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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ナナ
第三章 吸血鬼も歩けば勇者に当たる

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第54話 コーネルの郷

 ルクスは、ケニーと連れだって酒店にいた。

 コーネルの郷のドワーフへの、わいろに使う酒を買いにきたのだ。

 

「ケニー先輩は、いつも何を飲んでます?」

 

「ワインかビールだなぁ。ワインにはエルフ向けの赤ワインがあるからね」

 

「ほぉぉぉ。そんなものが」

 

「デーモン用のお酒も色々でてるよ? ヴァンパイア向けのブラッドワインとか」

 

「……そのお金があったら、ユミエラのごはんに具材を足します……」

 

 ルクスの家では、酒は完全に娯楽だ。

 酒さえあればあとはどうでもいい、という半妖もいるがルクスにはぜいたく品でしかない。

 

 そのお金で卵でも買った方が、栄養があると思ってしまう。

 

「でも、今、ルクスくんそれなりにお金あるよね」

 

「あるんですけどね~、ユミエラのごはんが一品増えました」

 

「なるほど」

 

「でも、アの実を食べてから食欲が減ったんですよー。今は一食七人前くらいですかね」

 

「そうか、減ってそのくらいか……」

 

 ケニーは酒の棚を見ながら、冷や汗をこっそりふく。

 ルクスは時間さえあれば、グランディアに行ってレッドバーニーやブラックバーニーを狩っている。

 

 最近は、ユミエラに飽きがこないようにキマイラやグリフォン、ワイバーンを挟みながらバーニーを出していた。

 ジャイアントオークの肉も、まだそれなりに残っている。

 

 あんな危険は避けたいが、肉の群れには当たりたい。

 是非とも、ひとに害がない範囲で遭遇したい。

 

「でもケニー先輩、食欲の量より体の変化が凄いんですよ! 今じゃユミエラがスープ作れるくらいには回復してるんですよ!」

 

「それは良かったね!! 変化がとうとう目にみえてきたね!」

 

 ケニーの顔にも、笑みが広がる。

 ベッドから動けないユミエラの心配をよくしていたが、動けるようになったならユーナの家に連れていかれたときも、お姫様だっこから自力で歩けるだろう。

 

 それだけでも、気にしやすいユミエラのメンタルは回復するはずだ。

 ケニーはルクスがグランディアに行っている間に、ヴァンパイアハーフものの廃棄商品をよくアパートに届けていた。

 

 商品は、アパートのドアノブにひっかけて去っていたのでユミエラの顔を見たわけではないのだが、それを聞くとほっとする。

 次回からは、届けてもチャイムを押せば直接渡せるだろう。

 

「この辺の泡盛とかどう? 度数高いよ」

 

「俺にはお酒はわからないので、とりあえずおすすめを買います」

 

 ケニーが選んだ泡盛やウォッカなどを籠に放り込み、ルクスはお会計をした。

 味などわからないので、度数が高く中身がたくさんある安酒チョイスだ。

 ケニーは、ルクスが値段に怯えずに買い物をできるようになったことで、変な成長を感じていた。

 

「そういえば、今日いくところはドワーフの郷で、ハーフエルフのケニー先輩は大丈夫かなって」

 

「確かにエルフとドワーフは仲が悪いっていうよね……まあ、行ってみてから考えよう!」

 

 未成年のアリアはゲートまえで待っている。

 まだ約束の時間には早いが、アリアの性格上早めにきそうだ。

 ルクスとケニーはグランディアのゲートへと走った。

 

「お疲れ様です!」

 

 やはりアリアは早く来ていた。

 まだ約束の十分前だ。

 

 今日は、ちらちらと探索者のグループがいる。

 見た目が若い子とベテランなので、デビューする若手の引率なのかもしれない。

 ケニーはいいとして、ルクスの装備なしにぎょっとした顔をされた。

 

「アリアちゃん、おはよう」

 

「おふたりともおはようございますです!」 

 

 いつもの草原フィールドにくると、転移石を出す。

 ルクスは非常用に二人に幾つか渡しているが、三人で移動するときはルクスが渡していた。

 

「じゃあ、コーネルの郷で」

 

「はい!」

 

「うん」

 

 三人は、転移石を使った。

 

「「「コーネルの郷」」」

 

 次の瞬間、草原フィールドから炭鉱の町に出現していた。

 

「さむっ!!」

 

 地球は三月のあたまだが、コーネルの郷は極寒だった。

 日本の十二月と比較しても、冷え方が異常だ。

 雪こそないものの、風が凍り付くように冷たい。

 

「ここが、コーネルの郷……」

 

 ルクスがアイテムボックスから、ダウンコートを取り出してアリアにそっと着せた。

 見渡す限り、黒い山に炭鉱の穴。レンガ拭きの屋根の家。

 

 こじんまりとしていて、ルクスなどはかがまないと入れそうにない。

 

「とりあえず行ってみようか」

 

 コミュ力の塊であるルクスは、ためらいなく進んだ。

 ケニーとアリアが一歩遅れて、寒風に頬を叩かれながらその後ろを着く。

 

「こんにちはー!」

 

「むぅ、人間の匂いがするぞ! 人間は追い出せ!!」

 

 炭鉱からトロッコが出てきて、四人ほどのドワーフが顔を出す。

 中でも一番筋肉質なドワーフが、ケニーとアリアを押した。

 

「人間の匂いがするぞ……!! むっ、しかもこやつは、ハーフエルフではないか!!」

 

 早くもトラブルの匂いがする。

 ルクスは押しやれないものの、このままではまずいと焦りだした。

 

 木枯らしが、退路をたつように強く吹きすさぶ。

 

 コーネルの郷は、こうしたけわしい状況からスタートを告げた。

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