第22話 資金はどうなる!?
「なるほど、それでこのマナ石が……」
ルクスは、卯実賢人の父、誠二にフォルン村で貰ったマナ石を見せていた。
妹のユミエラの病気のことを打ち明け、今後も何度かグランディアにいかなければならないことを説明している間に、紅茶とケーキが出された。
話しているうちに、どうも誠二は息子が「半妖のくせに」などと口走っていたことは知らないようだった。
ルクスは言いつける気もないので、黙っておくことにした。
「私は営業ですが、鑑定・Bのスキル持ちです。間違いなく我が社で五百万以上で買い取れます!」
「ごっごっ……ごひゃくまんっですかっ!!!!??」
ルクスの声が裏返る。
百万なんて言われちゃったりして……とか言いながら来たこの男からすると、期待は上回って八の字を描いてきた。
人生でそうそう耳にしない。
しかも、もやしで基本食つなぐルクスにとっては今すぐ床でブレイクダンスしたいほどのうれしさだ。
「ごごごっごごっごご、ごひゃ……」
テンパったあまり、どもりがビートを刻むルクスと違い、卯実誠二にとっては慣れた数字だ。
会社のタブレット端末で商品を検索して、画像を見せる。
「お探しの異世界言語・Cのスキルオーブは一個、四十万ですね。在庫はありますから、三名様の用意はすぐにできますよ」
「そ、そんなにするんですね……」
「ただし、私の権限でなんとか一つ三十万でお売りできるように努力しますので……! 息子の命の恩人ですから、なんとしても下げて見せます! ニーズは少ないですし」
「ほ、ほんとうですかっ!! ありがとうございます!!」
三十万も浮くのはありがたい。
テーブルに頭をすりつけかねないルクスを、慌てて誠二が止めた。
「問題は転移石です、ルクスさん。一個二十万で、私の権限で売れるのは今のところ二十四個でした。グランディアの一部の魔法使いしか作れない品なので、なかなか入荷しないと思います」
「片道一人二十万……!」
さっきまで歓喜にまみれていたルクスは、途端に身を捩る。
一か月の食費や家賃などが脳裏を駆けていく。
「あと、心苦しいのですが……弊社は契約相手に半妖の方は不可能になっていて……そこで、間に探索者を挟みませんか?」
「え……仲介ということですか?」
ルクスは、冷めてきた紅茶をがぶりと飲む。
茶器が高そうなので遠慮していたが、さすがに喉が渇いてしまった。
「息子に聞いたのですが、ルクスさんは配信者の城石深玲のファンだとか……? 仕事で私はそこそこ城石と面識がありまして、良かったら彼女の名前を借りて契約し、ルクスさんに渡すというのではどうでしょう?」
ルクスは、飲みかけた紅茶を一気に噴き出してしまった。
ルクスは過去にそれなりに投げ銭をしており、今もファンである。
突然、推しの名前を出されて動揺しないファンはいない。
「そ、そそそそそんな、推しに迷惑なんて……!!」
「息子いわく、”るくっくん”の名前でまあまあ投げ銭してらっしゃったとか。城石に昨晩聞いたところ、熱心なファンとして記憶していたようで、実は快諾を貰ってるんです」
「み、みみみみみみみみれい様がっっ!! 俺を認知!!?」
噴き出したお茶を、アイテムボックスから出した雑巾で拭いながら、ルクスは変な汗が出た。
賢人とは、かなり打ち解けて話してしまっていたが、こんなことになるとは思わない。
ファンとしては、推しに迷惑をかけていいのか焦るところではある。
「はい、”るくっくん”が相手なら名義は貸すと。息子を助けてもらった話をしたら『かっこいい』と言っていました」
「かっっっっこよく、ないですよぉぉぉぉ、そんなぁぁぁ!!」
「いえいえ、心も見た目もイケメンですよ」
にこにこと誠二に対応されて、ルクスは扱われたことのない待遇に身を縮ませた。
「と、いうことで城石が掘ってきたマナ石として我が社に売りなるべき高く買い取ります。そして、異世界言語・C三個と転移石を買いましょう! 営業部長として、明後日には決済を終わらせておきますんで!」
誠二が、力強くルクスの手を握る。
その顔は、恩返しできる喜びで輝いていた。
「また今後、こういう事態があれば私がどんどん解決してみせますので! 信じて頼ってください。そして、ルクスさんは妹さんを救ってあげてください!」
「ありがとうございます……! 他にツテもないし、甘えちゃってすいません!!」
ルクスは、後で賢人にも礼をしようと思った。
君のパパは、本当に頼りになるぞ。
少なくとも、二個目以降のアイテムを取りにいけるチャンスがまた広がった。
ルクスは、ただ感謝することしかできない。




