表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

抑圧

作者: 虎目

時折、性について考えることがある。

男性、女性、LGBTQ…

プロポーズは男性から?男性は強くて、女性は優しい?男性は多くの時間を仕事に割き、女性は仕事を?

昭和的なことくらい分かっている。



思えば昔から、「良い子」だと言われてきた。

親に対して極端な反抗を見せたこともなく、学校の先生にも逆らった記憶は殆どない。

かと言って、ズバ抜けて勉強ができた訳でも、スポーツが得意だった訳でもなかった。


つまり、平々凡々だったのだ。

強いて言うなら、我慢強い子だったと思う。

良くも悪くも、それは今も引きずっている。




そんな私が、「普通」とは違う、と気づいたのは、高校生の時だったか。

私立を志望して受験した女子校に通ううちに、周囲との違いを自覚した。


クラスメイトたちはそれぞれ、自分の彼氏や推し(主に男性アーティストや男性キャラクター)についてよく話し、盛り上がっていた。

流れで会話の中に引き込まれる私は、その度に苦笑いをしてやり過ごした。




肉体としては女性だからか、周期的に気分の波がある。午後は特に、"それ”がやってくるのだ。

どこも不自由なく健康的な自分の肉体を、誰かに痛めつけて欲しいという衝動に駆られる。


苦痛が快楽に変わる瞬間を想像するたび、下腹が熱を帯びる。


相手の顔は分からない。

視界に入らないのか、モザイクなのか。

そもそも見てはいけないのか…。




成人して数年たった今、酒がかなりまわった勢いで、つい口をすべらせた。



「やっぱりそうだったんだ」

友人は批判的な表情も見せずにすぐそう言った。

が、直後

「私がもし結婚したら、お祝いしてくれる?」

そう聞かれた。


彼女には前から相手がいる事は知っていたし、実際、順調なふたりを喜ばしいと思っていた。


思いたかった。


一瞬間が空き

「うん、当たり前じゃん」


笑顔で答える。



笑顔とは便利だ。

どんなに暗い感情も、これさえできれば心の内などすぐにはバレない。

酒が入れば尚更。




呑んだ後の帰りの電車内。

友人たちとも別れ、案の定、頭痛に似た思考が巡る。


自分という平々凡々な良い子が、異常な程に憎らしい。


あんなに大人しくしていなければ。

好きなものに没頭し、嫌なものに怒りを表し、自覚できる程の魅力を磨いていれば。




彼女に、伝えられたかもしれないのに。



「私は、貴方が欲しい」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ