第43話 決意のルクス(遅い)②
どこから現れたのだろうか。
ジャイアントオークの群れが、フォルン村を囲んでいる。
その巨体は、村を踏みつぶすほどではないにしろ、大きい。
ルクスの鼻が、油と焦げた匂いを感じた。
城壁の上から、火油でも流したのだろうか。
だが、一体も動きの鈍ったオークはいなかった。
「ルクス、二手に分かれるぞ――出来るね?」
「はい!!!」
いつもなら、確認などなく置き去られている。
しかし、ここにSランクピースメーカーのユーナはいない。
アイテムボックスがない、武器のみのネオと、ルクスだけだ。
真剣なその瞳に、ルクスは深く頷いた。
「僕は向こう側から狩る! ルクスはそっちから狩れ! いちいち再生している暇はないからな」
「ええっ!? そんな、俺から再生とったら何が残るんですか!?」
「回避しろ!! 狙ってよけろ、バカルクス!!」
「ああ!! なるほど!」
他者に聞かれたら唖然とするだろうが、ルクスの中に”避ける”という選択肢はなかった。
どうせすぐに再生する――という前提でいたので、頭の片隅にもない案だ。
馬鹿と言われても仕方のないことだ。
ルクスは鬼哭丸を振りかざして、ジャイアントオークの中に飛び込んだ。
――けど、回避ってどうやればいいんだ!
ジャイアントオークの斧がルクスを襲う。
ルクスは、たたらを踏んだ。
今までなら、左肩をもっていかれつつ、右手で攻撃――となっていたのだが、回避の仕方が分からない。
なんとか避けたが、別の個体に背中の肉をそがれた。
「っ!! シャツが死んだ! 脱いどけばよかったぁぁ」
いつもの遅い後悔をしながら、ルクスはなんとか回避しようとしては攻撃を食らう。
遠くのほうで、ネオのドラゴン・ブレスがジャイアントオークたちを一直線状に倒すのが見えた。
ネオの付近のモンスターが、一瞬で消える。
空白地帯に踊りこんだネオは、マナブレードでオークを追撃していった。
「……俺も頑張らないと!!」
服がズタズタになりながらも、ルクスは踏み込んだ。
すぐに回避が身につくわけがない。
これを好機に、学ぶのだ。
「――こっち!!」
右に左に移動しながら攻撃をしているうちに、ルクスの中にも余裕が出てきた。
焦ったらまたデーモンモードになる。
「落ち着け、落ち着け――」
素材の回収も、今は思考放棄だ。
損得よりも、今身に着けるべきは回避なのだ。
回避が出来るようになれば、シャツの心配をしなくて済む。
ジャイアントオークの右腕を斬り飛ばし、心臓をえぐる。
鬼哭丸の切れ味は冴えわたり、ルクスは何体倒したのか分からなくなってきた。
「ルクスーー!! がんばれーー!!」
城壁の上からカゲロウの声がする。
ジャイアントオークの注意が、上にそれてルクスは焦った。
「カゲロウ、出てきちゃだめだーーー!!!」
モンスターの敵意が煽られ、ルクスはジャイアントオークの足元を攻撃した。
関節が硬く、二度、三度と刃を振るって、足場を崩す。
よろけてきたジャイアントオークを避けたルクスは、止めをさした。
上を見上げると、カゲロウの頭は引っ込んでいる。
かすかに、誰かがどやしつけた声がして、ルクスは安堵のため息をもらした。
「ルクス!! 魔力ポーションをだしてくれ! もう二撃、ドラゴンブレスを使う!」
「はい!!」
ルクスは、ジャイアントオークの手をかいくぐりながら、ネオの方向へ走りだす。
ネオのドラゴンブレスは強いが、魔力消費が大きい。
ルクスは、アイテムボックスに手を突っ込んで魔力ポーションを出した。
「ルクス、投げろ!!」
「はい!!!!」
ルクスは、右腕に力をこめるとネオにむかって瓶を投げる。
「へたくそ!!!」
「すいませーーん!!」
ポーションは、ネオから大きく右に軌道をそれていき、ネオは大きくスライディングした。
なんとか割れずに、魔力ポーションはネオの手のひらに収まった。
ジャイアントオークが、倒れたネオに群がっていく。
「ネオ先輩!!」
「気にするな! よけるんだよ、ルクス!!」
ゴウっと風に熱がはらむ。
ネオの射程距離を知るルクスは、大きく城壁に寄った。
そのルクスの、一メートル手前までが熱いブレスで空間が焼かれる。
容赦のない二撃が、続けて放たれて視界が広がった。
ルクスは周りを見渡す。
四肢の一部を失って転がるジャイアントオークたちが多く、五体満足なものは少なくなった。
「最後まで畳みかけるぞ、ルクス!!」
「はい、ネオ先輩!!!」
ルクスは、鬼哭丸を握る手に力を込めた。
最後まで、倒しきる。
目の前の敵が、消えるまで――。




