第五話「精霊、サンドイッチを食すの巻」
見てくれている人が増えました。
ほんとうに励みになります。
ありがとうございます。
あまりに情けない主人公なので、ちょっとだけホントの力を出させてみました。
お昼ご飯はサンドイッチだった。
ハードフランスパンに鴨のような味のロースト肉。
チェダーチーズのようなもの。
ピクルスのようなものが挟んであった。
ついでに言うと、サンドイッチという単語は出てこなかった為、サンドイッチのようなものと言い換えておこう。
《くどいわ!》
どこからか、モトユキの声がした、気がした。
いやー、美味い。
ハムハムハムハムハム
「よく食うな」
ランデルさんが呆れ顔で言う。
ローラさんとエレーナはニコニコとこっちを見ていた。
ちょっとバツが悪い(笑)
咳払いをして俺は話し出した。
「この度は助けて頂きまして、ありがとうございました」
「なーにいいってことよ」
ランデルさん、、、顔は怖いがいい人だ。
「名前だけは自己紹介が終わってるな、改めて言うが、俺はランデル、ランド村で猟師をやってる、これはうちのカミサン、んでかわいいうちの娘だ」
「ローラよ、この顔は怖いけどいい人の嫁よ(笑)あたしは、畑を持っててそこで野菜を作ってるのさ」
ローラさん。
この世界の人は心が読めるのか?
「次私ね、エレーナよ。私はお母さんのお手伝いしてるの、口は悪いけどいいお母さんよ(笑)」
あー、無だ。無になろう。
考えるんじゃない、感じるんだ。
緑色の文字が画面を行き来しているよー。
「おーい、帰ってこい」
ランデルさんの言葉で俺はマト○ッ○スの世界から帰ってきた。
「なあ、オズ。見たところ旅人には見えないが、どうしてあんなところで倒れていたんだ?」
来ちゃったよ、この質問。
俺はタヌキ寝入りしていた時に思いついた理由をでっち上げる事にした。
こんないい人達に嘘をつくのかって?
ホント事言ったら、可哀想な人を見るような目で見られるだろうがぁぁぁぁぁー!!
「余は精霊界の王族だ。今回は権力闘争から身を隠す為に、この世界にやって来た。だが、ちょっと油断し過ぎた為に、行き倒れになってしまった。助けてくれて感謝する。褒美はなんなりととらそう。ついでに、娘さんとお付き合いさせてください。エヘヘ♪」
《速攻で殺されるなお前》
モトユキ、よく分かってるじゃないか。
てか、お前、いちいち出てくんなし。
脳内友達との会話を、辛い思いをしたことからくる、逡巡だと、とても都合よく勘違いしてくれたローラか話しかけてきた。
「言えないなら、いいんだよ?」
「いや、すまん。大丈夫だ。助けてもらったんだ、ちゃんと話すよ」
少し辛そうに顔をしかめながら何かを決したかのように続ける俺。
ナイス俺!
主演男優賞ものの演技力だ、、、(苦笑)
と、とりあえず、続けるか。
「俺は遠い遠い国から、ここまで旅をしてきたんだ」
「遠いってどこから?」
エレーナの問いに、草原の方を指差しながら答える。
「あっちからだ」
3人の顔が強張った。
ホワァーイ?
「ま、まさか帝国から来た、、のか?」
ランデルさんが青ざめた顔で問い詰めてきた。
帝国から来たらマズいのか。
ま、名前的に帝国ってロクなイメージ無いからな。
殺戮狂の全身黒ずくめのヘルメット野郎も帝国だったっけ?
デンデンデン、デンデデーン♪
あ、いかん早く誤解を解かないと。
「チ、チガイマス、モットトオクカラヤッテキマシタ」
焦ったからか、金ピカのロボットみたいな話し方になる。
が、3人は俺の言葉に安心したようだった。
ランデルさんが口を開く。
「びっくりさせやがって、帝国の人間がこんなとこにいたら、軍隊が飛んでくるぞ、だが帝国より遠くか、、そんな国聞いたことないぞ」
「小さい国なんだ。ひっそりと暮らしている」
嘘ではない!
「そうか、確かに見たこともない紋章をつけた服を着てるしな」
ランデルさんは信じたようだった。
「俺はそこの貴族だった」
「貴、貴族?」
ギリギリ嘘ではない(笑)
「言われてみると、紋章の付いたコートに、高そうな鎧、お金持ちっぽいもんね」
エレーナ。
頭の回転早いんだね。
惚れる!
「綺麗な造りの剣ね」
エレーナ、結婚してくれたら君にあげよう。
ローラの目が鈍い光を放った気がした。
いかん。殺気だっ!
「と、とにかく、俺はその国で貴族をやっていたんだ。しかし、権力争いに負け、国にいられなくなってしまった。仕方なく、わずかな従者達を連れて、国を飛び出したんだ」
あながち嘘ではない!実際はあの3人は置いてきたんだが(笑)
「そして、長い旅を経てここまでやって来た」
《ホントウハスウビョウデツキマシタ》
「この近くまで差し掛かった時、盗賊に襲われたんだ。相手は強く、また、多勢に無勢、従者達では歯が立たなかった。結局みんな散り散りになり、俺は無我夢中で逃げてきて、ここで倒れた」
3人の顔が、同情のそれへと変わる。
シーン。
ややあってランデルさんが口を開く。
「そ、そうか、辛い思いをしたんだな」
ふと、エレーナが俺の剣を見る。
「オズさんは戦えるの?」
んー、どうだろう。
今の俺の精霊力でこの剣が扱えるとは思えない。
この剣は特別な剣だ。
精霊界の象徴ともいえる力の一つが込められている。
使い方にも少々コツがいり、普通の精霊ですら上手く扱うことは難しいのだ。
え?俺?
普段なら余裕で使えます。普段なら、ね。
隠れている身だ。大暴れとかは避けたい。
よし、ヘタレキャラでいこう。
《モトモトソウダロ?》
だまれモトユキ。
そしてそのC○P○みたいな話し方は止めろ!
「あ、これね。これは飾りのようなものだ。剣はからっきしダメなんだ、あは、あはははは」
場が和んだ
「そうだろうねえ、とても強そうには見えないよあんた」
ローラさん。容赦ないですね(泣)
アハハハハハ
ぁははははははぁ〜
3人の笑い声と、俺の渇いた笑い声が響いた。
「お、そろそろ行かねえと夕方までに着けねえな、で、オズ、一緒に村に来ないか?どうせ行くあても無いんだろ?しばらくうちにいるといい。ローラやエレーナもお前を気に入ったみたいだしな」
ローラとエレーナが微笑みながら頷く。
あ、あれ?
来たんじゃね?これ?
恋愛フラグ。
それはさておき(笑)
「ありがとうございます。喜んでお世話になります」
俺は儀礼で使う時の身のこなしで、精一杯の礼を尽くし頭を下げた。
本心からだった。
人の気持ちがありがたかった。
誰かに心から頭を下げたのって、いつ以来だっけ?
その姿を見て、3人は目を丸くした。
あれ?
「綺麗」
エレーナがうっとりしている
なんだ?何が起こった?
「あんた、生ゴミみたいに倒れてたけど、やっぱ貴族なんだねー」
続けてローラ
「んー、神事の踊りみたいだったな」
ランデルさん。
あ、そういう事か。
生ゴミでも、精霊です。
本気で何かをした時は、精霊力が発散されるんだ。
見える人には、体から精霊力が溢れる光のオーラのように見えるだろう。
その他の人には、ただただ神秘的で荘厳に見えただろう。
あ、もしかして、今俺かっこよかった?
だが、今のでサンドイッチで補給した力をほぼ使い切った俺は、村までの道中、また生ゴミ状態になり、3人に呆れられたのであった。
読んで頂きましてありがとうございました。
いやー、話が前に進みません(苦笑)
恋愛フラグがたちました。
と思っているのはオズだけかもしれませんが(笑)
オズの剣。
なかなかの剣です。
いつか使う日が来るんでしょうか?
目指せ生ゴミから資源ゴミへのレベルアップ。