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第107章 エピローグ 楽園から出た日
アダムとイブは、楽園を追われた。
蛇にそそのかされ、禁じられた実を食べ、神の言葉に背いたからだ。
二人は楽園を出た。
背後で門が閉じられた。
燃える剣を持った天使が、その入口を守った。
それ以来、人間は楽園の外で生きている。
そう、教えられてきた。
けれど、本当にそうだったのだろうか。
もし、二人が楽園を追放されたのではなかったとしたら。
もし、あの日、閉じたのが楽園の門ではなかったとしたら。
アダムは土を踏んだ。
冷たかった。
足の裏に小石が当たり、指の間に湿った土が入り込んだ。
イブは泣いていた。
空はまだ青かった。
鳥は飛んでいた。
木々は風に揺れていた。
川は流れていた。
太陽は、二人が知っていたものと何一つ変わらなかった。
世界は壊れていなかった。
神の光も消えていなかった。
楽園は、どこにも消えていなかった。
ただ、二人だけが、もうそれを楽園とは呼べなくなっていた。
楽園を追われたのではない。
楽園にいる事に気づけなくなった。
楽園での『在り方』が分からなくなった――ただ、それだけだった。
だから、戻る道は、どこにもなかった。
戻る必要が、なかったからだ。
アダムは、もう一度、土を踏んだ。
冷たかった。
今度は、自分の足で。




