第17話 穴掘りをしよう!
オボロは、命の恩人たちが村を出て土を掘り返し始めたと聞いてびっくりした。
フォルン村は地球へのゲートが近く、カカル山でとれるマナ石を売って村を繁栄してきた。
そんな貴重な資源を盗賊のホムラマルに奪われて、今や細々とアイテムを売って過ごしている。
勇者・シュラがあちこちに作った毒霧の泉は、どんどん侵食してきて門や薬草畑などが使えなくなっていた。
いずれは住居のほうまで広がったらどうするか、協議しても結果が出ないまま。
「ルクス様とケニー先輩様が、どうして土を……?」
「なんかね、泉の根っこまで掘ってくれるんだって」
カゲロウがうきうきと答える。
オボロはそんなひ孫を、怪訝な顔で見た。
「わしらの命を救ってくれただけじゃなく、村も助けてくれるんじゃ?」
「なんかね、ルミリの実が何個か欲しいけどお金がないから、その分働くんだって!」
「なんとのぅ……」
「村でも戦えるメンバーが、手伝ってるよ」
カゲロウは追い出されてきたのだろう。
オボロは石の障壁をのぼって、土を掘る一団を見つけた。
グランディアでは見たことがない、乗り物のようなものがたくさん動いている。
「不思議な方たちじゃ……」
***
ルクスは、スコップで土を掘り続けた。
たぬき獣人たちには、スマホの画面に映り込んだブルドーザーの写真を見せて、変化してもらっている。
お陰で、スムーズに大量の土をアイテムボックスにしまえた。
巨大な穴を作らないように分散して掘っているが、思いのほか集まるのが早い。
ケニーは、遠距離の攻撃が出来るため、モンスターのサーチ&デストロイに徹していた。
「一旦、こんなものかな? 足りなかったらまた掘ればいいか」
「そう? じゃあ村に戻ろうか」
ケニーが倒した獲物を集めると、レッドバーニー十三体。ブラックバーニー七体と結構な数が集まった。
時計を見ると、二時間以上穴掘りをしていたことになる。
グランディアの空も、夕焼けに染まりだしていた。
「やばっ!! 十二時前にユミエラを迎えにいけるかなぁ」
「やっぱり初日から泊まりは避けたいかな?」
「そうなんですよ……不安だろうし……」
村に戻ったルクスは、休みもなく東門に向かった。
今、毒霧で使えないのは北門と東門だ。
「ああーー!! 俺が愚かでした!! なんで掘ったりしてたんだろ……アイテムボックスに直接放り込めばよかったのに!!」
「それやったら、周辺が穴ボコだらけになってたよ? 毒付きの土をしまうんだから、今からやればいいんだよ」
「良かったーーー!! 合ってたーーー!! うぉぉぉぉ危なーーい!!」
騒ぎながら、毒の臭気があがる地帯に踏み込む。
ケニーと村人たちは、ひやひやしながらその光景を見つめていた。
「あ、ぜーんぜん大丈夫です! ここは俺に任せてください!! はっ! 俺こんな頼もしいセリフ初めて言った!!」
「じゃあ、こっちは解体してるね」
ルクスは毒霧の中にかがむと、毒で汚れた土をアイテムボックスに入れる。
ケニーはツッコミ属性がないので、聞き流しスルーだ。
ルクスが毒霧の中でも平気そうなのを見届けて、村の中に戻る。
ルクスは、猛然と毒の土をアイテムボックスに収納し続けた。
触ったところが大量に削れて消えていく為、毒の泉まで十五分ほどで到達する。
「お、ここまでかな?」
泉自体はそう大きくない。
数のほうが厄介だろう。
毒の水まで収納すると、ルクスはアイテムボックスから良質な土を開放した。
ルクスはたやすくやっているが、これだけの土を収納できるアイテムボックス持ちは少ない。
しかも、毒消しの時間はそう長くないのだ。
完全解毒・Sのスキル様様である。
均すのは村人に任せるとして、ルクスはこの勢いで北門へ向かう。
村の中央を横切っていくルクスに、たぬき獣人たちは目を丸くしていた。
「よーし、ラストスパートぉぉぉ!! 頑張れ俺、頑張る俺!!」
門と薬草畑の毒を取り除いたら、今日は帰宅したい。
ユミエラを安心させるためにも、急いで終わらせるしかない。
ルクスはもぐらのように穴をあけては、埋める。
結果、三つの毒霧ゾーンが消えて村人たちは大喜びだ。
「明日もきますね! もし時間があったら、また綺麗な土を掘っておいてください!」
「明日はお土産を持ってきますよ」
ルクスとケニーは、夜へと移動する空の下、地球に戻るゲートへと引き返す。
風が、疲れた体に心地よかった。
「お疲れ様、ルクスくん。ところで、ホムラマルという盗賊はどうしようか? カカル山へと行ってみる?」
「ふっふっふ、なんとこの俺に妙案があるんです! 金はないんですけど」
「そうなの? 良い手があるんだね?」
ルクスは、滅多に見せないどや顔をした。
「名付けて、おあげ大作戦です!!」
うまくいきそうにない作戦が開始です




