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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ナナ
第二章 可愛い後輩には旅をさせろ

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第28話 薬の効き目は?

 ユミエラは、今日は自宅で待機していた。

 

 永飢病えいきびょうに、オーデュインが残したアイテムが効くのかどうか。

 ルクスと同じか、それ以上にユミエラも緊張している。

 ルクスが息をきらしながら帰ると、ユミエラは珍しく起き上がって兄の帰りを待っていた。

 

「ユミエラーーーー!! 手に入れたよ!!」

 

 玄関ドアを開けてジャンピング入場したルクスは、仰向けのまま靴を脱いで放る。

 物持ちのいいルクスにしてはぞんざいな扱いだが、それどころではない。

 

 手を洗ったりうがいをしたりすると、興奮気味にユミエラのベッドに腰を掛けた。

 

「これが、ルミリの実だよ」

 

「これが……お父さんの作った、お母さんの名前入りの……」

 

 ユミエラが、おそるおそるルミリの実を触る。

 そして、実の匂いにお腹が鳴った。

 

 普段の空腹とはまた違う。

 なにか、根本的な飢餓が、これを欲しているのを感じた。

 

「食べて、食べて!! 足りなかったら土下座でも借金してでも、ルミリの実はもらってくるから!!」

 

 ユミエラは、震えながらルミリの実を口にする。

 何よりも濃く、腹の底かじゅわぁと音がするほど、味が体にしみ込んでくる。

 

 甘美な甘さと、軽いくちどけからは想像できない満腹感が広がった。

 ずっと刺すような空腹に襲われていたが、その痛みが軽くなったのを感じた。

 

「すごい……効果あると思う、これ……。体が楽になった!」

 

「ほんと!!?? よかったぁぁぁぁ!!!! あと五個あるからね!」

 

 ユミエラは、お腹を触る。

 お腹は減っているが、ルミリの実を食べる前とあとでは全然具合が違った。

 

「次の収穫が三月三日だから……少しずつ食べるね。……ほんとにありがとう、お兄ちゃん……」

 

「ユミエラ……泣かなくていいんだよ……?」

 

 ユミエラ自身も何故泣いているのか、分からない。

 遠回しの父の愛情なのか。

 

 実際に収穫するまでの兄の努力か。

 飢餓の苦しみが減ったせいなのか。

 

「大丈夫だよ、ユミエラ。五個のアイテム全部集めるからね。必ず病気は治すからね」

 

 ルクスに抱きしめられて、ユミエラの涙は止まらない。

 何もできない自分は悪い子だと思っていた。

 

 兄に負担ばかりかける、半端なヴァンパイアハーフだと。

 寝たきりで、食費ばかり嵩んで。

 

 でも、望みが見えた。

 いつまでも、お荷物なんかじゃない。

 

 治ったらきっと、ユミエラはたくさんのことを頑張れる。

 料理をしたり、掃除をしたり。

 

 今は十二歳だけれど、成長したら兄が楽できるほどユミエラが甘やかしてみせる。

 

「ユミエラはいい子だね~」

 

 背中を撫でてくれる兄に甘えながら、ユミエラは夢を見る。

 諦めていた、未来の夢を。

 

「よーーし、そんじゃ先輩たちとアリアちゃんに結果報告してーー、俺はもーいっかいグランディアに潜ろうかな!? やっぱりお礼を言いたいし、あっちでも結果を気にしてるだろうからー」

 

 ルクスは、レッドバーニーとブラックバーニーの肉でレバ刺しとユッケを大量に作ると、また飛び出していった。

 ユミエラは、そっと一人でベッドから降りてみた。

 

 今までは何かにすがっていないと、立ち上がれなかった。

 それが、今はふらつきながらも一人で立てている。

 

 ユミエラは、涙をふいてそっと微笑んだ。

 一輪のバラが咲くような、はかなげで、この先が楽しみなつぼみのような笑みだった。

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― 新着の感想 ―
ユミエラが回復の兆し。病気でつらかったけど希望の光が見えてきてよかったぁ。
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