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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ナナ
第二章 可愛い後輩には旅をさせろ

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第45話 気持ちのリレー

 時は既に夕暮れが迫っていた。

 

 ルクスは真夜中には帰りたい。

 一通り、ネオとルクスへの感謝を聞いてからルクスは、リザードマンたちの話をした。

 

 ガイルたちも、得があるからおそらくは引き受けてくれるはずだ。 

 それでも、ルクスは一応とか、相手が了承したら――という但し書きをつけて説明した。

 

 アルミホイルでシルバースライムを作っておくことや、シナきのこの説明を、たぬき獣人たちは熱心に聞いた。

 たぬき獣人たちからすれば、昆虫パンなどには興味がないし、リザードマンたちの代わりに購入する手間も問題ない。

 

 シルバースライムを生み出すのは、やや手間と時間がかかるが、カゲロウたち子供のたぬきたちが率先して手をあげてくれた。

 

「しかし、いいんですじゃ? もうけはルクス様たちに入らないのですじゃ」

 

「俺はただ、両方が得するからいいかなー、なんて。今回と次回とで、けっこう儲かっちゃうんで。グランディアも潤えばいいかなーなんて……せっかく地球と繋がったのに、シュラなんてデメリットだけじゃ悲しいでしょう?」

 

「なんて……優しいお方じゃ。何度も村を救ってくれて」

 

 感激するオボロを見ながら、ネオがルクスを見やった。

 

「ははは、ルクスが役にたっていたとはな」

 

「俺一人じゃないですよ、ケニー先輩もいますし、アリアちゃんも」

 

「そうか!! アリアは天使か!!!」

 

 少し会話に齟齬が生まれつつも、ルクスはジャイアントオークを数体解体し始めた。

 今夜のユミエラの夕食と、フォルン村へ置いておく分だ。

 

 この修行を始める前は、ルクスはピースメーカーギルドで休日は解体の仕事を副業にしていた。

 だいたいのモンスターは、倒したことがなくても解体経験がある。

 

「ルクスー、ルクスはどうしていつもよくしてくれるの?」

 

 てきぱきと解体するルクスを見上げて、カゲロウがぽつりと呟いた。

 その尻尾は、元気なく垂れ下がっている。

 

「地球はそんなにいいところ? みんないいひとしかいないの?」

 

「やあ、そういうわけじゃないよ。半妖は差別されたり、嫌なこともあるよ」

 

「ネオ先輩みたいに強くても?」

 

「うん、そうだね――でも、俺だって地球のダンジョンじゃ無力でいつも逃げたい気持ちでいっぱいだったんだよ。それをネオ先輩やユーナ先輩――美人で優しい女の先輩なんだけどね――そういう人たちに助けられてる。妹の、ユミエラのこともね。ケニー先輩や賢人くん、賢人くんのパパ、アリアちゃんたちが、力を貸してくれなきゃ俺は一人でなんにも出来ない。だからね」

 

 村人がつけた松明に、ルクスの笑顔が揺れる。

 カゲロウは、その笑みに見とれた。

 

「一人ひとりの力は小さいんだよ。俺は情けないから、半人前。でも、最近少しずつやれることも増えてきた。だからさ、隣の人と、知り合って仲良くなった人が手を繋ぐ、そういうことを手伝っただけなんだ。たいしたことはしてないんだよ。もしカゲロウが気になったなら――誰かが困ったときに、俺みたいに手を差し出してあげて。教えてあげて。仲良くなるって、いいことがたくさんあるんだ。だから、変に恩義を感じることはないんだよ、俺だって色んなひとに助けられてるんだからさ」

 

 たぬき獣人の子供は、頷いた。

 その小さな手のひらを、強く握って。

 

 背後から、ルクスから食べるプロテインを受けとったネオがもぐもぐしながら現れた。

 

「ルクス、ちなみにジャイアントオークの肉はうまい。僕のみやげ分も残しておいてくれないか」

 

「ネオ先輩の分のが多いじゃないですか。全部解体したら、もっていきますよ」

 

「いや、一体分でいい。あとはルクスが好きにしたらいいさ。僕からユミエラへのプレゼントだ」

 

「ね? 優しいでしょう?」

 

 ルクスはカゲロウに微笑みかける。

 あれだけの群れを倒したのだ。

 

 先に買ったバーニーたちを含め、一週間以上はユミエラの食事に困らない。

 しかも高級豚肉ざんまいだ。ユミエラも喜ぶだろう。

 

「じゃあ、二体分はフォルン村に置いて、一体分はネオ先輩の家までもっていきますよ。街中にむき出しのジャイアントオーク肉は目立ちますよ」

 

「そうだな、そうしてくれ。……アリアも喜ぶだろうし」

 

 ネオの言葉は、最後は小声でルクスにはよく聞こえなかった。

 村は、祝宴が始まってにぎわっている。

 

 ルクスはジャイアントオークの肉を置くと、ネオと一緒にフォルン村を後にした。

 村の出口で、カゲロウはいつまでも二人の影に向かって手を振る。

 

 恩人からは、礼の仕方を教わった。

 あとは、カゲロウが、村人が、いつか誰かを助けるだろう。

 

 助け合うことを、信じて。

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