抑圧
時折、性について考えることがある。
男性、女性、LGBTQ…
プロポーズは男性から?男性は強くて、女性は優しい?男性は多くの時間を仕事に割き、女性は仕事を?
昭和的なことくらい分かっている。
思えば昔から、「良い子」だと言われてきた。
親に対して極端な反抗を見せたこともなく、学校の先生にも逆らった記憶は殆どない。
かと言って、ズバ抜けて勉強ができた訳でも、スポーツが得意だった訳でもなかった。
つまり、平々凡々だったのだ。
強いて言うなら、我慢強い子だったと思う。
良くも悪くも、それは今も引きずっている。
そんな私が、「普通」とは違う、と気づいたのは、高校生の時だったか。
私立を志望して受験した女子校に通ううちに、周囲との違いを自覚した。
クラスメイトたちはそれぞれ、自分の彼氏や推し(主に男性アーティストや男性キャラクター)についてよく話し、盛り上がっていた。
流れで会話の中に引き込まれる私は、その度に苦笑いをしてやり過ごした。
肉体としては女性だからか、周期的に気分の波がある。午後は特に、"それ”がやってくるのだ。
どこも不自由なく健康的な自分の肉体を、誰かに痛めつけて欲しいという衝動に駆られる。
苦痛が快楽に変わる瞬間を想像するたび、下腹が熱を帯びる。
相手の顔は分からない。
視界に入らないのか、モザイクなのか。
そもそも見てはいけないのか…。
成人して数年たった今、酒がかなりまわった勢いで、つい口をすべらせた。
「やっぱりそうだったんだ」
友人は批判的な表情も見せずにすぐそう言った。
が、直後
「私がもし結婚したら、お祝いしてくれる?」
そう聞かれた。
彼女には前から相手がいる事は知っていたし、実際、順調なふたりを喜ばしいと思っていた。
思いたかった。
一瞬間が空き
「うん、当たり前じゃん」
笑顔で答える。
笑顔とは便利だ。
どんなに暗い感情も、これさえできれば心の内などすぐにはバレない。
酒が入れば尚更。
呑んだ後の帰りの電車内。
友人たちとも別れ、案の定、頭痛に似た思考が巡る。
自分という平々凡々な良い子が、異常な程に憎らしい。
あんなに大人しくしていなければ。
好きなものに没頭し、嫌なものに怒りを表し、自覚できる程の魅力を磨いていれば。
彼女に、伝えられたかもしれないのに。
「私は、貴方が欲しい」