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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ナナ
第二章 可愛い後輩には旅をさせろ

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第27話 一月七日・最初のアイテム

「ふわぁ~、慣れたもんだねえ」

 

「素敵です、ルクスさん!!」

 

「そ、そうかな? 低級のモンスター相手だけど……へへへへ」

 

 レッドバーニーやブラックバーニーを倒しながらフォルン村に向かう三人は、にぎやかに歩いていた。

 ケニーもアリアも、ルクスの一人修行を知らなかったが太刀筋ですぐに把握する。

 

 そもそも、最初は自分の指ごとすっ飛ばしていた無残なレベルからのスタートだ。

 どうしたって、上達は目立つ。

 

 ケニーとアリアはあまり手を出さず、ルクスがメインで戦いながら歩いていた。

 ルクス自身は、先日売ったシルバーウルフの毛皮と骨がそこそこ高額で売れたのに味を占めている。

 

 日によっては、業務のあとにもグランディアに来て狩っていた。

 目当てはお金より、肉である。

 頑張れば毎日肉を食べられるとあって、ユミエラと自分の為にせっせとハントしていた。

 

「あれ、あれはホムラマルさんでは……?」

 

「どれどれ?」

 

 ルクスの目は、ほろ馬車でフォルミ村のほうからこちらに向かってくる御者を捉えている。

 その隣には、オボロが座っていた。

 ルクスが手を振ると、オボロが手を振り返す。

 

「おーい、おーい! 来ましたよー!」

 

 ほろ馬車は、ほこりを巻き上げながらルクスたちの隣に止まった。

 

「ああ、兄さんたちか」

 

 ホムラマルはこころなしか、頭の形が変形したように見える。

 それ以外は、元気そうで表情も柔らかい。

 

「今日は、ルミリの実を取りにきたんですよー」

 

「ルクス様のお陰で、毒霧もなくなったので畑が元気になりましたのじゃ。どうぞ収穫していってくだされなのじゃ」

 

「良かったーー!」

 

「良かったですね、ルクスさん!」

 

 ケニーはほろ馬車の中を、ちらりと覗いた。

 なにやらたくさんの素材が積まれている。

 

「フォルミ村から頼まれた加工素材ですじゃ。細工ものは、わしらたぬき獣人の得意とすることですじゃ」

 

 オボロが嬉しそうにひげを揺らす。

 

「ホムラマルは護衛と御者ですじゃ。最近はルクス様のお陰で、めっきりウルフも減って助かってすますじゃ」

 

「言っとくけど、フォルミ村でもちゃんと働いてるからな!」

 

「うんうん、良かったですねえ……え、あれ、俺が狩ってるの知ってました?」

 

「たまに村の者が目撃してますじゃ」

 

「狩りすぎてたら言ってくださいね」

 

「むしろ、めちゃくちゃ助かってますのじゃ」

 

 村でお待ちしておりますじゃーというオボロの声が流れて、ほろ馬車は発進した。

 ルクスが背後を見ると、レッドバーニーの群れがこちらに向かってくる。

 

 ルクスが鬼哭丸を、ケニーが弓を、アリアはマナ石釘バットを構えた。

 

「今日もバーニーで焼き肉じゃぁぁぁぁ!!!!」

 

「まあ、現地通貨も欲しいしね」

 

「ルクスさんのためなら、お安いです!」

 

 レッドバーニーたちは、後悔することになった。

 この三人を襲ったことを。

 

 血が飛び、肉が絶たれ、モンスターの悲鳴が響く。

 ルクスたちは、無傷で群れを全滅させた。

 

「よーし、村にいこ! ルミリの実をとるぞーー!!」

 

「はいです!」

 

「うんうん、順調だねえ」

 

 三人がフォルン村につくと、村人たちに歓迎された。

 カゲロウがルクスの長い足に、飛びつく。

 

「はやくはやく、ルミリの実は明日には枯れちゃうんだから!」

 

「やっぱり、日付が限定なんだなぁ……あのオヤジも凄いんだか凄くないんだか」

 

 後半をぼそっと小声にしたルクスに、ケニーが尋ねる。

 

「そういえば、なんで五節ごせちに実ることにしたんだろうね、オーデュイン卿」

 

「あれは日本オタクなんです。七五三とか、こいのぼりとか大好きで、それで日本に逆移住してきたんですよ」

 

 狭いアパートには、オーデュインが特注した着物などもかろうじて残っていたりする。

 七夕や豆まきなども、オーデュインは日本人以上にいれこんでいて、ルクスはすべて付き合わされてきた。

 

「へえ……凝り性だったんだね」

 

「趣味に生きる男ですよ、あれは」

 

 過去を思い出して少々げっそりしたが、そのオーデュインが開発したアイテムが必要なのも確かだ。

 ルクスは、とりあえずは感謝することにした。

 

「わぁああ、これがルミリの実!?」

 

「凄いですね、ルクスさん!」

 

 アリアがわくわくするのも無理はない。

 畑の一部が、真っ赤に染まっていた。

 一つ一つが、ルクスの拳サイズの真っ赤なトマトが実っている。

 

「さあ、どうぞですじゃ!」

 

「好きなのとって!」

 

 オボロとカゲロウにせかされて、ルクスはルミリの実を取った。

 みずみずしいのに加えて、濃厚なトマトの匂いがする。

 どこか、血に似た匂いがした。

 

「なんか、普通のトマトじゃない……?」

 

「遠慮せずに、あと五個ほど持って行ってくだされなのじゃ」

 

「五個!? あ、全部で六個!? いいんですか? 高くて貴重なのに」

 

「そもそも、本来は半分も収穫できなかったはずですじゃ。ほんとは全部といいたいのに、言えなくてすまんですじゃ」

 

 村人たちは、にこにことルクスを見ている。

 誰も不満はないらしい。

 ルクスはおそるおそる、あと五つのルミリの実を選んだ。

 

「妹が少しでもよくなるといいね!」

 

 カゲロウの笑顔に、ルクスは頷きかえした。

 これが効かなければ、ユミエラは助からない。

 

「ケニー先輩、アリアちゃん、ごめん!! 急いで帰ろう!?」

 

 ケニーとアリアはすぐに頷いた。

 すぐに食べさせてやりたいルクスの気持ちが、わかる。

 

「村の皆さんも、ありがとうございました!!」

 

「「「こちらこそ、ありがとうございます!!!」」」

 

 村中から、感謝の言葉が響いた。

 また、今度修行にきた際に寄って、お礼をしよう。

 

 ルクスは、お礼の言葉を背負って地球のゲートへと走る。

 ルクスが影となっても、フォルン村からありがとうの言葉は消えなかった。

 

 にぎやかに、楽し気に。

 感謝の言葉が、グランディアに鳴り響く。

アリアの不自然な語尾の「ーーです」は、ルクスがいるときだけ緊張で発しています。

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― 新着の感想 ―
ホムラマルもちゃんとやっているみたいだし,毒はなくなってフォルン村のみんなから感謝されて、これでユミエラがルミリの実でよくなったら、これ以上の喜びはないね。ルクス!
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