風が吹いた。下に散った桜の花びらが舞い上がる。真理は思わず目を閉じた。
そして次に目を開けた時、真理の前に人がいた。桜色の着物を着て、一つで束ねた髪の毛を腰まで垂らしている。
「誰?」
思わず真理の口から言葉が漏れた。
その女の人はゆっくり振り返り、真理を見下ろした。
綺麗な人……。
「私が見えるのか?」
「どういう意味?」
真理には訳がわからなかった。女の人は真理をじっと見つめ呟いた。
「迷子か?」
「迷子じゃないもん!はぐれただけだもん!」
「ああ、わかったよ。この道の桜の五本目の木の前で待ってみな。さあ、お行き」
真理は少し怖くなり、その女の人の言う通りにした。五本目の桜……。真理がその桜を見上げた時だった。
「真理!」
ああ、パパとママだ。あの女の人の言う通りだった。
「心配したのよ、もうはぐれないようにね」
「うん、あのね向こうに綺麗な桜の木を見つけたの」
「真理は桜に見とれていたのかい」
「うん、もう一度行きたい」
「そうね、そんなに綺麗なら行ってみましょうか」
ここから五本目……。真理達は、そこから五本目の桜の木の下にやって来た。
「この木かい?確かに少し大きいな」
「ううん、もっと大きかった」
「ここは桜並木だから、そんなに大きな木はないわよ」
真理は、あの女の人のことは話してはいけない気がした。
桜の精……!
真理は桜の季節になると、あの美しい女の人を思い出すようになった。
ふとしたことから桜の精に出会った少女、世にも奇妙な物語のような不思議な読後感ですね。
これから続きがあるのでしょうか……(〃'▽'〃)と、勝手に期待を膨らませてしまいましたが、いかがなのでしょう?
(リレーの一話目に良さそう、とか思ってしまったのでした(^^ゞ)