第19話:復讐の矛先
第19話:復讐の矛先
■神谷 悠 視点
神谷悠の視線の先には、一枚の写真があった。
それは、大学の研究室で笑顔を見せる白井教授の姿。
その後ろには、まだ希望に満ちた目をしていた自分が映っていた。
「僕が、最後に信じていた“大人”だった」
悠は、ノートパソコンの画面を切り替え、準備済みのファイル群を開いた。
「SHIRAI_CASE」フォルダの中には、録音ファイル、会話ログ、横領証拠、推薦状改ざんの原本画像、そして複数の証言書が並んでいる。
「白井教授。あなたが『見て見ぬふり』をした結果、あの地獄が完成したんですよ」
悠の言葉に、部屋の空気がぴんと張り詰める。
彼は“次の裁き”として、教授への告発準備を進めていた。
それはただの復讐ではない。
「構造」を壊すための攻撃。
“加害者を庇った”教育機関の象徴たる人物に、責任を取らせるという意思。
悠は動画撮影を開始した。
背景は黒。自分の姿はシルエット。
「僕を指導すると言っておきながら、加害者たちを守った教授がいます」
「推薦状を改ざんし、彼らを一流企業へ送り出す片棒を担いだ人物です」
「横領した研究費の流用先に“芹沢グループ”の名前がありました」
画面には、証拠のスクリーンショットが次々と映し出される。
そして、動画の最後に悠は告げる。
「教授。あなたには“嘘”が似合います。でも、真実は隠せません」
投稿ボタンが押された瞬間——情報の波が世界に放たれた。
■坂本刑事 視点
「ついに来たか……白井教授か」
警視庁捜査一課の会議室で、坂本は資料をめくっていた。
悠が投稿した“内部告発映像”は、すでに各報道機関にも伝えられていた。
だが、警察の視点では、この件は非常にデリケートな問題を孕んでいた。
「推薦状の偽造……大学関係者の証言もある。“教授による組織的不正”があった場合、教育機関全体に波及する」
上司は硬い顔で言った。
「しかしこれは“被害者の主張”に基づく証拠群だ。私怨による操作の可能性も……」
坂本は否定しなかった。
だが、同時にこうも言った。
「神谷悠は、完璧に“証拠”を揃えてきている。
感情ではなく、計画として。だから我々は動かざるを得ない」
坂本は捜査員を招集し、神谷から提供された資料と照らし合わせる形で、大学内および関係企業への事情聴取を開始した。
やがて浮かび上がったのは、白井教授が“寄付金”名目で複数企業と癒着していた構図だった。
神谷が指摘した推薦状の改ざんも、過去データとの照合で一致。
さらに、教授のPCから“原文修正ログ”が発見されたことで、証拠としての信憑性が確定的となる。
「……これで、教授も終わりか」
坂本は心のどこかで、違和感を拭いきれなかった。
(神谷は、どこまで読んでいる?)
彼が提供した証拠のすべてが“完璧すぎる”こと。
そして、次に誰がターゲットになるのかという“予測不能性”。
(もはやこれは……被害者の域を超えている)
だが、事実は事実。
証拠が真実を示している限り、動かざるを得ない。
■ナレーション
白井教授はその日のうちに大学から“停職処分”を受けた。
翌日には大学が緊急会見を開き、「調査委員会の設置」と「組織的責任の有無を検討する」と発表。
SNSは再び燃え上がる。
《加害者の後ろにいた教授も崩れた》
《神谷、次は誰を断罪する?》
悠の投稿には、またも100万以上の反応が集まった。
だが、彼はまだ満足していなかった。
次のフォルダを開く。
——「早乙女真白」
——「隠れた黒幕」
——「肉親の罪と罰」
「……まだ、終わらない」
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