第15話:偽りの謝罪
第15話:偽りの謝罪
■加害者グループ視点(芹沢翼・一ノ瀬光・黒瀬勇人・早乙女真白)
「記者会見を開く?お前、正気か?」
黒瀬勇人がテーブルを叩いた。
高城遼の代理弁護士が持ってきた「謝罪会見案」に、彼は真っ先に反発していた。
一方で芹沢翼は、沈黙のまま資料に目を通しながら呟いた。
「……謝罪する“フリ”だけでもしておかないと、世論の火は消えない。会社も、家族も全部焼ける」
「フリだと?お前、自分で何言ってるかわかってんのかよ」
「わかってるさ。だから“本音”と“建前”を使い分けるんだよ。俺たちは今、“演じる側”にならなきゃいけない」
芹沢の言葉に、一ノ瀬が鼻で笑った。
「謝罪したって許されるわけないじゃん。だったらさ、いっそ開き直ったほうが楽じゃね?」
「そうやって“ノリ”で突っ走ってきた結果が今の地獄だろうが!」
芹沢の語気が強まる。
だが、一ノ瀬は笑みを崩さず、スマホを弄っている。
「神谷の奴が言ってたよな。“次は誰だ”って。俺たち全員、順番に潰されんだろ?だったらこっちも“神谷の過去”暴いてやればいいじゃん」
黒瀬が乗った。
「だな。会見なんて茶番やってる場合じゃねぇ。白井も潰された、財前も落ちた。次は誰が生贄になる?」
芹沢は言葉を失いながらも、なお言った。
「……会見は必要だ。今この瞬間、世論の印象を少しでも操作しなきゃ、反撃の余地もなくなる」
そのとき、壁際に座っていた早乙女真白が初めて口を開いた。
「……私は、出ない」
「は?何でだよ、今さら逃げんのか?」
黒瀬が顔を歪める。だが真白は冷静だった。
「私は、“被害者として扱われた女”の顔を持ってる。今さら表に出たら、その仮面が剥がれる。私にとって、記者会見は“自爆”よ」
「ふざけんな……俺たちが前に出て、お前は引っ込むってか?」
「正解。私は逃げ切る」
言い切って、真白は部屋を出ていった。
残された男たちは言葉を失い、やがて芹沢が力なく笑った。
「……見ただろ、これが俺たちの“絆”の正体さ」
■神谷 悠 視点
神谷悠は、その様子を記録映像で見届けていた。
部屋に仕込んだ音声盗聴機と監視カメラ。
すでに真白の発言も、芹沢の妥協案も、一ノ瀬と黒瀬の暴言も、すべて録音・録画されていた。
「……分裂、完了」
彼はマスクを外し、深く息を吸った。
フォロワー数は180万を突破。
神谷が編集した「偽りの謝罪会見」の予告動画は、投稿前から話題になっていた。
——芹沢と一ノ瀬の登壇を発表
——“誠意ある対応”を装いながら、過去の発言・行動が次々に暴かれる構成
——会見直後に“神谷の暴露”が重なるよう時間設定
「彼らの言葉は、もう誰にも届かない。ただ、火に油を注ぐだけ」
そして、投稿される動画の最後に、悠はこの言葉を残す。
「謝罪とは、“許されたい”という願望に過ぎない。
裁かれる者に、願う権利などない」
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