第14話 異世界グランディアの歩き方①
ルクスとケニーが目にしたのは、倒れたほろ馬車とそれにたかるモンスターの山だった。
「大丈夫ですか!? 今、行きます!!」
ルクスは猛然と、その山に突っ込む。
ケニーは中距離から、矢を雨のように降らせた。
ブラック・バーニーにレッド・バーニー、ホワイトウルフなど、馬車にたかるモンスターは種類が様々だ。
ルクスは、途中でシャツを脱いでアイテムボックスにしまうとモンスターを薙ぎ払う。
助けを求める声は下から聞こえるが、万が一があってはいけない。
鬼哭丸を振り回さず、素手で相手を仕留めるルクスの髪色がじわじわと黒から白へと変化する。
目の色も、赤から紫へと変貌し、背中に悪魔の翼が生えだした。
「ルクスくん……?」
ケニーは、ルクスのこんな姿を見たのは初めてだった。
同じ残業ダイスキ事務所に所属しているが、シフトが違う。
ユーナから何気なく聞いたことが、一度だけあるその姿は。
「デーモンの姿……?」
白い髪をしたルクスは、かぎ爪で次々とモンスターを食いちぎる。
しかし、モンスター自体は傷がないまま死んでいった。
「これが、ルクスくんなのか……!」
二十体以上、傷のない死体を積み上げたルクスが、ほろ馬車の破片と共に何かを引きずり出した。
丸い耳に、ふさふさの太い尻尾はたぬきのようだ。
半妖専用コンビニで働くケニーには、たぬきの獣人だとすぐにわかった。
続いて、同じたぬき耳の少年が助け上げられる。
「大丈夫ですか!?」
ルクスから、黒い翼が消えた。
髪の色も、じょじょに元の黒に戻っていく。
ケニーが駆け付けると、そこにはいつものルクスが居た。
「はあ~~もうどうしようかと思ったぁぁー。俺は弱いから、ほんともうアテにならなくってー」
「いや……強かったよ?? ルクスくん」
最初に助け出されたたぬきの獣人である年寄りは、そんな二人を交互に見た。
「助けていただいてありがとうございますじゃ。見たところグランディアの血が入っているようですが、言語は地球……ゲートからお越しになった方に助けていただけるとは。わしはオボロといいますじゃ。たぬきの獣人で、こっちが孫のカゲロウといいますじゃ」
子供の獣人も、ぺこりと頭を下げる。
大体小学生くらいだろうか。
「俺はルクスといいます、こっちがケニー先輩。フォルン村に行くところなんですが、ご存じですか?」
「フォルン村なら、わしらの村ですじゃ。……ご案内したいところですが……」
オボロは、破壊されたほろ馬車を悲し気に見る。
カゲロウは、馬車の下から割れた瓶を取り出していた。
馬は、モンスターに食われて半分以下になっていた。
「オボロじいちゃん……商品ほとんど割れちまったよ。せめて助けてもらったお礼に渡したかったのに」
「そうか。仕方ないのぅ……村のみんなが困るのじゃ……お礼もできんのぅ」
オボロの耳が、しょんぼりと垂れる。
カゲロウもまた、がっくりと項垂れていた。
「あーーえっと、お礼とかはいいですよ! そうだ、オーデュインっていうデーモンロードがフォルン村に何か残していませんか?」
「オーデュイン・フォン・レオンフォール様ですじゃ?」
「そうです、その人です!! 一月七日にしか取れないものとかありませんか?」
「ああ、ルミリの実のことですかのぅ?」
「ルミリ!?」
脱いだ文字シャツを着ながら、ルクスが反応する。
母の名前はルミリアだ。
ヒントというか、まんまである。
「それです! 俺の妹が病気でそれが必要なんです!」
「おお! そうでしたのじゃ。……じゃが、畑が半分荒らされとりましてのぅ」
「ええーーーー!!! そんな!!!」
背後を警戒していたケニーが、矢を放った。
ブラックバーニーが、一体どうと倒れる。
「とりあえず、荷物はアイテムボックスで運んで移動しよう! ここにいるときりがないよ」
「確かに! オボロさん、カゲロウくん、行きましょう!」
壊れたほろ馬車と散らばった品を収納し、一行は歩き出した。
草原は広く、フォルン村の影はまだ小さい。
ルクスは、カゲロウと手を繋ぎながら異世界の大地を踏みしめる。
すべては、ここから始まるのだ。
たぬきの獣人さんです。モフモフ尻尾です




