9話 墓地の家
オライル墓地
オライルの街から少し離れた場所にある小さな墓地。近年ではオライルの街中に墓地が新設されたことによってますます人が訪れなくなった。
オライル墓地で発生しているゾンビ型モンスターを討伐して欲しいという依頼を受けたカゲ、テミストス、ノワールの3人。
オライル墓地に入った3人は、依頼主である墓守サントスに歓迎されていた。
サントス
「ようこそ…。こんな寂れた場所まで来ていただき……まことにありがとう存じます…」
サントスは背の低い老人だった。
腰は曲がり、足腰は震え、杖をついていないと今にも倒れそうだ。優しい声と顔つきをしているサントスは俺たちを墓地内に建てられた自宅へと案内してくれた。
サントスの家は普通の家だった。
サントスは、少し小さめのキッチンで湯を沸かし温かい飲み物を淹れてくれた。
俺は温かく甘いココアのようなものを飲みながら身体が温まるのを感じていた。
カゲ
「お気遣い、ありがとうございます。とても美味しいです」
サントス
「いえ…私にはこれくらいしか出来ませんので…」
カゲ
「素敵なご自宅ですね。一人でお住まいなのかしら?」
サントス
「…ええ。妻が亡くなってからは…ずっと一人で暮らしております…」
カゲ
「あら…そうだったのですね。ごめんなさい、配慮にかけた発言でしたわ…」
サントス
「随分昔のことですから…。気になさらずとも大丈夫ですよ…。あなたはお優しいのですね…」
カゲ
「滅相もございませんわ」
俺は怪しまれぬように、エアリーゼ様のように話した。今の俺はメアリーゼ様瓜二つの姿、悪い評判をつけたくないのだ。
ノワール
「…テミストス。こいつこんなキャラだったか?」
サントスの腰はかなり曲がっていて、そのせいで顔がいつも下を向いていた。
まが、それでも分かるくらいにこやかな笑顔で俺たちを対応してくれた。
俺とテミストスは甘い"ココアのような飲み物"に舌鼓をうち、至福の時間を堪能していた。ふと、ノワールが口をつけていないことに気がつく。
カゲ
「ノワールさん?サントスさんがせっかく出してくださった飲み物を飲まないのかしら?」
サントス
「えぇ、私も好きでよく飲んでいるココアです。良かったら…」
サントスは低い姿勢で微笑んだ。
ノワール
「……」
ノワールは少し俯いた。
何をしているのだろう。そう思っていたのだが
ノワール
「そうだな。せっかくのご厚意だ、いただくとしよう」
ノワールそう言ってカップを口に運んだ。
そしてカップを叩き割り、代わりに懐から取り出した液体をサントスにぶちまけた。
カゲ
「な、なにしてんだよノワール!」
サントスだったもの
「ギャアアアアァァアアア!!!???」
サントスはノワールが投げた水を浴びた途端に苦しみ出した。曲がっていた腰は伸びきり老人とは思えない速さで地面をのたうち回った。
ノワール
「さっき飲んだのは吐き出しとけ。それと…こいつは墓守なんかじゃあない」
???サントス???
「おのれええええぇえええ!コロス!コロスウウ!!!」
サントスの皮が剥がれ始め、爛れた身体が顕になった。
ノワール
「見ての通り、ゾンビだ」