第18話 助っ人参戦!
翌朝、ルクスは起きるとユミエラをユーナの家に連れて行った。
昨晩の帰りは遅かったものの、ユミエラはルクスが帰ってきただけで嬉しそうだった。
一緒に寝ようと言われたが、シングルベッドに百九十センチ越えのルクスは入らない。
なんとかなだめて、寝る瞬間まで付き添うことでOKを貰った。
連日仕事を休むのは気が引けたが、今日で首尾よくいくと収穫の日までは仕事に専念できるはずだと報告してある。
むらっけのあるワガママなユーナだが、それで機嫌よく送り出された。
「でも、ケニー先輩まで休ませてて気が引けるんですよね……」
「まあ、僕はこっそり特別手当貰って……なんでもない! 秘密の約束だった! 忘れて」
普段はぼんくらだが、金の話をルクスが聞き逃すはずがない。
ケニーを羨むというより、社長のユーナにまた頭が上がらなくなりそうだ。
自分の損になるのに、ユミエラを預かりケニーを付き添わせ、ルクスの休みの半分は有給にしてくれている。
さらに、グランディアに行くケニーに特別手当も出してくれていたのだ。
いい下僕でいよう。
そう誓ったルクスは、グランディアで手に入れた素材と残りの肉を売ったお金で、狐狸族むけの食品を買った。
残った残金はユミエラの食糧だ。
廃棄と含めて、けっこうな量が買えた。
ゲートへ出向くと、そこには何故か装備を着込んだアリアが待ち構えていた。
「水臭いですよー、ルクスさん! 声をかけてくださればよかったのに」
「ええ~~アリアちゃん、まさか付いてくる……つもり?」
「ええ、もちろんですです! 私だってドラゴニュートハーフですよ!」
紅蓮の髪を揺らしてアリアが笑うが、ルクスは違う心配をする。
「ええー……でもアリアちゃんに何かあったら、ネオ先輩に再生できないほどぼろくそにされる~……」
ド級のシスコンならば、ありえる。
ルクスは今死ぬわけにはいかないのだ。
「安心してください、万が一ルクスさんを責めたら絶交すると書き置きしてきましたから!」
「それはそれで怖いやつ~~」
「まあまあ、今回はホムラマルを捕まえないといけないし、戦力は多いほうがいいでしょ」
「ケニーさんは分かってらっしゃるです!」
「アリアちゃん、ちなみに学校は……?」
「今は冬休みですよ。あとは卒業するだけです」
ケニーはアリアがどうしてこんな行動に出たか、分かっている。
激ニブのルクスは、おそらくなにも気が付いていない。
「で、ホムラマルってどなたですか?」
ルクスたちはゲートを潜りながら、今までのことをアリアに説明した。
「なるほど……その盗賊の方を捕まえるんですね」
「詳しい作戦は、ルクスくんしか知らないんだけど……」
「ふっふっふ、ホムラマルは狐獣人! 狐といえばあぶらあげ! 本拠地のカカル山の付近に狐狸族用のおあげを点々とおいておびき出し、落とし穴でズドン――完璧な計画でしょ!?」
子供のような捕獲計画に、ケニーとアリアは沈黙した。
ケニーはなんでルクスがあぶらあげをたくさん買ったのか、ようやく理解した。
原始人ならハマるかもしれないが、あいにく相手は知恵があるはずだ。
「……なんというか、参加してよかったです。私、お手伝いできそうですね。ああいう残念なところも好きなんですけど、さすがにこれは……」
「そうだね……昨日のうちに詳しく聞いておけば良かったと、僕も後悔しているよ」
アリアとケニーがひそひそと会話する。
しかし、ルクスはなけなしのお金でせっかくあぶらあげを買ってきているのだ。
一応、試すだけ試すしかない。
めざせ黒字! と書いてある半袖シャツのルクスのほうは、作戦を信じて疑わない顔をして歩いていた。
「モンスターがでましたよ!」
アリアが、反応して声をあげる。
兄のネオと同じくドラゴン・アイを持つアリアは、索敵も得意だ。
ただし、ネオは攻撃特化でアイテムボックスを持っていないが、アリアにはアイテムボックスがある。
そのかわり、ドラゴンブレスが使えないのだがアリアには専用武器があった。
「出番ですね!」
アリアがアイテムボックスから出した武器は、釘バットだった。
正確には、野球のバットではなく光っている。マナ石で出来たバットだ。
ルクスもケニーも、アリアの武器を見たのは初めてだ。
正直、ドン引きである。
「さ、行きますよ!!」
ケニーが弓矢を放つより先に、アリアの体が瞬時に駆ける。
その速さは、さすがドラゴニュートの力を引いていて、早かった。
レッドバーニーの群れが、アリアの釘バットに叩きつけられていく。
「アリアちゃん、素材の毛皮と肉が……!」
心配する相手は、アリアではなく素材のほうだ。
一方的な蹂躙に、ルクスは素材が台無しになっていないか不安になった。
「大丈夫です、このマナ石バットとマナ石釘、毛皮などにはダメージを与えずに中身にだけダメージがいくように出来てるんです」
「そっかー、良かった」
いうべきセリフはそれだけなのか、とケニーはルクスをみやった。
つっこみ属性でないケニーでも、さすがにこの状況にはついていけない。
肉体にだけダメージを与えるとは、恐ろしい出来だ。
マナ石は重くて高い。
それをやすやすと振り回せるアリアが怖い。
しかも、何故釘を足した。
「私が倒した分は、ルクスさんにあげますね!」
「やった~~~!! ありがとう、アリアちゃん!!」
きゃっきゃとはしゃぐ二人の後ろで、ケニーは重い溜息をついた。
恐ろしいことに、今日はこれからなのだ。




