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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ナナ
百害あって一利あり

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第16話 盲点だった

 フォルン村の中央には、串焼きの屋台があった。

 いかにものどかな異世界、という感じだ。

 

「おっちゃん、命の恩人に肉焼いてくれよ」

 

 ピリ辛スパイシーな香りに、思わず反応したルクスたちを見て、カゲロウが声をかける。

 

「いやいや、大丈夫だよー。こっちにはクリスマスケーキがあるし……ね、ケニー先輩!」

 

「そうだね、村の貴重な食糧を……」

 

 絶妙なタイミングで、ケニーのお腹がくるくるっと鳴いた。 

 ケニーが、赤くなってお腹を押さえる。

 

「せめて、せめてお金は払うから!」

 

「一個三十ディニーだよ」

 

「ディ……?」

 

 ルクスとケニーは、愕然とした。

 ここは異世界グランディアだ。

 地球のIC払いは、当然使えない。

 

「うわああああああ、俺は一文なし……! 地球でも異世界でも、一文無しだぁぁぁぁ!!」

 

「お、お金のことをすっかり忘れて……? 僕としたことが……ルクスくんの補佐できたのに、こんな初歩的なミスを……!!」

 

 頭を抱える高身長二人の恩人に、カゲロウが少し憐みの目を向けた。

 

「……さっきのレッドバーニーとかの素材を売ったら……?」

 

「そ、そーか!! その手があった!!」

 

「ごめんね、買い取ってもらえるかな……」

 

 串焼きやのおっさんが、肉は買い取ると言ってくれたので、二人は隅で解体をすることにする。

 カゲロウが井戸の水を汲んで、コップにいれてきてくれた。

 

 ルクスが解体するのは、外傷のないブラックバーニーだ。

 

「そういえば、ルクスくん。さっき戦ってるときに、見た目が変わったのって……デーモンモード?」

 

「あ、ケニー先輩は知らないんでしたっけ。そうなんですよー、追い詰められたりするとデーモンバージョンになっちゃって。自分ではコントロールできないんですよねー。そうなると、相手の魂を食べだすんですよ~」

 

「それって最強では……?」

 

「え? 出したいときに変身できるとは限らないですからねえ。多分もやし生活で、お腹が空いて本能的に出ちゃっただけで」

 

 へらへらとルクスは笑う。

 オートで起こることなので、いまいち強さが当人もわかっていない。

 

 残念なおバカさんである。

 

 解体の終わった肉を売り、二人は串焼きの肉を二つずつ購入する。

 レッドバーニーとブラックバーニーの肉は、全部で五千ディニーになった。

 

 残ったホワイトウルフの肉などは、戻ったら売ろう。

 ひとまず一文無しからの脱却だ。

 

「あ、おいしい。癖がない味ですね~」

 

「モツもコリコリしてておいしいねえ」

 

 持参したクリスマスケーキはデザートとして、大ぶりの肉を堪能する。

 ルクスなど、いつぶりの肉か記憶が辿れないでいた。

 これで白米があれば、完璧だったろう。

 

「そんなにおいしい? 地球にもおいしい食べ物はあるんでしょ?」

 

 肉にかじりつく二人に、カゲロウが興味津々で尋ねてきた。

 その目は、ホールケーキに釘付けだ。

 

「良かったら、食べる?」

 

「え? いいの!?」

 

 ケニーは準備よく紙皿を持ってきていた。

 フォークで切り分けたために、少しくったりしたがカゲロウは大喜びだ。

 

 カゲロウが夢中になってクリスマスケーキを食べているうしろで、いくつもの小さなケモ耳が見える。

 たぬき獣人の子供たちが、建物の影からぴょこぴょことこちらをうかがっていた。

 

「おいでーー、ケーキあげるよーー」

 

「順番ね」

 

 ルクスは自分で食べることをあっさりと諦め、子供たちを呼び込む。

 おっかなびっくり寄ってきた子供たちによって、クリスマスケーキは完食された。

 

 たぬきのふわふわの尻尾がたくさん揺れる景色は、癒しだ。

 

「じゃあ、薬草畑に案内するよ」

 

 カゲロウが口をなめ終わってから、ぴょんと立ち上がる。

 村の中心からやや離れると、思ったより小さな畑が点々とあった。

 

 一部は、葉が枯れたり変色していて元気がない。

 

「これって……」

 

「半分は毒霧のせいで、もう半分はホムラマルのせいなんだ。あいつ、フォルン村の村人がカカル山に入ると嫌がらせにめちゃくちゃにするんだ」

 

「盗賊のホムラマルが、嫌がらせまでしてくるの?」

 

「そう、毒消しを俺たちから取り上げて、毒で使えない門から侵入してくんだ」

 

 ケーキでつられてくっついて来た子供たちも、そうだそうだと騒ぐ。

 

「これがルミリの実……もう少しで赤くなるんだけど」

 

「これ、トマトですよね?? ケニー先輩」

 

「そうだね、トマトに見えるね」

 

 カゲロウが指した畝は、トマトにしか見えない実がたくさん成っている。

 ただし、サイズが普通のトマトより大きかった。

 

「ヴァンパイア族だけじゃなくて、他の高位の魔族にも高く売れるんだ」

 

「なるほどー」

 

 ルクスは腕まくりした。

 ユミエラを治すアイテムは確認できた。

 

 それでも、実ったら買ってさよならとはいかない。

 その、ホムラマルという盗賊がルクスたちが地球に戻っている間にルミリの実をダメにしないとは限らないのだ。

 

「よし、いっちょなんとかしますか」

 

「そうだね、やれることはやっておこうか」

 

 ケニーも、これを放っておけるキャラをしていない。

 二人は、相談を始めた。

 

 目指すのは、大団円のアイテム入手だ。

あっちでもこっちでもお金がないルクス

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― 新着の感想 ―
ルクスはちょっとお馬鹿だけど限りなく優しい。それにしても串焼きおいしそう
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