第42話 決意のルクス(遅い)①
ルクスは、レッドバーニーの心臓に鬼哭丸を貫いた。
休日の今日、シナきのこ集めと、食料と経験値あげだ。
残りのマナアシは、もはやなくてはならない存在――卯実誠二に託した。
ブラックバーニーの肉を喜ばれたので、再度おみやげにつけたが「城下深玲になにかたくさん投げ銭をされたそうで……」と心配された。
手が滑ったとは言えない。
推しと感謝ですよおと逃げ切ったが、しばらく深玲の配信を見るのは控えようと反省はしていた。
連日付き合ってくれたアリアにも、今日はフリーにしてもらっている。
シルバースライムにも目途がついたのもある。
経験値あげも付き合うと言ってくれたのだが、たまにはショッピングでも! と押し切った。
アリアの兄のネオは22歳。ルクスより二つも年下だ。
18のアリアにとって、自分の存在はおっさんよりなのではないかとルクスは思っている。
なんでついてきたがるのか――それだけアリアが親切心に溢れているに違いない。
そして――
「ルクス、いつまでバーニー系と戦うんだ! せめてウルフ系にするぞ!」
「ネオ先輩、食料も貯めないといけないんですよぉ~」
――何故、ネオがグランディアにいるのか。
なにやら興味津々で、一人でも出かけたようだが戦闘力特化のこの男、方向音痴だった。
ダンジョンはひたすら前に進むのと、ユーナとルクスがマッピングするのに任せている。
なにより、ドラゴン・アイではモンスターの位置がわかるのだ。
ダンジョンでは迷いようもなかったが、広大な草原フィールドには困惑したらしい。
いつ行くんだと付きまとわれて、今日やっと連れだって出てきたところだ。
「ブラックバーニーだってもう十体は倒しただろう? まだいるのか?」
「ユミエラの食欲は、そんなもの一日分にしかならないんです~~」
「――そうか。じゃあもう少し探そう」
さすがのネオも、ユミエラの名前を出されると大人しくなる。
しかし、ネオにとってグランディアへの入り口ではモンスターが弱すぎた。
一撃というより半撃で、勝負がついてしまう。
「レベル15のルクスが、今やレベル40だもんな。僕ももっとレベルを上げたいぞ」
「えーネオ先輩、レベル90じゃないですか。ここらでそんな……え? レベル40!? 俺がですか?」
「そうだよ」
「え????」
「いくら再生するとはいえ、レベル15がサーベルマーダータイガーに勝てるわけないだろう。何を驚いてるんだい?」
「いやでも、あれは――」
おおかたはデーモンモードのせいだと思っていた。
しかし、最後の一体は確かに自分の意思で戦った相手だ。
ルクスの鑑定・Cだと自分の詳細なデータは分からないが、ネオには見えている。
ルクスは、自分の黒髪をくしゃくしゃにした。
「そっか……強くなってるんだ、俺……」
「ルクスの癖にな」
「そーですねー」
しみじみと語りながらも、二人の手はバーニーを狩っている。
ルクスの手が止まるときは、アイテムボックスがないネオの分を収納するときくらいだ。
「ドラゴニュートハーフは肉が好きとはいえ、我が家はもっと高級肉を食べるからそれはユミエラにやるといいよ」
「え、いいんですかあ! ありがとうございます!!」
嫌味を嫌味として受け取らない素直なルクスは、ただ喜ぶ。
「もう一狩りしたら、シルバーウルフを……」
「いや。あっちにジャイアントオークがたくさん見える。あれを倒そう」
「え?? そんな強いモンスターがこの辺に?」
何度も来ているが、ルクスはバーニーとウルフしか出会ったことがない。
あとはせいぜいがスライムだ。
しかも、ネオが指さした方角はフォルン村の方向だった。
「い、急ぎましょう!! ネオ先輩、ジャイアントオークの方向へ走ってください!」
「分かった。付いてこい、ルクス」
全力のネオのスピードに、ルクスが適うはずがないが必死でその足を追いかける。
十分もすると、たぬき獣人たちの悲鳴がわずかに聞こえてきた。
毎回、グランディアにくるたびに寄るわけではないが、ルクスにも顔見知りのたぬき獣人たちは多い。
最悪を恐れて、もつれそうになる足を必死にこらえて走った。
そして――想像は、悪夢のように現実になって現れる。
フォルン村が、ジャイアントオークの大群に囲まれていた。




