表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/33

第9話:そしてずつ一人

第9話:そして一人ずつ

■加害者グループ視点(一ノ瀬光・芹沢翼・黒瀬勇人)


「やばい……これ、完全に俺だ」


一ノ瀬光の震える手がスマートフォンの画面を握りしめていた。

SNS上にアップロードされた動画には、彼が部屋で薬物を扱う姿が――顔付き、音声つきで――しっかりと映っていた。


《映像提供:匿名。元大学生グループの一人による薬物常習の証拠》

《関係者の証言によれば、“脅迫の現場でも使用されていた”との情報も》


「なんで……誰が持ってたんだよ、これ」


「神谷に決まってんだろうが!」


黒瀬が吠えるように言い放つ。

芹沢はソファに沈み込んでいたが、やがてゆっくりと口を開いた。


「なあ……俺たち、どっかで間違えたんじゃないか?」


その問いに、二人は沈黙した。

だが答えはもう明白だった。悠はただの復讐者ではない。

社会とネット、法律と世論をすべて“武器”に変える冷酷な演出者だ。


「……もう、こっちが先に仕掛けるしかねぇ」


黒瀬が、机の上に出したUSBメモリを指差す。


「これ、安藤が隠してた動画。神谷が泣いてたやつだけど――“殴り返してる”シーンが入ってる。うまく編集すれば、“神谷が暴力を振るってた”って見える」


「でも、それを出したら……完全に戦争だぞ」


芹沢が顔を上げる。

黒瀬は低く笑った。


「もう始まってんだよ。だったら、撃ち返すしかないだろ?」


■神谷 悠 視点


「来たな」


悠はPC画面に表示された“告発系YouTuber”の新着通知を見つめていた。

“内部告発:被害者神谷の“裏の顔”を知っている”というタイトル。

映像内には、彼の学生時代の映像が流れる。だが、それは明らかに編集された偽物だった。


《殴り返してくる“被害者”》

《これは本当に一方的ないじめか?》


悠は表情一つ変えず、その動画を全て視聴した。


「……やはりそう来たか」


彼はフォルダを開く。そこには、編集された元の映像の完全版が保存されていた。

殴り返したように見える瞬間、その前後にはナイフを突きつけられ、反射的に手を振り払う映像がある。


「切り取られた正義は、すぐに嘘になる」


悠は、反証動画の準備に入った。

そして、同時に“次の標的”を定める。


安藤智也。


カメラ役、そして傍観者。

彼が“消えたファイル”と称していたデータは、すでに悠が回収していた。


「次は、“無言の共犯者”を裁く番だ」


パソコンの横には、フォロワーからのDMが殺到していた。


《神谷さん、信じてます》

《これ、マジで正義》

《次は誰ですか?》


悠はその声に答えるように、小さく呟いた。


「一人ずつ、全員だよ」


■警視庁・坂本刑事 補足視点


「また新しい動画か……」


坂本は深いため息をついた。

神谷悠の発信はもはや「社会的事件」として無視できないものになっていた。


「このままだと、加害者も被害者も、両方が崩壊する」


上司にそう進言するも、返ってきたのは冷たい現実。


「被害者とは未だにZOOMでしか接触できない。所在不明のままでは、捜査の軸が立たん」


坂本は、神谷がすでに「人を越えた存在」になりかけていることに気づきつつあった。


■ナレーション


加害者たちの悪だくみは始動した。

だが、それすらも“脚本通り”だったかのように、神谷悠は動き続ける。


そして今夜、新たな動画が投稿される。


《命乞いを録音した、あの夜の真実》

《次は、お前だ》


ターゲットの名前は、まだ明かされていない。


だが、もう誰もが気づいていた。


神谷悠は、“絶対に逃さない”。

お読みいただきありがとうございます。


よろしければ、下の☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると大変励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ