第十五話(改)
第十五話
どうせ俺は、研究施設では暇を持て余している身だ。
失踪した友人たちが心配なので、捜査に積極的に協力させて欲しい、そう申し出た。
俺の気紛れに、捜査員たちは、うんざりした表情を浮かべたが、俺の今の立場やショーとマーカラとの交流関係を鑑みれば、露骨に無下には出来ない。捜査の邪魔にならない範囲で・・・という条件で、ある程度の情報の提供を受けることが出来るようになった。まぁ、どうせ捜査員たちも、俺の事など、ハナからアテにはしていまい。
一方、俺は最初から政府の捜査員を信用しちゃいない。
当初の事情聴取で、聞かれたことは嘘を付かずに話したが、全てを教えた訳でもない。
特に、マーカラが潜伏する可能性のある場所・・・そう、びっしりと連絡先の書き込まれた、あのメモだ・・・その存在は、捜査員には一切話してはいない。
そして多分、その事を知っているのは俺とショーだけだ。
ショーがマーカラと行動を一にしていようと、別行動になっていようと、多分、行動を予測する重要な情報になる・・・・そして、俺がプロの捜査員を出し抜き得る、唯一の情報でもある。
俺は悪い頭を絞って、慎重に行動する。
捜査員から教えられた情報の他、大学などに足を運んで調べているうちに、ショーの研究のいくつかが、かなり特殊なものであることが分かった。学問的な知識は、当然俺には無い・・・だが、公にしていない、お蔵入りの研究の中に、特殊な血液を媒体とした、人類の人工的な強制進化に関わるものがあると知った。
その時、俺の特殊な体質と、突如現れた黒髪姫の噂、ショーの研究、俺の見た悪夢、そしてマーカラの存在が、どこかで確実に繋がっているの事を確信し、それが猛烈な恐怖に変わる。
・・・なんてこった
俺が見たあの悪夢
人々は黒髪姫マーカラの力を欲し、俺はマーカラを殺し得る者。
あの悪夢は夢などではなく、「呪いの言葉」だった。
激しい感情に直結した、あの直観が、全ての真実を語っていたとは・・・・
そして、その事を知るのは悪夢を見た俺だけのはずだ・・・いや、本当にそうか?
俺はマーカラに、彼女と黒髪姫との関係を匂わせるような発言をしている。
ショーも当然、マーカラが黒髪姫であると、早いうちから推測し、しかも俺が、それに関わる特殊な体質を有するだろうこと、それ故にマーカラに対し過剰な反応をしたことにも気がついたはず。
俺はよろよろとトイレに向かい、冷水で顔を洗った。
水に濡れた間抜け面が鏡に映っている。
そして深く、深呼吸をする。
俺の腹は決まった。
俺が一番守りたいのは、マーカラだ。