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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ナナ
百害あって一利あり

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第20話 結果の話

 ケニーは、かなり驚いていた。

 まさか、落とし穴に落ちるとは。

 

 こんなガバガバな作戦に、ルクス以外にもひっかかるバカがいるとは思わなかった。

 結果としてプランBは必要なくなったが。

 

 ルクスだけは、少し賢げな顔をしているのが地味に腹が立つ。

 

「それで、捕まえたホムラマルは……」

 

「せっかく捕まえてくれたのに申し訳ないじゃ……フォルミ村と話し合って、反省するまで牢に入れたいのじゃが、ルクス様はそれでもいいですじゃ?」 

 

 オボロが、眉をしょぼしょぼさせて提案してきた。

 ルクスに異存はないが、被害にあったのはフォルン村だ。

 

 ずいぶん、甘い提案に思える。

 縛られたホムラマルは、顔をそむけた。

 

「こいつが、勇者・シュラに案内してここら一帯を案内したのが発端で、勇者が悪さをしてまわったんじゃ。その時はなにも悪気がなかったんじゃ……自分のせいで引き起こしたことで、一気にグレてのぅ……」

 

「庇わなくていいぜ、オボロのじいさん! 俺はどうせバカだよ」

 

 遮ったのは、当のホムラマルだ。

 歯を食いしばって、オボロを睨みつけている。

 

「シュラだって、最初は善意ツラして村の心配をしてたんだ……それが貴重品盗んだり、マナ石を取りまくったり、毒霧を設置したり……!! 俺が騙されなきゃ、こんな目に!」

 

「いや、でもそれでホムラマルさんが、フォルン村の荷物襲ったらだめじゃないですか」

 

 ルクスが、悪意ゼロの声で突っ込む。

 

「それなら、働いて今までの分の損失を返してもらわないと、因縁だけが残ってまたグレちゃいますよ」

 

 他の村人たちも、そうだそうだと同意の声をあげた。

 オボロの処置は、やはり砂糖より甘すぎたようだ。

 

「どうでしょ、殴りたい有志に一発ずつ殴ってもらってから、監視付きで仕事をさせるとか」

 

「素晴らしいです、ルクスさん!」

 

 アリアは感動したが、痛みに耐性があり、再生できるルクスは自分の感覚で提案したのだろう。

 フォルン村とフォルミ村で足せば、相当数の村人が怒っているはずだ。

 

「け、けっこう重たい刑罰ですじゃ」

 

「いいぜ、やったろうじゃねえか! それで済むなら軽いってもんよ!」

 

 ホムラマルは、覚悟したように吠える。

 

「じゃあ、まずフォルミ村に連れてこーよ! あっちも怒ってるやついっぱいいるよ! それに護衛にきつね獣人が付いてきてくれたほうが助かるじゃん」

 

 カゲロウが大きな声を出した。

 発言するチャンスをうかがっていたらしい。

 

 ルクスたちの負担にはなるまい、と村の中でも屈強なたぬき獣人たちが四人がかりで連れ出していく。

 

「……あんたら! ……ありがとうな、謝罪の機会くれて」

 

 ホムラマルはルクスたちにそう声をかけて、連れていかれた。

 ケニーには、牢獄に閉じ込めていがみ合うより建設的だと感じた。

 

 方法は荒っぽいが。

 

「このお礼はなにがいいですじゃ?」

 

 オボロに話しかけられて、ルクスは首を傾げる。

 お礼をされるようなことをした自覚が、ない。

 

「それは、一月七日にルミリの実を貰うことじゃないんですか?」

 

「ルクスさんは謙虚なのです」

 

「そうだねえ、でもそこがいいんじゃないかな」

 

「病気の妹に、ルミリの実をあげたあと、あと四つのアイテムがいるんだろ? 言語大丈夫なの?」

 

 今度は、ルクスだけではなくケニーもアリアも首をかしげることになった。

 フォルン村の皆とは、会話に困っていない。

 カゲロウは、子供らしくないため息をついた。

 

「あのね、この辺一帯は地球からいっぱい異世界人がくるから、案内で地球の言葉をしゃべってるけど、奥に行けば行くほど通じなくなるんだよ。魔族なんて、絶対人間の言葉は使わないし」

 

「そうですじゃ。異世界言語・Cが最低でも必須ですじゃ」

 

「じゃ、じゃあ次のティルノア港町ってとこは……」

 

「確か、リザードマンの敷地ですじゃ。日本語はおそらく……」

 

 ルクスはがっくりと項垂れた。

 そうホイホイうまくはいかないようだ。

 

 ケニーも頭を抱えている。

 

「うぁぁぁぁ、スキルオーブかぁぁぁぁ!! しかも複数!! いくらするんだー!」

 

「おそらく、人気はあまりないからそう高くはないと思うけど……ピースメーカーのギルドでは取り扱ってないはず……」

 

「そうですね、おそらく人間の探索者ギルドに売ってた気がします。半妖が買えるかどうか」

 

 アリアの兄、ネオは半妖で唯一探索者ギルドから支援依頼を受けていた。

 アリアもついでに参加して、レベル上げをしている。

 

 この中では、探索者ギルドに一番詳しい。

 

「はっ……賢人くん!!!!」

 

「だれ?」

 

「どなたです?」

 

「賢人くんがいたぁぁぁぁ!! お父様が菱石商事にお勤めの!!」

 

 ルクスは思い出した。

 菱石商事は全国二位の魔導ショップだ。

 

 グランディアと貿易をしているし、きっと異世界言語のスキルオーブもあるはずだ。

 

「そして問題は金だぁぁぁあ!!!」

 

「だから、なに? だれ??」

 

「ルクスさん、暴走してますですよ!」

 

 混乱するケニーとアリアを放置して、一人の世界で悶絶するルクス。

 そこに、山のほうからおりてきたたぬき獣人が何かをオボロに手渡した。

 

「ルクス様、なにかお困りのようですが……これをどうぞなのですじゃ」

 

 ルクスの手のひらに、塊が乗る。

 それはマナ石だった。

 

 前にこっそり掘って没収された小粒とはわけが違う。

 卓球のボールほどのサイズがある。

 

 売ったら果たしていくらになるのか。

 

「あと、これは少ないですじゃが……転移石ですじゃ」

 

「てんいいし?」

 

「グランディアは広いですじゃ。転移石に行きたい場所を言うと、その場所に飛べますじゃ。使い切りですじゃ、どうぞ使ってほしいですじゃ」

 

「そ、そんなマジカルアイテムがっ!!!! ありがとうございます!!」

 

「少ないですが、毒霧の泉を埋めて貰ったお礼とホムラマルの件ですじゃ」

 

 ルクスは文字通り、小躍りした。

 ステップジャンプと、不気味な舞いを踊っている。

 

 そんなルクスを、アリアだけがうっとりと見つめていた。

 

「やったやった、転移石が三つ!! 転移石最高!! 歩かなくてすーーむーーー!!」

 

 ケニーは、そんな喜びにわきたつルクスに残酷な事実を告げた。

 黙っていると本気で気が付かない可能性を心配して。

 

「ルクスくん、転移石三個じゃ片道だし、何度も行き来するんだから転移石も買わないといけないんだからね。気を付けて」

 

 びたっとルクスの舞いが停止した。

 ついでに、その赤い目が涙目になった。

 

「そんなぁぁぁぁぁ!!!! もしかして足らないんですかぁぁぁぁぁ!!!!」

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― 新着の感想 ―
ルクスは本当に計算が出来ないんですね。この先大丈夫なのか!
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