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第14話:影の支配者

第14話:影の支配者

■神谷 悠 視点


北欧の空は鈍く曇り、悠の部屋にも重たい灰色の光が射し込んでいた。

モニターには、大学の研究室の内部文書が映し出されていた。

白井教授のメール履歴、研究費使用状況、そして過去の推薦状データ。


「……そろそろ、白井にも“報い”を受けてもらうか」


神谷悠の声は低く、静かだった。

彼にとって白井は、かつて信頼していた師だった。

だが、あのとき——研究室で加害者たちが悠に嫌がらせをしていたことを知っていながら、彼は何も言わず、むしろ彼らの推薦状を“手書きで”作成していた。


「利用されたのは僕だった。でも——今は逆だ。教授、あなたは“僕の駒”にすぎない」


悠はあらかじめ準備していた動画の冒頭部分を編集し始める。

タイトルはすでに決めていた。


《白井教授の裏切り:推薦状偽造と横領の記録》


パソコンのファイルには、証拠の一つ一つが丹念にまとめられていた。

監視カメラ映像。

寄付金名目で消えた研究費の明細。

過去のゼミ生との会話ログ。


悠はそれらをつなぎ合わせ、「裏切った者の末路」というテーマで一本の“社会告発型ドキュメンタリー”に仕立て上げていった。


だが——彼は知っていた。

この攻撃が、「加害者側」だけでなく「大学そのもの」に衝撃を与えることを。


「さて、教授。あなたが選んだ“正義”とは何だったんですか?」


■白井教授・加害者グループ視点


「本当に……俺が晒されるとは……」


白井浩二教授は研究室の奥で椅子にもたれ、震える指で一杯目のウイスキーを口に含んでいた。


大学の上層部からは、緊急会議の招集メールが届いていた。

「推薦状偽造と資金使用の説明を求めます」

「SNSで拡散されている動画について、大学としての対応を検討中」


白井の目の前に、プリントアウトされた“神谷悠の投稿”が置かれていた。


《この教授は、加害者側と通じていた。証拠は全て揃っている》


白井は愕然としていた。

自分が彼ら加害者に便宜を図ったのは、「円滑な進路指導」という名目のもと。

裏で彼らの親が大学に“寄付”をしていたことを知りながら、暗黙の了解で動いていた。


「神谷が……俺を見てたのか……」


そこへ一通のメッセージが届いた。


【From: 高城遼】

《教授、反撃するなら今しかない。“推薦状の件”を認めないでください。我々が証言します。“神谷が捏造した”と》


白井は震えた手で返信を打ちかけたが、指が止まった。


(本当に……俺を守るために彼らが動いているのか?)


一方、遼たちはその背後で会話を交わしていた。


「白井が表で吊されれば、大学が責任を持つ。そしたら、神谷の“言説”に法的な綻びができる」


芹沢が言った。


「裏切った教授が“主犯”扱いされれば、俺たちは“ただ乗っかってただけ”って言い訳できるだろ」


黒瀬も頷く。


「教授一人に罪を擦り付ける。大学側も面子を守るために、きっとそれを飲むさ」


だが彼らは知らなかった。


白井の研究室のサーバーには、悠が密かに仕掛けた監視ツールが作動しており、彼らのやり取りも、既に録音・記録されていたことを——。


■神谷 悠 視点


悠は完成した動画の最後に、教授と加害者グループとのチャットログを挿入した。

“教授をスケープゴートにする”

“神谷の情報はねつ造だったと証言させる”


悠は静かに呟いた。


「“影の支配者”だと思っていた者たちが、今や、自分たちの首を絞めてるだけだ」


アップロードボタンを押した時、世界は再び“真実”によって騒然となる。


SNSには次々と拡散される動画、証言、資料——

加害者たちの“悪だくみ”が、逆に彼ら自身を追い詰めてゆく。


悠は再びマスクを整え、椅子に座り直した。


「次は——偽りの謝罪か。楽しみだな」

お読みいただきありがとうございます。


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