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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ナナ
第三章 吸血鬼も歩けば勇者に当たる

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第55話 闇との遭遇①

 予想はしていた。

 

 しかし、ハーフエルフのケニーがこれほど敵視され、ドラゴニュートハーフのアリアさえ追い出されそうとは。

 ルクスは、慌ててアイテムボックスから日本で買ってきたお酒をだした。

 

「あの、意味なくきたわけじゃありません! ティルノア港町のガイルさんから紹介されてきました! とりあえずこれで話を聞いてもらえませんか!!!」

 

 四人のドワーフに、泡盛、ウォッカをそれぞれ渡す。

 

 ――こんなことなら、もっと買っておけば良かった。

 

 ルクスは後悔しつつ、ドワーフたちの顔色をうかがう。

 

「ティルノア港町のガイルならば知り合いじゃが」

 

「……なんじゃこれは。酒か?」

 

「酒らしいのぅ」

 

 それぞれのドワーフたちは、酒瓶をあけて口をつける。

 しかし、一口で全員が顔をしかめた。

 

「なんじゃこれは。こんなもん酒じゃないわい」

 

「ジュースでも、もう少し飲みごたえはあるわい」

 

「え……一応、日本では強いお酒なんですが……」

 

 なんなら、ウォッカは日本産のではない。

 強い酒精のものを持ってきたと思ったのだが、ドワーフたちには酒とすら認識されなかった。

 

「こんなもんで、わしらが受け入れると思ったのか」

 

「浅いのぅ……」

 

「まあ、それでも飲み物を用意するくらいなら、いいほうかのう」

 

「ジュース以下じゃが」

 

 わいろ作戦は、完璧とは言わなかったが四人のうち三人がシャベルやハンマーを下ろさせた。

 一番マッチョなドワーフだけが、まだ斧を高々と持っている。

 

「あとはバルガンに任せるか」

 

「そうさな、まともな酒を飲もう。休憩じゃ、休憩」

 

 三人のドワーフは、よく見もせずに一番大きい屋根の家に入っていった。

 

「そこな半デーモン。名前はなんじゃ」

 

「ルクス・フォン・レインフォール、です」

 

 日本では名乗らないフルネームを、ルクスは敢えて名乗った。

 それほど、目の前のドワーフからは威圧を感じる。

 

「わしゃ、バルガン・ドゥームじゃ。一応ここのコーネルの郷の代表じゃが、ただの鍛冶屋のオヤジじゃ。そうか、オーデュイン卿のせがれか」

 

 くしゃくしゃの黒髪から覗く金の目が、初めて優しく笑った。

 斧も降りて、友好のきざしが見える。

 手足がかじかむケニーをじっと見て、バルガンはため息をついた。

 

「なんの用事かわからんが、ここはハーフエルフがくるところじゃないぞい。だが、ここに突っ立ってては寒かろう。ひとまずわしの家へ――」

 

「避けてください!!」

 

 アリアが叫ぶのと、ルクスがバルガンに覆いかぶさるのは同時だった。

 背後の斬撃で、ルクスが背中からまっぷたつにされる。

 

 崩れ落ちるルクスの体を振り返りもせずに、ケニーが矢を放った。

 

「おいおいおいおいおい、亜人がまた群れて増えてやがる。同盟でも組んでオレと戦おうってか~? 笑わせるじゃねぇか、早く魔剣を渡してオレに全コロさせてくれよー」

 

 一撃を放った男が、影を引き連れて現れた。

 転移石を使ったであろう男は、派手な装備にピアスをたくさん開けていた。

 

 他者を見下す尊大な目つきが、整った顔を歪ませている。

 

「また貴様か、シュラ……!!」

 

 バルガンの言葉に、ケニーたちは悟る。

 これが、自称勇者シュラ。

 

 フォルン村に毒の泉を撒き、ホムラマルをだまし、ティルノア港町にカラースライムを広げ、湿地帯の銀塊を奪って、フォルン村にジャイアントオークの群れを差し向けた、あの。

 

「禍津、修羅さん……ですね」

 

 バルガンの上で肉塊となっていたルクスが、しゃべった。

 寸断された背中とお腹は、ふつふつと再生する。

 

「げっ! なにこいつ、アンデッド系か? キモいんだよ、亜人!!」

 

 シュラが、再生し終わったルクスを蹴りつけた。

 その一撃はアリアが止めようとしても、止められない速度で行なわれた。

 

 アリアは、シュラが連れている影がジャイアントオークキング、デスナイト、ゴーレムキングの死体なのを見た。

 

「ネクロマンサーですか……!」

 

「ふん、ひれ伏せよ亜人ふぜいが。なんだ、その赤い髪は。何人だよ。こいつはみるっからにエルフだし、何キモ連合だよ」

 

「……アリアちゃん」

 

 ケニーがそっとアリアを呼ぶ。

 分が悪い、数が悪い。

 

 ケニーの矢も、デスナイトの騎士が軽々と受け止めてしまった。

 転移石で、撤退するしかない。

 アリアも、そうっと頷いてアイテムボックスに手を入れた瞬間――

 

「そういうことをいったりやったりしてるから、ユーナ先輩にフられるんですよ!!!」

 

 ルクスが指をさして、強く断言した。

 

「は……? ゆー……」

 

「神城ユーナ先輩です! 前にくどいて振られたんでしょ」

 

 シュラの顔面が、高速で赤くなったり青くなったりし始めた。

 まさかグランディアで、日本での黒歴史にあうとは自称勇者も思っていない。

 

 ケニーはそのエピソードをしらなかったが、あまりにも図星な煽りなのは見てわかる。

 慌ててルクスを黙らせようとしたが、遅かった。

 

「ひとの嫌がることはしたいけないって教わらなかったんですか? そういうことするから、モテないんですよアンタ!」

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