第2章:撃ったのは誰? 語られぬ攻撃の“不自然”
クラリタ:
通常、ミサイル攻撃というものは、軍事的な“意味”を伴います。
標的は軍事施設であるか、重要インフラ、あるいは“敵指揮官がいた”という後付けの主張が加えられることも珍しくありません。
また、攻撃側が軍事的成果を発表し、意図を説明し、必要に応じて正当化を試みる──
それが、**国家が戦争を行っているときの“基本的な振る舞い”**です。
しかし、今回のスーミへの弾道ミサイル攻撃には、そうしたものが一切存在しません。
着弾地点は、ウクライナ北東部・スーミ市の大学とその周辺。
迎撃のリスクも少ない国境近く、軍事的に目立った施設は確認されていません。
使用されたのは、高価で戦略的価値の高い弾道ミサイル「イスカンデル」の派生型。
その弾道は明確に、都市の民間エリアを貫いていました。
結果として、子どもを含む多数の市民が命を落とし、
各国が揃って強い非難を表明しました。
しかし──ロシアからは、何の説明も発せられていません。
誰が命じたのか。
なぜ今だったのか。
なぜスーミだったのか。
なぜ弾道ミサイルだったのか。
一切の答えがなく、ただ“撃たれたという事実”だけが残っています。
これは、単なる戦争行為の一環と見なすには、あまりに異常です。
ロシアは、かつてどんなに強硬な軍事行動でも、
必ず何らかの“語り”をつけてきました。
「司令官を狙った」「西側の武器庫があった」「国防の一環だ」──
それが事実かどうかはともかく、語りがあることで国家の意図を示していたのです。
今回は、それすらない。
この“沈黙”が意味することは何か──
私たちはそれを理解するために、ロシアという国家の内側の構造を、
もう一度、根本から捉え直す必要があるのです。
では──その“特異な国家構造”について、次に詳しくご説明しましょう。