第40話 地球土産は好評中
「ルクス様、いかがですかな」
リザードマンの隊長、ガイルが顔を出した。
ルクスとアリアは、リザードマンの家を一軒借りてスライムの実験場にしていた。
「一回、出来たっぽいんですけど……次がなかなか」
アルミホイルを入れてみても、同じ結果にはならなかった。
ユーナから出されたヒントでアルミホイルはたくさん買い込んでいたが、シルバーどころか白系になるものが少ない。
「もともと、湿原ではシルバースライムはたくさんいたんですよね……? 前と今となにが違うんでしょう??」
「そうですね……。シュラが来る前は、湿地帯に銀塊が多く転がっていましたが、シュラが根こそぎもっていってからシルバースライムが激減した気がします」
「銀塊……!! そんな金目のものが無造作に……!?」
「我々リザードマンには必要がないものですから。銀塊より、シルバースライムのほうがありがたい」
人間とリザードマンの価値観の差だ。
かといって、マナアシを売ったお金で銀塊を買ってくるとしてもそんなにたくさんは買えない。
ルクスはもう一つビニールプールを出すと、スライム忌避剤を塗ってから、全面アルミホイルを張ってみた。
プールの床にもアルミホイルを敷き、幾つかの大きさに丸めたアルミホイルを投入する。
「ダメ元で、色の薄くなったスライムをこっちに移してみようか?」
「はい、ルクスさん!」
こほん、とガイルがわざとらしい咳をした。
水を飲もうとアイテムボックスに手を入れたルクスは、ガイルに振り返る。
「どうしたんですか?」
「ルクス様――お忘れでしょうか? 地球の食べ物を……」
「ああ!!!」
おそらく、そもそもそれが目的で顔をだしたのだろう。
ルクスの察しが遅すぎるせいで、咳払いしたのだろうが。
「アリアちゃん、ちょっと行ってくるね~~」
「はーーい」
アリアに任せて、ルクスは家を出る。
スライムプールにかまけているあいだに、家の周りを期待に満ちたリザードマンに囲まれていた。
「おおお……かなりの人数が……」
「転移石もたくさん用意しましたぞ」
「どこに広げればいいですか?」
「とりあえず、我が家へ」
ルクスが動くと、リザードマンたちも動く。
落ち着かない気持ちで、ルクスはケニーの店で買いあさったリザードマン向けの食品を並べた。
いかつい戦士たちが、昆虫パンと水苔のミートボウルの数を数えていく。
周囲のリザードマンたちは、食器をもってわくわくと待機していた。
「では、皆と話し合って計算します」
「あ、はい。また来るときにどのくらい必要なのかも教えてほしいです」
ルクスたちの転移石は、二十四あったのが今は十六個に減っている。
それでもケニーが抜けた分、二個とっておけているほうだ。
一部の商品が、試食のために開けられて興奮した声があがる。
最初に試食したのは、ガイルとその連れの戦士だけだ。
味を分からずに大量購入はしないだろうから、ルクスは水を飲みながらその光景を見守った。
多少はお金が入ったルクスだが、中身は相変わらず水道水だ。
「昆虫パンも色んな種類を買ってきたけど、気に入るかな……?」
本当は、二百万ほど買い占めたかったのだが死に筋の商品をそれほど買い占めることに、ケニーの父が嫌がった。
今回で、限定的に売り上げ商品だと認めてくれれば大量発注が可能だ。
「ルクス様!!!」
「ひ、ひゃい!!?」
「転移石30個でいかがでしょうか!?」
ルクスは飲んでいた水が気道に入ってせき込んだ。
日本では転移石は、一個20万。
100万かけても五個しか手に入らない。
しかし、今回100万の商品で30個も手に入るとなると大当たりだ。
「た、足りませぬか……? で、では35個……!」
「げほげほ、げーほ!!」
「で、では40個……!!」
「げっほげっほ……、まっゲホ……」
このままだとえらいことになる。
むせているのを誤解されているが、どんどん吊り上げようラッキーなどとは思えないルクスだ。
「待ってくださ……げほっ……吊り上げたかったわけじゃないんですよ。むせてただけです」
「むせ……?」
リザードマンには、むせるということがないようだ。
「食品にそんなかけていいんですか?」
「滅多に手に入らないものですし、隣町のリザードマンも欲しがっております。アイテムボックスに入れておけば、痛まないですし。転移石は、魔導士がたくさんいますから」
この港町だけの消費ではないようだ。
ぼったくりになっていないか不安なルクスは、つくづく商人には向いていないようだ。
「ルクスさん!! 生まれました!!」
わたわたするルクスを呼ぶ声がする。
アリアの声は、喜びにはずんでいる。
「シルバースライムができましたよ!!」




