第41話 たくさんゲットしちゃった
ルクスは、ガイルとの商談を一旦そのままにして駆け付けた。
アリアはスライムの入ったプールを二つ置いたまま、大喜びしている。
「ホワイトスライムが生まれたところ、こっちのアルミホイルプールに入れたら……シルバースライムになりましたよ!!」
「おおーー!!! アリアちゃん、さすがーーー!!」
「そんな、褒めてもなにもでませんですよっ!!」
べちーんと、ルクスの背中が叩かれる。
照れ隠しだろうが、ドラゴニュートハーフのアリアがやると、相手がルクスでなかったら死人がでたところだ。
「生まれたシルバースライムは私のアイテムボックスにいれましょうか?」
「太らせたら分裂しないかな?」
「それが――分裂しても同じ色とは限らないようなんです」
「しまおう!! いますぐしまおう!!」
「いえ、そしたらこちらで受け取りましょう」
慌てたルクスをゆっくり追ってきたガイルが、手を差し出す。
結果的にはリザードマンに渡すものだし、ガイルのほうがルクスより数を記憶していそうだ。
ルクスは素直に頼ることにして、ガイルに渡した。
このシルバースライムはがどう薬になるかは、特に知りたくない。
「計算していくので、シルバースライムはどんどんお願いします。……ところでルクス様、さきほどの話は」
「とりあえず、転移石30個にしませんか? またたくさん持ってきますし」
「ほんとうですか!? なんでしたら、こちらにいらっしゃる際の転移石は、こちらで負担しますが」
とっさにルクスは断ろうとした。
背後から、アリアがその口をふさぐ。
「助かります~~! 次回も私とルクスさんできますから~」
「おお、アリア殿。かしこまった」
ガイルを呼ぶ声が聞こえて、戦闘隊長はいったん去っていた。
アリアの手が離れて、ルクスはぜーはー呼吸する。
先ほども水が気管に入ったりと、せわしいことこの上ない。
「だめですよ~ルクスさん。なんか悪いかなって思っちゃうのかもしれませんが。私たちにコンビニ商品が身近なように、ここでは転移石が身近な売り物なんですから。まだアイテムはここ以外に三個あるんですよー? 後半も時間に余裕があればいいですけど、違ったらどうするんです?」
「う……確かに。アリアちゃんがしっかりしてて助かるよぉぉ」
「シルバースライムのつくりかたは任せてください! なので、ルクスさんは残りのマナアシをお願いします」
「はいっ!! 頑張ります!!」
今回はマナアシというものがあったが、次からはリザードマン食品の工面に苦労するかもしれない。
ルクスは、間違ってもアリアの前でうっかり100万投げ銭したとは言わないように、内心誓った。
ケニーのコンビニに仕入れにいくときに、お金の使い方を相談したときに話してしまい、なめくじを見るような目で見られたばかりだ。
アリアのことは妹のようにかわいく思っているが、同じ目で見られたら精神的ダメージで死にそうだ。
「ルクス様、ここにいらっしゃった初回の分と、前回の分と今回の消費分を含めたお支払いです」
戻ってきたガイルは、布の巾着をさげていた。
その中に、転移石が44個入っていた。
「おお……お買い上げありがとうございました」
「こちらこそ、またよろしくお願いします。老いも若いもすっかりとりこになったようで」
苦笑いをするガイルは、もしかしたら今回は口に入らないのかもしれない。
50万円分ほど買ってきたが、やはり次はもっと多くてもよさそうだ。
ケニーもケニーの父も喜ぶだろう。
グランディアにケニーを付き合わせている間、夜のコンビニレジ要員も減らしてしまっているので、コンビニ側にも利益を出したい。
「あっ! またシルバースライムが!!」
「おお、こちらも順調ですな」
シルバースライムは出来れば安定して生産していきたい。
リザードマンとしても薬の入手の見通しがないのは、厳しいだろう。
ルクスは首をひねる。
なんとか、リザードマンたちが珍しいコンビニ飯を手に入れてシルバースライムも手に入るようにならないだろうか。
通ってもいいが、ルクスたちはこの先も実を手に入れなければならない。
「今、また湿地帯にマッドクロコダイルが数体でたようです。うちの若手が倒したので、ルクス様に差し上げましょう」
「え、いいんですか? ていうか、マッドクロコダイルでたなら俺も倒すの手伝いますよー」
明日は、マナアシ狩りとスライム集めだ。
アリアは、だんだんと手慣れたようでスライムを選別している。
地味だが疲れが目にきそうなので、ちょくちょく休憩を取ってもらおう。
ルクスは湿地帯のほうへ、ガイルと出ていく。
アリアは、それを熱の絡んだ視線で見送った。
「普段は戦いたくないって口癖なのに、他人が絡むとナチュラルに戦いにいくのがルクスさんのいいところ、なんですよね~」
乙女のひとり言は、グランディアに溶ける。
リザードマンたちの一部は、新しい食料に喜んで酒をかたむけていた。




