第11話 判明したこと
ルクスは、半妖専門病院の椅子に座っていた。
シャツは、雨宮ケニーからもらった商店街シャツで「めざせ爆売り」と書いた文字シャツだ。
ルクスにおいて、ださいとかかっこ悪いとかは関係ない。無料で着れる、最高だ。
診察室では、ユーナが呼びつけてくれたヴァンパイアハーフ専門の医者が、ユミエラの診断をしている。
CTスキャンなどもしているので、ルクスは部屋の外で待機だ。
二日前の単発型ダンジョンで知り合った卯実賢人に、剣を借りてからルクスは一度しか使っていない。
しかし、思ったよりレンタル主の賢人からメッセージが来るので仲良くなりつつある。
今は病院なので、携帯の電源を切っていた。
「う~ん、悪い結果が出ませんように……! あ、出ても治りますように!!」
デーモンハーフのくせに、ルクスはよく神頼みをする。
自力で解決できないものは、大抵神にすがるのだ。
「ユミエラさんの保護者さん、入ってください」
長身のルクスは、診察室のドアを開けようとして一回肘をぶつけてから、ようやく開けた。
採血されて、また顔色の悪いユミエラがベッドに座っている。
医者の意味深な目配せで、ユミエラはベッドから別の部屋に連れていかれた。
ルクスの心臓が、音をたてる。
やはり、相当悪いのか。
「ユミエラさんは、ヴァンパイアハーフとのことでしたが……ルクスさんもヴァンパイアハーフでいらっしゃいますか? 手元のデータには、デーモンハーフとも記載されているのですが」
ルクスはここ数年、病院に通った記憶がない。
相当古いデータを見つけたのだろう。
「ヴァンパイアハーフでもあり、デーモンハーフでもあります。俺とユミエラは半分しか血が繋がってないので」
ユミエラは、母が死ぬ前に人間との火遊びで生まれた子供だ。
相手の男は逃げて、母は帰ってきたが父のオーデュインは責めなかった。
ルクスもユミエラも、同じように可愛がられて育てられている。
「ああ……そうでしたか。ユミエラさんは、このことをご存じで?」
「はい、父は隠さない性格だったので」
母を責めてはいけないよ、自分がふがいなかったんだ。
オーデュインは、過去の話をするときは決まってそう言っていた。
現に、今も「少しだけ」出かけて、三年以上経っているのだ。
そういうところだぞ、と思う。
オーデュインは、愛情深いがどこかズレているのだ。
「なるほど……。ちなみにお母さまは?」
「もう亡くなっています」
「ご病気ですか?」
「たしか……永飢病という名前だったと思います。俺が十一の時に亡くなりましたが」
医者の眉がぴくりと動く。
ルクスは嫌な予感がした。
「ユミエラさんの病気は、おそらく遺伝かと思われます。永飢病は、まだ現代では解明されていないのです」
「そんな!! どうにかならないんですか!? たとえば……マナ石でどうにかとか!」
「マナ石はクリーンなエネルギーですよ、人体には効きません。でも、そうですね……去年確かグランディアのほうで悪魔の君主が、永飢病の対策を立てたとか……そんな噂がありますが」
「そのデーモンロードの名前分かりますか??」
もしかしたら、という予感がルクスにはあった。
そうであれば、一縷の望みがある。
医者は、ルクスの無知を憐れむ顔をした。
「デーモンロードといえば、グランディアには一人しかいらっしゃいませんよ。星冠のオーデュイン・フォン・レオンフォール卿ですよ」
「うわあああああああああああ、やっぱりオヤジじゃねーかーー!!!!」
ルクスの絶叫が、病院にこだます。
医者のほうは、大きくのけぞっていた。
「え? ルクスさんのお父さんが、あのレオンフォール卿なのですか!?」
「どーもこーもそうなんですよぉぉぉぉ!! オヤジーー! マジで帰ってこーーい!!」
「ああ……ですから、苗字が記載されていなかったのですか」
医者が納得の顔をする。
グランディアで貴族籍があると、地球では名乗れないのだ。
魔族が権威を持つと危険だという理由で、禁止されている。
「ならば、お父上のデータなどはないのですか?」
「あんにゃろ、グランディアに行ったきりなんですよ!! あれ……でも確か日記を残してたような……?」
「なにかしら、手がかりがあればよいですね。この病気は、血を摂っても摂っても栄養失調になるようなものです。こちらでも、血の錠剤と血液ボトルは用意しますが、解決にはなりませんので……」
ルクスは記憶をたどった。
父が、困ったらこれを読む用に、とノートのようなものを置いて出て行ったような気もする。
「ありがとうございます、先生! 探してみます!! ダメならグランディアに行ってみます!!」
「異世界は広いですからな……お気をつけて」
ルクスの胸に希望が宿った。
何も手が打てないよりは、微かな可能性にかけて見せる。
ユミエラの命は、兄である自分が守るのだ。
残金の千円と、売ったモンスター素材のお金はお会計で完全に消えたのであった。
ルクス、残金0円




