第39話 シルバースライムは作れない?
「今回こそ、シルバースライムを見つけるぞー!」
「おおー! なののです」
ティルノア港町で、意気揚々とルクスとアリアが声をあげる。
ルクスは出かげに卯実家により、マナアシたちの売り上げを受け取っていた。
ケニーのコンビニから、可能な限り発注したリザードマンの商品はアイテムボックスの中だ。
うっかりにより百万円が消えたが、マナアシは湿地帯にまだ半分ある。
そしてなにより、アの実をゲットするためには交換条件のシルバースライムが居る。
湿地帯で、ケニーが咲かせた草を中心にスライムを片っ端からアイテムボックスに収納していく。
とはいえ、他の荷物も入っているアリアは二時間もするとアイテムボックスの容量の限界を感じた。
「ルクスさーん、いったん出しませんか?」
「え、あ、もうそんな時間? じゃあ、プールだすね」
丘にあがって、ルクスは空気入れと子供用のビニールプールを出す。
ふくらんだプールに、アリアが収納したスライムたちが滝のように流れ込んだ。
あとは、空腹で互いを食べだしていくのを待つだけだ。
アリアは魔導ショップで買った、スライム忌避液をプールの内側に塗る。
これで、入れ物のプールが食べられることはない。
ルクスはビニールシートを敷き、座布団、手作りホットサンド、あたたかいお茶が入った水筒を並べる。
「アリアちゃんは、ここで少し休んでてね~。俺はもうちょっと見つけてくるよ」
「シルバースライムが生まれないか、しっかり見張ってますです!」
ルクスは再びスライムを収納に走り、アリアは座布団の香りをこっそりと吸い込んで抱きかかえたままプールの中を監視し始めた。
レッドスライムがブルースライムを吸い込むと、紫に光る。
グリーンスライムがブラックスライムを取り込むと、ホワイトスライムへと変化する。
アリアは法則性をスマホにメモしだしたが、だんだんと追いつかなくなってきた。
「これって、もしかして脈絡ない……?」
動画に移行していたアリアは、無茶苦茶なスライムの変色に困惑する。
ビニールプールいっぱいにいたスライムは、でっぶりとしたブルースライム一色になってしまった。
途中でシルバーになったものは、いなかった気がする。
太ったスライムを逃がすと、アリアはアイテムボックスに残ったスライムを再び投入した。
「でも、ガイルさんによると元からこの土地にシルバースライムがいたはず……土を入れてみるとか?」
土を掘って、スライムプールに入れる。
何体か、茶色や黒になったがすぐさま違う色になってしまった。
「食べるものは無関係ということ……? もしかして、マナアシとか?」
ルクスは遠距離からマナアシを刈っていたので、アリアの手元にはまだマナアシがある。
折り取って、入れてみたがホワイトスライムは生まれても銀色にはならない。
アリアが、アルミホイルに巻かれたホットサンドを食べようとして外側のアルミホイルをプールに落としてしまった。
すると、アルミホイルを食べた個体の一つが銀色に変化する。
「シルバースライム確保!!!!」
すぐさまアリアがつかみ取ったが、急ぎすぎて核をつぶしてしまった。
シルバースライムは、アリアの手の中ででろりと広がった。
「しまった……!」
生死は聞いていないが、スライムは死んだらすぐに消えてしまう。
とっさにアイテムボックスに入れようとしたアリアの背後から、いきなりマッドクロコダイルが襲い掛かる。
武器を掴む暇もなく、アリアはシルバースライムを持っていない左手で、マッドクロコダイルの口もとを抑えた。
右手の感触は、どんどんと溶けていく。
アリアは焦って、マッドクロコダイルを蹴倒してからシルバースライムを収納しようとした――が。
手の中のシルバースライムは、もう跡形もなく消えていた。
「もおおおお、あんたのせいですよーーーーー!!!」
アリアの神経が切れる。
マッドクロコダイルのしっぽを掴むと、遠心力をかけながら空中に振り回した。
アリアの怪力が、モンスターを地面に叩きつける。
「アリアちゃん、大丈夫ーー??」
ルクスが駆け付けたときには、マッドクロコダイルの骨は全身折られていた。
「ルクスさん、ごめんなさい、せっかくのシルバースライムが……! この、ばかばかばか!!」
アリアは半泣きでマッドクロコダイルの頭蓋骨を殴り続けている。
ルクスは、事情が分からずに困惑していた。
奇跡のシルバースライムを失って、この日は夜にさしかかる。
手元のシルバースライム所持数は、依然として0である。




