命にも(利用)価値はある
処女作ですので
読みにくければ申し訳ありません。
基本的にこの作品は
『半強制的な』ご都合主義物語です。
それでも宜しければお付き合いくださいませ。
―――ここは、どこだ。
彼は真っ白で何もない空間で目を覚ました。
否、そもそもここが空間と呼べるものか、判断材料が足りなかった。
―――声は出せないが、思考は働く。
―――制限されていないのなら、選ぶ何かを迫るのだろう。
彼は、自らの状況から思考が声の代わりとなる事を看破し、万が一の為に"自らの思考"を制御した。
[私の声が聞こえますか―――]
声がした。聞く限りでは女性の声だ。
これが白昼夢でないのなら、その正体は
―――貴女は、迎えの天使様でしょうか。
――それとも、審判の女神様でしょうか。
―または、地獄への案内人でしょうか。
その問いかけを思考してみる。
すると、彼女(?)はクスクスと笑い始めた。
どうやら問いは間違っていても、答えは間違えてはいなかったようだった。
[貴方にとってはそのどれもが正解かも知れませんね――
これから貴方に、ある事を頼みたいのです――]
よく通る、心地好い声で彼女は言った。
―――それは私に可能なものでしょうか。
[今の貴方のままでは、無理かも知れません――
なので、貴方には二つの力を与えます――]
恐らく、断れば何もない所に行くのだろう。
記憶だって消えるだろう。ならば
―――喜んで、お受けします。
――――――――――――――――――――――
風が聞こえる。
肌に纏わり付く熱気を感じる。
土臭い木々の匂いを感じる。
―――今、生きている。
それをゆっくり感じ取ってから、彼は起き上がった。
もらった力を試す為にも。
「さて、まずは不老不死から」
ズブリ――
唐突に彼は眼球に指を突き入れた。
それを引き抜き、数瞬…逆再生を見ているように
何もなかったかのように、傷は消えた。
「お次は念動能力、及び不老不死の更なる追究だ。」
そう言いながら、自らの手足、首を
三百六十度回した。
そしてその傷も先程と同じように消えた。
首を除けば、全て。
「――へえ、便利なもんだ。これでいつでも
死んだ振りが出来る。演出も楽チンだ。」
そうして彼は、今までの氷のような能面を崩し
カラカラと嗤った。