第44話 繋がった糸
「ルクスーー!! ありがとうーーー!!」
カゲロウが飛び出してきた。
突然フォルン村を襲ったジャイアントオークの死体は、ほぼルクスのアイテムボックスに収納し終わったところだ。
ネオのドラゴンブレスに焼かれてこんがりしているものも多く、その匂いが他のモンスターを呼び寄せてしまう。
ジャイアントオークの恐怖でシルバーウルフたちが遠ざかっていたようだが、じきに戻るだろう。
「大丈夫だった!? 村のみんなは無事?」
「何人か怪我したけど、ポーションで治ったレベルだから大丈夫! 深手じゃないよ。それより、ルクスともう一人の人、へいきだった?」
「ネオ先輩は強いんだ! 倒したのはほぼネオ先輩だよ!」
そのネオは、匂いに惹かれて出てきたグレーウルフなどを追尾していた。
すぐに戻るといったので、それほど数はないのだろう。
ルクスのアイテムボックスの中には、ユーナの回復糸が予備で入っている。
どうやら使う出番はなくてすみそうだ。
ユーナの糸の回復力は、ポーションなどを軽く超える。
「フォルン村って、たまにジャイアントオークに襲われるの?」
「まさか! こんなの皆初めてだよ。一体現れるのも一年に一度くらい。群れから出たはぐれオークくらいだよ」
「そうなんだ……なんだったんだろうね?」
どやどやと、他の村民も出ていて口々にルクスに礼を言う。
ルクスは、戻ってきたネオへと言いながら嬉しそうに笑った。
荷物持ち以外で人に喜ばれることは少ない。
他に被害がなく、間に合ったことと偶然ネオが付いてきたことに感謝だ。
「ルクスー! これをしまってくれないか」
数体のウルフを背負ったネオが、突然顔を出した。
「あ、ネオ先輩ーーそちらは?」
「息も絶え絶えに走っているところを見つけたから、拾って来たのさ」
倒したウルフの上に、気絶しかけたたぬき獣人が乗っている。
お茶を運んできた古老のオボロが、その顔を見て尻尾をたてた。
「ファルー村のフンタなのじゃ! たぬき獣人が住む村の中で、一番遠くの村の若者ですじゃ」
下ろされたフンタを、オボロとカゲロウがぺちぺちと頬を叩く。
ルクスは、ネオが倒したウルフたちをしまった。
ネオは、出されたお茶で一服する。
いつもなら、プロテインが入っていない! と騒ぎ立てるはずだ。
ネオにしては、かなり気を使っているのだろう。
「う……ここは……俺は一体……」
「フォルン村じゃ、わしはオボロじゃ。ファルー村になにがあったのじゃ」
「た、辿り着けたのか……。シュラが、フォルン村の山向こうのジャイアントオークの巣を荒らすと言って出かけたから、伝言に……」
「転移石がなかったのじゃ? わざわざそっちから、ここまでの距離を走って……」
前にブルドーザーに変身してくれた若者たちが、フンタを背負って村の中へと連れていく。
おいおいと泣きながらオボロがそれを追った。
「ネオ先輩、ほんとにほんとにありがとうございました!! 村を救ってくれて」
「なに、少年。気にするな。僕にとってはいい鍛錬だ!」
カゲロウが、ネオに頭を下げる。
残ったたぬき獣人たちも、深々と頭を下げた。
「ささやかながら、お礼をしたいので村についてきてください。ルクスも、ほら――」
ルクスは、半分話を聞いていなかった。
しげみのほうに、ホワイトスライムがいることに気が付いたのだ。
以前なら気にせず倒していたが、今はリザードマンたちのことがある。
飛びついてアイテムボックスにいれると、カゲロウが怪訝な顔をした。
「ルクス、どうしたの。ホワイトスライムなんて珍しくないだろ」
「ここには多いの?!」
「そうだね、色んな色が多いけどホワイトスライムも多いよ……なんだってスライムなんかしまったの?」
ルクスは、沸き上がってくる気持ちに負けてニヤニヤした。
ネオが気持ち悪そうに、それを見ている。
なんと思われようと、いいアイディアが浮かんだのだ。
リザードマンたちには転移石がある。フォルン村は地球と交易があり、ホワイトスライムとシナきのこもある。
ここを繋げれば、ルクスがでしゃばらなくても今後も貿易は繋がる。
「よっしゃーー! なんとか話を通すぞーー!!」
ぽんこつルクスとしては、まずまずの解決案を思いついた。
だがしかし、ここでまた自称勇者・シュラの名を聞くことになるとは。
今回は、タイミング合い、助っ人がいた。
もし、これがいつものルクスの修行だったら――こうはいかなかった。
果たして、シュラはなにがしたいのか。
知れば知るほど、ルクスにはシュラという人物が分からない。
不気味で底知れない、影のような存在は、じわじわと迫っているのだった。




