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小夜歌  作者: 齋藤十二
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第十一話

第十一話



正直に言う、その日が来るのが待ち遠しかった。

今まで、こんな風に他人と関わることがなかったせいかも知れない。

幸いな事に、その後何か問題が起きる事も、マーカラに危害が降りかかることも無かった。


気がつくと俺は、それにかこつけて、隔日を置かずマーカラに連絡を入れていた。

何を話すって訳じゃない、単に無事かが知りたかった・・・それだけだ。


「アンノー、能力的に、お前の方がずっと頼りない」

「心配されるべきは、お前の方だ」

「・・・だが、心配されるのも悪い気はしないものだな」


マーカラの物言いは直截だ。

余計な邪念が無く、素直だからだろう。

受話器越しに聞こえる声は、相変わらず淡々としたものだ、でも何か温かい・・・それが俺は嬉しい。



「明日にはショーも戻るらしい」

「肉が楽しみだと言っていたぞ」


俺も、同じようなことを、ショーから連絡を受けている。


・・・いや、実は、どっちがあのトカゲ肉は好物じゃないと告白する役目を果たすか相談しただけだ。


そして、ほんの僅かだけ、マーカラとショーだけの関係に嫉妬の情が湧いた。


最近、よく連絡をくれるショーの口調には、マーカラへの好意が感じられるし、先日の食事に参加できなかったことを、本気で悔しがっているのが分かったからだ。それが俺は嬉しかったし、同時にこうやって嫉妬もする・・・二人には恩しかないのに。


人間の心というのは、どうしてこんなにも、面倒臭く厄介なものなのだろう。


だが、そんな小さな嫉妬や葛藤は、今、自分が幸福な境遇に身を置いている証なのだ。


幸福とは、失った時に、それが、如何にかけがえのないものか分かる・・・それが大切であればあるほど。



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