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エピローグ:記録は終わらない

エピローグ:記録は終わらない

北欧の長い冬が、ようやく明けかけていた。

神谷悠は、小さな町のカフェの窓辺に座り、手帳を開いていた。


そこには、30人以上の名前が記されている。

赤い線が引かれた者。灰色の線で囲まれた者。まだ空白の者。

そのすべてが、彼の人生と、痛みと、記録の結晶だった。


彼はスマートフォンを手に取り、ニュースアプリを開く。

そこには、かつての加害者たちの“後”が並んでいた。


——破産

——自殺

——懲戒

——逃亡

——行方不明


だが、その隣には、彼の行動に影響を受けた“名もなき人々”の小さな勝利も記されていた。


——訴訟提起

——教育委員会の動き

——加害者側の謝罪会見

——支援団体の設立

——“声”を上げた被害者たちの再出発


彼は思う。


(俺がやったことは、正義だったのか?)


答えは出ない。

けれど、一つだけ確かなことがある。


それは、“何かを動かした”という事実だけだ。


ふと、彼のスマートフォンに一通の通知が届く。


《新しい証言が投稿されました》

《記録BOXに音声ファイルがアップロードされました》


彼はそれを静かに受け取り、ノートの新しいページを開いた。


(記録は終わらない。俺が生きている限り)


店内の時計が、正午を告げる。

悠はマスクを整え、義眼を指でそっと撫でた。


——痛みの記憶が、そこにある。

——そして、それを記録する手は、まだ止まっていない。


外に出た彼の背には、長い影が伸びていた。

それは“裁く者”の影。

けれど、彼自身にとってはただの——生き残った者の姿だった。


終わりではない。始まりだ。

お読みいただきありがとうございます。


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